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友として

炎嘉は、供のためには良すぎるほどの部屋を与えられ、そこへ先に案内されていた。維月は、レイティアについて、王の居間のほうへと行ったのだ。回りが女ばかりで、しかも皆奇異な目で見るので、かなり居心地は悪かったが、少しそれにも慣れて来た。

維月は、炎嘉が気になったが、今はレイティアなので、居間へ通されて、勧められるままに椅子に腰かけていた。

「…主には、謝らねばならぬ。」レイティアはいきなり言った。「あのようなことをして…それなのに、主は我を訪ねてくれた。」

維月は首を振った。

「レイティア、私には分かっているつもりよ。直後はショックだったけれど…あちらでは、男が何人も娶るのが通常であるから、あってもおかしくはない状況だったし。でも、分かるの。あれからいろいろ、どうしたら良いのか考えはしたのだけれど…何分、心はどうにも出来ないものでしょう。何も出来ないことに、申し訳なく思うわ。」

レイティアは維月を見た。

「…して、主は今日、そんなことの為に参ったのではあるまい。」

維月はレイティアの目を見返した。レイティアは、知っているのだ。龍の宮で、自分の軍神達が捕えられていることを…。維月は、頷いた。

「ええ。こちらの世では、維心様に抗う神など、とうに居ないの。それに、捕えた者は皆屈強な女ばかり…こちらでは、女がそんなに強いなど稀であるのよ。だから、きっとレイティアの軍神ではないかと…。でも、レイティアが知らない所で勝手に動いている可能性があるとして、事を収めたわ。それで、こちらへ私が事情を聞きに来たのよ。レイティア、あれはあなたの命で潜んでいた軍神なの?」

レイティアは、しばらく黙った。そしてじっと維月の目を見ていたが、ため息を付いて、椅子の背にもたれ掛かった。

「…そうよ。我の命だった。」

維月は、やはりあの先見は正しかったのだと思った。そして、知ってはいたが、あえて問うた。

「なぜ?私達を侵略しようと思ったの?」

レイティアは首を振って天井を見た。

「わかっておろう。主らの世では男がすること。我は、機を見て亮維を奪えればと思うた。」

維月は諭すように言った。

「レイティア…分かっているでしょう。あちらの男は、こちらの男のようにおとなしくはないわ。それに、気もとても大きい。あなたでは太刀打ち出来ないわ…龍身の維心様を、見たことがないでしょう。あのかたは地を滅ぼすほどの力を持っていらっしゃる。だから、普段はワザと抑えつけて穏やかなフリをしてお過ごしなのよ。私も勝てないと言ったでしょう?十六夜と維心様のケンカは、地を滅ぼし掛けたことがあるほどなのよ。」

レイティアは、涙を浮かべて維月を見た。

「では、どうすれば良かったのだ!」維月に、睨むというより、必死な目で言った。「我は、このような気持ちになったことはない。城へ戻れば気持ちも変わろうかと思うたが、かえって想いが募るほど。ここには、あのような男達は居らぬ。我に仇なすような、強い気質の男が。我は、とても従順な男などと子をなそうなどとは思えぬのだ!」

維月は、レイティアの目から涙がこぼれるのを見て、抱き寄せた。レイティアは、維月の胸に顔をうずめた。

「維月…どうすれば良い。我は分からぬのだ。主が来てくれると聞いて、どれほどに待ち望んでいたことか。このままでは我を忘れてしまいそうで、どうしても主と話したかったのだ。」

泣いているレイティアを抱き締めて、維月は言った。

「ああレイティア…皆、同じように悩むものなの。私だってそうだった。人の頃、愛した月に手が届かないと、諦めていたわ。」レイティアが顔を上げた。維月は続けた。「あのね、レイティア、私が前世人であったことは話したでしょう?月の声を聞き、その力を操れる、唯一の血族だったの。しかも、たった一人で。赤子の頃から月と話して、それは愛していたのに、一生手が届かないの。でも、たった一人の私が子を生まねば、月は一人ぼっちになってしまう。なので、私は他の人の男と結婚して、子を次々と成したわ。そのうちの一人が、蒼。月の宮の王よ。」

レイティアは驚いたような顔をした。

「…愛していないのに?」

維月は頷いた。

「ええ。相手には悪いと思ったわ。でも、それなりに大切にはしたわよ?でも、私は月以外は愛せないと思っていたから。子を生んで育ってからは、死ぬことばかり考えていた…どうせ手が届かないのだもの。生きて居る間、ずっと苦しまねばならなかった。そして…人としての生涯を、戦いで閉じたの。」

レイティアはじっと維月を見上げていた。維月…ただ、月として生きて来ただけではなかったのか。

「主らしいよの。我も、戦いで命を落としたいと望む。」

少し違うような気がしたが、維月は頷いた。

「でも、月が私が戻ることを望み、維心様の命を司る能力で私に月の命を宿した。それで、私は戻って来たの。全ては、そこから始まったのよ。月なんて何か知らなかったけど、とにかく戻らなきゃと思ってね。」

レイティアはじっと考え込むような顔をした。望んで月になったのではないのか…。

「では、たまたま月の命を宿されたゆえ、主は月なったのか。そして、転生してもまた、月であるのか。」

維月はまた頷いた。

「そうよ。私は陰の月と言って、陽の月とは性質を異にするもの。人や神の好みを知り、それに合わせて望みを叶えることで、相手を自分無しでは居られないようにし、想い通りに操るような能力を持っているらしいわ。なので知らなかったけど、無意識に愛する維心様の好みに合わせて変化して、私はこんな気を持ってしまった訳よ。十六夜は、私が何であっても好きでいてくれるから、合わせる必要なんて無かったみたいだけれどね。だから、他はこの気に惹かれて寄って来ているだけなのを知っているから、私は不憫に思って傍に置いたりする訳よ。意識的に完全に抑えるのは、無理だから。」

レイティアは知らなかったことにただただ驚いていた。維月は、そうなのか。望んでも居ない者まで惹き付けてしまう…ただ、自分の愛する者の好みに変化しただけなのに。

「…何か、主のことに関してすっきりしたの。」レイティアは言った。「主にしても、迷惑な者も居る訳よの。放って置いて欲しいのに、いくらでも追い縋って来る男達…。」

維月はそれを思い出して、眉を寄せた。

「そう!そうなのよ、レイティア。まだ人の身に月の命を宿していた時は、今のように体も自由に動かなくて、何度連れ去られそうになったことか。その度に維心様が守ってくださって、事なきを得たけれど…本当に大変だったの!私は、維心様と十六夜の傍に居たいだけなのに。」

レイティアは身震いした。

「おお、なんとおぞましいことぞ!主、よく耐えたの。我はそんなことになったらと思ったら身のうちを怖気が走るわ。」

二人は顔を見合わせた。そして、声を立てて笑った。

「ああ、我も何を一人塞ぎ込んで居ったことか。少し、考え方を変えねばならぬ。」

維月は頷いた。

「そうよ。また、月の宮の方へでも来ればいいわ。あちらには、いろんな宮の王達が遊びに来るから。皆、気も強いし、相手として不足はないわよ。」

レイティアは頷き掛けて、表情を曇らせた。

「しかし…我はそちらに間者を潜ませたりしてしもうたし…。」

維月は首を振った。

「何のために私が来たの?大丈夫、いいようにするわ。今は、宮の地下牢で苦しんでいると思うから、早急に出してもらうように維心様に言うから。レイティア…沈んでいるなんて、あなたには似合わないわ。さ、忘れるのは無理だろうけれど、気分転換にひと勝負しない?」

レイティアは驚いたように立ち上がった維月を見た。

「何を申す。主、身重であろう?我も思い切り立ち合えぬではないか。」

維月はふふふと笑った。

「何を心配しているのよ。私相手に、あなたが手加減出来るのかしら?」

レイティアは、ニッと笑って立ち上がった。

「よう言うた。では参ろうぞ。」

二人は、笑いながら訓練場へと歩いて行った。

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