第4話: ブラックな過去
なんとか、この間のことを乗り切った。
でも、いつこのことがばれて、またあの暴力を振るわれるのだろう。 そう考えると、慣れたとはいえ、不安だった。
日々がなんとなく過ぎて、毎日の1,2時間の睡眠の中、家事・育児・仕事をこなしていた。限界とは、どこなのか?と毎日考えていた。
そんなとき、またまたあいつから外線が入った。
『俺』
『わかるさ。』
『どうする?』
『何がよ?』
『会うか』
『ほんとねぇ・・・』
『迎え行くから』ガチャ。
切れてんじゃんー!
本当に、我侭な奴だ。 あの人の頭を、一度解剖、いや解体(?)したいぐらいだ。だからと言って、脳を見ても何もわからないけど。
結局、私は、子供の保育園のお迎えを実家に任せ、彼が迎えに来るのを待った。 ・・・まったく、こんなことばれたら、また夫からボコボコの仕打ちだよ。
でも・・・どこか、彼を待っている自分がいたような気がする。
「ぃよっ!」
『ぃよっ!』じゃねーよ!この、我侭男が!!
「なんなの?!一体!!」
「お前、何でこの前勝手に帰ってんだよ。」
「当たり前でしょう?私、家庭があんの! ・・・まぁ、あんなことしちゃって言うのも何だけど・・・」
「だろー?お前、同罪だぞ」
こいつーーーー!
「何なのよ、どうしたいの? ちゃんと言いなよ!」 ちょっと、イラっときてる私がいた。
「ちゃんと? どう言えばいいの?」
「ん〜、わかんないな」
あほか。 やっぱり、私があほなんだ。
「別れろよ。お前、幸せじゃないだろ?」
言葉が・・・出ないよ。
でも、もう、昔の私たちじゃないんだよ。
「無理だね。私には、娘がいるもの」
「俺と3人で生きてけばいいじゃん。」
本当に、本当に、あんたは甘い。
「無理だよ。あんたの子供じゃない。」
「血なんて関係あんのか? 俺はお前の子供ならば一緒に生きて行けると思う。」
無理だよ・・・
「でも、きっと無理なんだ。別れることが無理だもの。あんたに迷惑をかけれないんだ。」
「お前、何言ってんだ? 何があんだよ。 思い合ってないのに、一緒にいんのがおかしいんだよ!」
「わかんなすぎるよ。とにかく無理だから。じゃーね。」
遅いよ。
なんで、あのとき言ってくんなかったの? そしたら、二人で、何の障害もなくきっと楽しく過ごしてたんじゃないの?
でも、もう、あの頃とは違うんだよ。
家に戻っても、相変わらずだった。
私は、何を希望にこの家庭にいるのか?
子供を心から思うという、それだけは頭が下がる夫から、どうしても子供を取ることなんてできないと思っていたけど、一緒にいることのほうが良くないことなのではないの?
そんな考えが頭に浮かんでいた。 ふと、夫に言った。
「別れない?」
「お前、何言ってんのかわかってんのか? もし、別れんなら、一人で出てけ。 俺は、楓を取るからな!」
案の定だよね。 でも、裁判にかけたら、きっと私が子供を取れると思うけど。
「私は、楓を離さないよ。絶対に。」
「じゃぁ、別れらんねーな。」
含み笑いをして、夫が言った。 私は、その顔を見て、真剣に別れることを決めていた。 もう、無理だ。 暴力も何も、我慢することはもうできない。
もっと、順を追って事を進めたほうが良かったのに、思考能力を失っていたのか、私の心はぐちゃぐちゃになっていて、あいつと一緒にいることも多くなってしまっていた。
それを夫に知られるのに、時間はさほどかからなかった。
そして・・・
二人とも、夫からの殺意の暴力を受け、仕舞には殺意の暴力どころか、刃物で殺されそうにすらなってしまい、警察のお世話になることになった。
何もかもが終わった瞬間だった。 ・・・修羅場だった。 血の海って、あるんだって、知った。
私は、顔を骨折し、全身打撲の重症。 顔は変形し、もう治らないかもしれない、とまで言われた。
彼も同じような状況だった。
だけど、私たちは、警察側から被害届を出したほうがいい、という申し出に、NOの答えを出した。 何があっても、自分たちの非を認め、子供のこれからを考えた末だ。