第2夜
私、濱田 真琴が彼と出会ったのはある夏の夜だった。
家の近所にひっそりと佇むバー。以前から気になってはいたものの、いつも通り過ぎていたがある時、バイト先でそのバーが話題になり数人で行くことになったのだ。
80年代のアメリカをイメージしたらしいそのバーに私はすっかり魅了され、早くも次の日から毎週末に1人で飲みに訪れるようになってしまった。
店長やスタッフと仲良くなってきたある夜、いつも通り店に入ると見慣れない姿がカウンター内に見えた。
誰だろう?と思いつつも私は定位置であるカウンターの右端に腰掛ける。
「マコちゃんいらっしゃい。今日も可愛いね」
真っ先に話しかけて来たのは店長であるケイさんだ。初めて会った時から何故か気に入られ、毎回私が来ると私に付きっきりで話しかけてくる。......店長なのに私以外のお客さんにお酒作らなくて大丈夫なんだろうか、と毎回疑問に思うが、スタッフが頑張るから大丈夫ーとヘラヘラ笑うだけ。
「はいはい、こんばんは。とりあえずいつもので」
この人の可愛いは挨拶みたいなものなのでスルー。
「マコちゃんはツンデレだからなぁ...はいはーい」
苦笑しながらも、手際よくいつものカクテルを作っていくケイさんを眺めつつ煙草に火を着けた。
下を向いて黙々とグラスを拭き上げる見慣れない人物を眺めているとー
「はい、お待たせー」
目の前にグラスが差し出された。テキーラとカシスを使った私の大好きなカクテルだ。
視線をカクテルへ移し、喉へと流し込む。
「美味しいー」
「いつもいい飲みっぷりだねぇ...あ、そうそう。新人が入ったから紹介するね」
そう言ってケイさんは先程の人物を呼び付けた。
「こいつ、祐二っつーの。歳はえーと......」
「22っす」
「そうそうマコちゃんと同い年だねー、ってことでよろしくねー」
祐二と呼ばれたその男をまじまじと見るが、前髪で顔が隠れており表情までは伺えなかったが、なかなかの精悍な顔付きをしていた。
第一印象は根暗そうなイケメン。
それが彼、伊豆 祐二との出会いだった。