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三日目

前回から投稿期間が大幅に開いてしまい、すいませんでした。

 緑暦407年文の月18日

 自分の道を提示することになった。

 とりあえずガチムチ集団のファランクス傭兵団にお世話になることになった。

 借金がなくなるまではここで雑用係だ。

 ガスノサから魔法の講義を受けた。

 どうやら本格的に僕は役立たずになりそうだ。

 それと気のいい奴はここにもしっかりといるみたいだ・・・やっぱりガチムチだったけど。



 ***************


「全く。ソーゴは自分の怪我がどれだけ重いか分かってるのか?

 俺の回復魔法じゃ傷を塞ぐことしかできなかったレベルの重傷だったんだぞ!普通だったら動けないレベルだ」

「たいへん申し訳なく思っています」

「これに懲りたら無茶はあんまりしないこったな」


 ジャパニーズDO・GE・ZAスタイルで地面に頭を擦り付けて謝罪をしてする僕を心配してくれるガスノサはやっぱりいい人だと思う。

 このスタイルを最初に見たときも、口から飛び出したのは疑問や怒りの声ではなく、僕が急に腹痛に教われたのでは?といった心配の言葉だった。


「それにしても、どうやって歩いたんだ?片足無いのに」

「ああ、うん。義足を使ってね」

「ソーゴはそんなの持ってたか?」


 首をくりんと傾げる(※ガチムチのお兄さんです)ガスノサに目の前で実演して見せると、顔が疑問から驚愕へと変わる。


「おい!それはどうやったんだ?いくつも作れるのか?」


 くい気味に聞いてきたガスノサから少し距離を取るために下がった僕を見て少し頭が冷えたのか、スマンと謝ると正座をしてから改めて聞いてきた。


「ソーゴのその義足はどうやって作ったんだ?それと、複数個作れるのか?」

「えっとですね、魔法で作成しました。いくつ作れるのかはまだ検証していませんね」

「そうか・・・今すぐもう一つ作れますか?」

「ちょっと待ってください」


 スマホをステータスチェッカーに切り替えると残り魔力量を確認。もう一つ作れるだけの魔力は残っていないことがわかった。


「すいません。今はちょっと無理そうです」

「そうですか。魔力でも足りなかったんですか?」

「はい。すいません」

「まあ、これで体をちゃんと治せばいくつかの働き口は出来そうですね」


 残念そうな顔にはなったものの、笑顔でアドバイスをくれるこの人はきっと言い人に違いない。

 筋肉だるまだけど。


 治癒魔法を使ってもらっている間に談笑をしていると、天幕の中に眠たげな顔をしたノイエルが入ってきた。


「ソーゴ、ガスノサおはよう。早速で悪いのだけどソーゴ。答えを聞かせてもらえるかしら?」

「僕は・・・」


 呟くと再び自分の意思とは関係なく口が動き始める。


「僕には払えるものは何もありません。だから体で支払います」

「・・・そうね、じゃあそうしましょう」


 許さねえ!絶対に神条のアバズレは許さねえ!

 顔を合わせたらぶっ○してやる!

 僕は怒りを溜め込みながらも、自分の意思とは関係ない言葉がポロポロと出てくるのに悪意しか感じない。


「はぁ、分かったわ。ここで料金分シッカリこき使ってあげるわね」

「ありがとうございます」

「・・・こう言われてありがとうございますって言う人始めて見たわ」


 ノイエルが呆れた顔でそんなことを言うと、さっさとその怪我を治せと告げて天幕の外に出て行った。

 その際ニヤニヤした顔をしていたガスノサを殴りつけていた。


「おお、怖い怖い。話も纏まったみたいだし養生しろよ。

 と言ったものの、実は今日は結構長距離移動しなくちゃいけないんだ。体は大丈夫そうか?」

「はい。義足をすれば動き回れる程度には」

「動くな重症なんだから。まあ、お前は動かしちゃいけないから移動中は馬車の中だな」


 馬車か・・・この世界の文明レベルによるけど凄い揺れそうだな・・・。

 案の定、移動中は振動が強く、寝るどころの騒ぎではなかった。

 腰が痛え。


 何度か昨日僕の襲われた猫みたいな生物から襲撃を受けたみたいだが、大した障害では無かったようだ。

 ほとんどが一撃で終わっていたため、複数体同時に襲ってきたときも三十秒かからない程度の時間しかかからなかった。

 戦闘中のメンバーを見て思ったのだが、後衛役であるはずの魔法使いですらそのローブを自身の筋肉で盛り上げ、今にもはち切れんばかりである。


 ・・・どうやらこのファランクス傭兵団は逞しい筋肉を持つ人間の集まりらしい。

 やっぱり傭兵団なんてやってたら筋肉つくよね。

 けど、女性まで洩れなく筋肉ダルマなのは納得できない!

 雑用係の腕まで僕の腕よりも一回りも太い奴ばかり。

 ここで雑用をしている間に自然と付いたと言っていた。

 スクワットをしながら。


「よし、昼飯を持ってきたぞ。一応治癒魔法をかけてからな」


 ガスノサが二人分の皿とお椀を乗せたトレーを持って馬車の中に入ってきた。

 新しい魔法を書き込もうとするために開いていた手帳を閉じてガスノサに向き直る。

 治癒魔法の心地よい光に包まれているときに真面目な顔をしたガスノサに質問をされる。


「なあ、そろそろ魔力溜まったか?」

「魔力?」

「ほら、その義足を作った時に消費した分。その義足付けっぱなしだったんだろ?」

「そうですね。けど魔力が溜まる感覚がいまいちわからなくて・・・」

「なんだ。お前魔法を使ったことないのか?」

「この義足を作ったのが初めてです」

「初めてでその完成度か・・・こりゃあ練習すれば立派な戦力になるんじゃないのか?その怪我が治ったら一緒に筋トレしようぜ」

「・・・足がなくなった人を筋トレに誘うんですか」

「根性で何とでもなる。それに、これは自論だが『魔力をわかりやすく増やすためには筋トレ』これが一番だ」


 筋肉と魔力の関係性が全くを持って理解不能だと思うのは、僕が異世界人でこの世界の常識を持っていないからなのかな?

 いや、そんなはずはない。

 これから町に行くみたいだし、そこでいろいろ聞くことにしよう。


 体内にある魔力をどうやって感じ取ればいいのかが全く分からない。

 とりあえず目を閉じてみればいいのかな?

 両目を閉じた僕を見て、話しかけてきていたガスノサが口を閉ざす。


 自分の体内の状態に集中し続けることで耳に届く音が次第になくなっていき、最後には自分の心臓の鼓動しか聞こえなくなる。

 心臓の鼓動を意識すると、全身を駆け巡る血液の流れがなんとなく分かようになってきた。

 それと同時に、血液と一緒に別の何かが一緒に流れている感覚を感じ取ることが出来る。

 ああ、これが魔力って奴かな?

 確かに手帳に万年筆で魔法を書いたときと同じような感覚がするな。

 ・・・なんだろう。

 流れている魔力にどこか物足りない感じがする。


「ああ、もしかしてまだ魔力が回復しきっていないのか?」


 首をかしげていると何かを察したのかガスノサが質問をしてきた。

 魔力が回復しきっていない?

 何を言っているのだろう。この義足を出してからどれだけの時間が経ったと思っているのだろうか。

 もしかして魔力が回復するのって結構遅い?


「・・・そもそもお前の魔力量って大体どのくらいなんだ?」

「さあ?ちゃんと測ったことないからわからない。ただ、この義足を作ると結構消費することぐらいかな」

「この義足たぶんそこまで魔力使わないはずだよな。それなのに回復しないとなると・・・。ちょっと悪いが試させてくれ」


 少し思案をしたガスノサが無造作に僕の義足を掴むと足から抜き取り、木の部分へし折ろうと力を込めた。

 それを止めようと手を伸ばす前に義足は音を軽い音を立ててへし折れた。


「何するんですか!今の魔力じゃまだ作れな・・・い・・・・・・はぁ!?」


 目の前でへし折れたはずの義足が修復されていき、新品同然に治ってしまう。

 呆然とそれを見ていると、納得した顔のガスノサが一言謝ってから義足を僕の足に戻す。


「いまのは?」

「ああ、やっぱりわかってなかったか。お前の作ったこの義足だが、量産は無理だ」

「なんでだ?」

「根本的にこの義足って0から創り出した物だろ?」

「ああそうだ」

「魔力だけで創り出した道具っていうのはな、体外に出した魔力を目的の物質に変質させた物になるんだよ。だから壊れても魔力が残っている限り修復される。

 だが、自分の魔力を外に出しているとは言っても変質させているからまだ繋がったことになってしまう。

 これによって自分の中にまだ魔力があるということになってしまい回復しないんだよ」

「・・・わかりやすく」


 すると、コップと水差しを持ってきて水を注ぐ。


「じゃあお前の全部の魔力をこの一杯の水にたとえるぞ。魔法は大まかに、本当に大まかに分別すると、2種類になるんだ。

 外に魔力の塊を放出するタイプと、切り分けて変質させるタイプだ」


 そう言うと、いきなりコップに注いだ水を一部流し、流した分の水を再び入れる。


「これが放出系の原理だ。自分の魔力を外に出したことでコップの中の水は消費さて無くなる。そして、消費した分は空間のマナを魔力へと変換しながらコップに蓄積、満タンになるまでマナを取り込み続ける」


 そこまで話すと、小声で何事かをブツブツ呟き指先をコップの中に入れた。

 すると、コップに突っ込んだ場所から徐々に凍っていき、表面を完全に覆う。


「んでもって、こっちが変質させたタイプだ。魔力を別の物質に変質させても、魔力の総量は一切の変化がない。魔力の総量が満タンのままだから外からマナを吸収して魔力を回復させることができない。お前の義足を作る魔法はこっちの変質タイプになるな」

「わかりやすい説明をありがとう」


 いいってことよと笑いながら返してくるガスノサに曖昧な表情で返事をしながらふと思ってしまった。

 あれ?確かこの義足には結構な量の魔力を消費していたような?ってことはあれか?義足が出ている間は他の魔法を一切使えないということになっちゃうんですか?


「・・・はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「うおっ!急にため息を吐いてどうした」

「いや、このままだと他の魔法がほとんど使えないなぁっと」

「そうだな。まあ、あれだ、頑張れ」

「今励まされるほど惨めになるからやめてくれ!」

「お、おう」


 それじゃあな、と一言だけ告げるとガスノサはどこかへと行ってしまう。

 しばらく僕は茫然とした表情で固まっていた。




「おい新入り、ちょっと顔かせ」

「えっと・・・誰ですか?」

「お前!大兄貴の名をご存じないだと!アガサの兄貴!言っちゃってくだせえ」

「おうよ弟分!このお方はな、東の悪龍をその剣で切り殺し、西の虎をその拳で引き裂いた!この方の名はケルト・オージニア様だ!!」


 どこから取り出したのか、ラッパや太鼓をドンドンパフパフと鳴らしながら枯葉を細かく砕いたものをばら撒き始めた。こいつこの方って二回言ったよな。


「いや、その紹介の仕方は恥ずかしいからやめてくれって何度も言ってんだろうが」

「そんな謙虚な兄貴も大好きだ‼」

「流石大兄貴!尊敬します」

「・・・はあ、まあ、とにかくちょっと来てくれ」


 二人の態度を矯正することはすでに諦めているのだろう、ケルト・オージニアと紹介された漢は、じゃない。男は僕に手招きをするとテントの中に入っていった。

 これってついて行かなくちゃいけないのかな?行かなくちゃダメですよね。

 テントの中に入った僕の目の前に急に何かが突き出された。

 突然のことに驚いてしまった僕は尻餅をついてしまう。


「おい大丈夫か?」


 心配そうな声をかけてくれたケルトさんの手にはあったかそうな湯気を上げるコップが握られており、僕の目の前に出されたものはそのコップなのだろう。それに気がつくと急に恥ずかしくなってしまった。

 コップを机の上に置き、そのまま手を差し出してきたので、その手を掴んで立ち上がる。


「ケルトの兄貴から手を差し伸べられただと!?」

「羨ましいッス!妬ましいッス!・・・顔の皮剥いでやろうかクソガキ」


 一瞬で殺伐とした空間が形成されてしまった。というより、とんでもないことを言っている奴がいるぅぅぅぅぅ!!

 顔の皮剥ぐ宣言にガタガタと震えていると、そいつの顔面をケルトさんがぶん殴った。

 錐揉み回転をしながらテントを破って外に飛んでいったそいつに、指をビシッと突きつけると、


「ニード!お前は人の客人を威圧した挙句に危害まで加える気かぁ!!普段は止めろって言ってんのに持ち上げといて、ずいぶんといいご身分だなてめえ。喧嘩売ってんのか?喧嘩なら買ってやんよ。かかってきやがれくそ野郎」


 大きな声でニードと呼んだ、先ほど殴った青年に啖呵を切る。


「な、ケルトの大兄貴!俺はそんなつもりじゃ」

「てめえがそんなつもりじゃなくても実際にやってんだろうが!漢なら言い訳してんじゃねえよ!それとも玉無しか?その両側についてる腕は飾りなのか?」

「あ、ああ、うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ニードは勝てないことを分かっているのだろう。震えながらも腰にくくりつけられていた短剣を抜いてケルトさんに向かって叫びながら飛び掛る。


「よおし!それでこそだ!」


 獰猛な笑みを浮かべたケルトさんがそれを迎えうつ。

 僕の目では捉えられない速度で振るわれた短剣はケルトさんに届くことなく、カウンターで打ち込まれた拳がニードの頬に深々と突き刺さる。


 結果だけを告げると、ここからただの虐殺タイムとなり、ケルトさんのワンサイドゲームとなった。

 散々殴打されボロボロになったニードはなぜか気持ちの悪い笑い声をもらしながら、とても嬉しそうな、歓喜の笑みを浮かべていたのを僕は見なかったことにした。




「急に見苦しいもん見せちまってすまなかったな」

「いえ、実際に顔の皮を剥ぐとか言われたときは怖かったんで今はホッとしてます」

「あー、本当にすまんかったな。あいつも悪い奴じゃなくてむしろいい奴なんだ」

「そこは一応分かっているつもりです。その、性格とかが悪い人をケルトさんが傍においておくとは思いませんし」

「・・・」

「えっと、どうしましたか?」


 急に険しい顔で黙り込んでケルトさんに、僕は何か拙いことを言ってしまったかという心配で背中に嫌な汗が出てきた。


「なあ、そのケルトさんって呼ぶのはやめてくれねえか?恥ずかしくて体がむず痒くなる。俺のことは呼び捨てでかまわねえ」

「・・・いいんですか?」

「俺がいいって言ってるんだ確認を取る必要はねえよ」

「分かりました」

「出来ればその敬語もやめてくれれば満点だ」


 ニカッと笑みを浮かべたケルトにつられて僕も笑顔になってしまう。

 そういえば、と呟くと、僕にお湯の入ったコップを差し出してきながら、


「お前の名前をまだ聞いてなかったな。名前なんていうんだ?」


 と尋ねてきた。



「僕の名前は宗吾といいます。これからよろしくお願いしますケルト」

「おうよ、こちらこそよろしくだ。ソーゴ」


 受け取ったコップをケルトの持つコップと打ち合わせ、乾杯をした。


5/3 ケルト君の名前と苗字を逆に書いていました。すいません。

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