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FILE.1

クロスオーバー計画、第一弾!!


ここから別作品を少しづつ作っていこうと思います。

この街に蔓延はびこる、闇。

そんな闇と俺は闘う、そして勝って皆を守りたいんだ。

・・・君と。



 ピンポ~ン。

 毎日の様になる玄関のチャイム。今日だけでも何度目だろうか?今週に入ってからは勢いも酷くなった。いよいよ私も終わりなのだろうか?実家を出て都会に憧れ、念願の一人暮らし。ここまでは順調だった。そう、大学を卒業しコッチへ引っ越して来た最初の一年は平穏なものだった。会社にも馴染み、職場でも友達が出来た。なのに・・・

 不意にチャイムが鳴り止んだ事に気が付いた彼女は玄関へと近づき、扉越しに周囲を見渡す。

 そこに人影はなく、ようやくと胸を撫で下ろす。

「か、帰ったんだ・・・」

 玄関でヘタっと腰を着き、古い空気を吐き出し胸いっぱいへと新し酸素を吸い込む。

「・・・やっぱりいるんだ。」

 耳元でそう囁かれた瞬間、彼女の体が硬直する。恐怖で身が萎縮し、後ろを振り向けないでいた。そんな事にはお構い無しで土足のまま彼女の背後へと近づく男。彼女の髪を鷲掴みにし振り向かせ、テープで貼り付けられ歪な形をした封筒を見せる。

「ぼ、僕の気持ちを破り捨てるなんて・・・ひ、酷いじゃないか。」

 黒く塗り潰されたような濁った瞳で、彼女に見せつける。そして彼女へ押し付けるが、体が硬直したまま上手く受け取れずに床へ落ちる

「僕の気持ちを理解できないなんて、ゆ、許せない。」

 ズルズルと彼女の髪を掴んだまま床を引き摺りながら、居間へ連れて行く。そしてソファへと投げ飛ばし、カチャカチャとベルトを弄り始める。

「前の女もそうだ、前の前の女もそうだった。女はみんな馬鹿だ。僕の愛を破り捨てる、そんな馬鹿な女共は、ぼ、僕が粛清してやるんだ。」

 ズボンを脱ぎ捨て彼女へと迫る。

「謝れ、謝れ、謝れ。」

「・・・・・・」

 恐怖で声が出ないまま絶望する彼女。

「謝れ、謝れ、謝れよぉ~~~っ!!!」

 語気を強め彼女の首筋へと手を伸ばす男。

 次の瞬間、男の体は彼女の目の前で転がる。何事かと男の立っていた位置を見る。その少し離れた位置。玄関にはまだ幼さが残る少年が立っていた。持っていた鞄を投げて倒したのだろう。

「貴女が謝る事は何一つありません。」

 それが彼の第一声だった。

「な、なんだお前!?ぼ、僕の邪魔をする気か!?」

「アンタ、城島きじま健夫たけおだよな?」

「な、なんで僕の名前を!!」

「ココのマンションの防犯カメラに映ってたからさ、放課後知り合いに調べてもらったんだよね。」

「な、何?」

「今時のご時世、写真一つで身元から何から全部バレるんだなぁ~俺も気を付けないと。」

 胸元から取り出した城島の写真をヒラヒラと見せつけながらゆっくりと前へ進む。

「ん、なにこれ?」

 足元の歪なラブレターを拾い上げる。

「コレ、アンタのか?」

「ぼ、僕が書いた神聖なラブレターを汚れた手で触るな!」

「神聖なラブレターねぇ~破られてるけど?」

「それは、こ、この馬鹿女が破ったんだ!よくも、僕の気持ちを破ったな?」

 そして振り返る男、再度ビクッと怯える彼女。その空気を一気にぶち壊す。

「じゃ~アンタの気持ちさぁ、今度は燃やしてみようよ?どうやって修復すんの?それとも神聖だから燃えないのか?」

 フラッとマッチを取り出し火を点ける。ボォッと手紙に引火し手前にあった灰皿へと落とす。

「お前ぇ・・・」

 ダッと駆け出し少年へと迫る男。大きく拳を振りかぶり少年の顔を狙う。

 が、スルッと交わされ、少年の肘が男の後頭部を直撃する。

「おっと残念。」

「お前っ!!」

 少年へ抱きつき地面へと押し倒す。

「これで避けられないぞ!!」

「ヤッベ・・・」

 そこから男の連打が少年の顔を殴打する。

「ハァ、ハァ、ハァ、思い知ったか。」

 息切れする程の乱打を終え、男が立ち上がろうとする。

「今度はお前だ!」

 そう宣言された彼女は完璧に絶望する。知り合いの伝で名前が浮上した少年。ほんの気休め程度で依頼した『何でも屋』。売り文句は「危険な事から身近な物まで、困った事なら何でも請負います。」と言う物。こんな物を当てにした自分に後悔する。親も、兄弟も、友達も、警察でさえ相手にしてくれなかった男を、こんな見ず知らずの少年が都合良く助けてくれるはずが無い。

 そう肩を落とす彼女。

「なんだ、アンタもう終わりか?」

 二人の視線は倒れた少年へと向けられた。

「アンタ、本当にお喋りだよな。」

 男の胸元を掴み、一気に引き付け、膝を男の腹へ激突させる。

 苦しむ男を横へと転がし立ち上がる。

「全然効かないな。」

「紅也くんっ!!」

「すいません月島さん、大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう。」

 ホロホロと涙を零しながらお礼を言う。

「本当にすいません、ギリギリのタイミングでしたよね。でも扉の鍵は変えた方が良いですよ?安物の万能鍵で開きましたから。」

「あっ!!」

「はい?」

 月島の指を射す方を向くと立ち上がり逃げる城島の姿があった。

「アイツっ!!」

 追いかけ、階段を駆け下りる紅也。そして道路へ飛び出した瞬間。

「こ、紅也くんっ!?」

 ドンッ!と鈍い音がし、弧を書く様に吹き飛ばされる。そしてコンクリートの垣根へ激突しアスファルトへとバウンドし、力無く倒れる。それからバンッ!と扉を閉めトラックから降りてくる城島。月島の手を掴み車へと連れて行こうとする。

「嫌、放して!!紅也くんっ!!」

「アイツ、流石に死んだろ。さぁ、ぼ、僕と一緒に来い!!」

 その城島の手首が圧迫され、月島の手を離す。

「な、何なんだよお前!?」

「知りたいか?俺は、菊姫高校二年三組今年から学級委員長の八代やしろ紅也こうやだっ!!」

 正拳突きを腹部へ叩き込み、裏膝を器用に蹴り城島を膝立ちにさせ、顎目掛け強力なバックハンドブローを見舞う。

「俺を殺したいならハンマーで動けなくなるまで殴り続けるんだね。」

 泡を吹き倒れた城島を蹴り飛ばし縄を括りつけ、月島の方へ向き直る。

「あとは、コチラで処理しますんね。今後表を歩く事は無いでしょう。それで、報酬の件なんですけど・・・」

「あ、は、はい。」

「前納金だけで良いですか?」

「え?いや・・・」

「いや、ギリギリのタイミングでしたから。」

 自分の耳を疑う月島。報酬なら前納金の倍以上は要求されても申し分無い仕事ぶり。なのにそこまで欲張らない少年、八代紅也。彼の独特の雰囲気を彼女はしばらく忘れないだろう。






「もしもし、八智代やちよちゃん?仕事終わったよ。」

『そう、御苦労様。怪我はなかった?』

「ん~まぁ、かすり傷くらいかな?」

『嘘、誤魔化してるでしょ?』

「え、やだなぁ~大丈夫だよ。俺、案外丈夫だから。」

『嫌な体。』

「そんな言うなよ、この体じゃなきゃ働けないんだから。」

『そんな体じゃなきゃ、一緒に暮らせたのにね。』

「ん~・・・営業報告終わり、また明日な。」

『うん、また明日。ゆっくり休んでね、紅ちゃん』

 パチンっと携帯電話を閉じ、スーパーマーケットへ入る。買い物かごを持ち、タイムセール中の惣菜を物色する。結局、人参、玉ねぎ、ベーコンに出来合の唐揚げに缶酒で済ませる。

 ゆっくりとスーパーを出て家路へとつく。時間は夕方、子供たちが紅也を避けながら走っていく。そうして、ゆっくりと思い出す。自分はあの子達と同じ年の頃、何をしていただろうか?思い出せない・・・

 6年前、小学5年生だったはず。なのに、記憶はない。覚えていない。気がついたら暗い世界に閉じ込められていた。父さんと、母さんと、俺を守ってくれた姉さん。唯一覚えている家族の記憶。それは、目の前で死に行く両親と、俺を抱きしめて庇って死んだ姉。あれが何だったのかは思い出せない。家族が死んで絶望した俺を助けてくれたのは知らない人だった。漫画の世界みたいに両拳から3本づつの爪を出し、俺の家族を殺した奴らを八つ裂きにして、光の当たる場所へと連れ出してくれた。そして、その人に連れられて・・・

 気がつけば自分の住むアパートの前までたどり着いていた。ポケットから自宅の鍵を取り出し、ガチャリと回し不穏な感覚が伝わる。

「鍵が、開いてる?」

 閉め忘れた?そんなはずはない、確認した。誰が・・・?まさか・・・!!

 そう思考を巡らせ、ゆっくりと扉を開く。

「遅かったな紅也。」

「これで何度目ですか、師匠?毎度毎度、どうやって入ってくるんです?」

「知らん。沙流さりゅうが開けてくれる。」

「はい。」

 玄関の後ろで声がし、一瞬で飛び退く。

「気配を殺して後ろに立たないでください沙流さん。」

「仕方ないだろう、沙流は現役の忍なんだから。」

「そうした問題じゃないですよ!沙流さんも、常識を持ってください。」

「沙流、上司の言うことは?」

「絶対です。」

「主人の言うことは?」

「完全服従でございます。」

「紅也、諦めろ。」

「なんで師匠は俺の家に上がり込みたいんですか!?」

「いや、暇潰しには丁度良いだろう?」

「まったく・・・」

「ちなみに晩飯は?」

「炒飯の様です、紫姫しき様。」

「またか、この前もだっただろう?」

「えぇ、そうですよ!この前だけじゃなくて昨日の晩も、今日の朝も、昼も炒飯ですよ!!」

「ったく、三食炒飯か。どんだけ貧相な飯食ってんだ?だからいつまで経っても貧弱な体なんだよ、炒男。」

「今のは取り消せ!ご飯を食べられない人全員に!!ってか、炒男ってなんすか!?」

 そこまで抗議すると片腕を掴まれ組み伏せられた。

「イダダダッ!!沙流さん、痛い!ギブです!!」

「紫姫様、どうします?」

「許してやりな、沙流。」

 カーペットへ寝そべり、そう指示する。

「はい。」

 パッと解放され、自由になる。

「そこまで言うなら、師匠が作ってくださいよ。」

 子供の様に、最後の抵抗を試みてみる。

「だからガキは嫌いだ。沙流、何か作ってやりな。」

「かしこまりました。」

 そう言い、綺麗な動きでキッチンの方へと向かう。それを見て、ゆっくりと扉を締めようとする。

 ガッと扉の合間に靴が割り込まれる。

「待ってよ紅ちゃ~ん。」

 猫なで声の声がする。隣に住む女性、藤代ふじしろ千枝ちえだろう。

「千枝さんこんばんわ。」

 扉を開放しつつ挨拶する。

「どもどもぉ~ありゃ、紫姫ちゃんも居るんだ?」

「よう千枝、元気か?」

「もうバリバリっすね~紅ちゃんお酒ある?」

「はいはい、買ってきてますよ。」

「さっすがぁ~」

「千枝、人の物にあまりたかるなよ?」

「師匠、俺は師匠の物じゃありません。」

「昔助けてやったろ?」

「間接的に、ですね。保護されたあとに護送を任されたんでしょ?」

「まぁ、コッチはコッチで忙しかったんだけどねぇ~」

 いつもだ。師匠は、水嶋みずしま紫姫と言う女性はいつもこう言って誤魔化す。彼女ほどの実力者がなぜ頑なに語ろうとしないのか。あの爪の男の人のこと、彼女自身のこと。何一つ俺は聞かされていない。謎の多き女性。

 そんな彼女とは、爪の男の人に救われた後に引き渡され、この街へ連れてきてもらった。

「弱い奴は嫌いだ、強くなれ。」

 そう言って大きな門構えの家の前に投げ捨てられ、置き去りにされた。丸一日家の前で雨に打たれ続け、その家の内弟子になった。八代家での4年半、俺は徹底的に体中の骨を基盤から壊され、砕かれた。そうして要約と体は壊れづらくなった。名前も、八代の人に付けてもらった。蒼羽あおば姉さんが俺に名前をくれて、深夏みなつ父さんが体を鍛えてくれた、愛加まなか母さんには本当の家族の様に愛情を注いでもらった。そして、俺の事を唯一覚えてくれてた八智代ちゃんと再開した。家が隣だった僕たちは、幼馴染だったらしい。俺には記憶がない。だけど、そうだったらしい。それから、中学を卒業して高校へ進んで、一人暮らしを初めて、今に至るわけだが・・・

「ひゃっほ~沙流ちゃん料理上手だねぇ~」

 と、隣人の千枝さんが沙流さんの胸を鷲掴みにする。

「千枝さん、やめてください。」

「釣れないねぇ~」

「でも、すごく美味しそうです・・・今度レシピ聞いても良いですか?」

「お断りします。有る物で作ったので即席です。」

「んじゃ、頂くかね。」

 と紫姫が箸を持ち食べ始め、紅也と千枝が続く。

「お、美味しい・・・」

「流石だ沙流。」

「勿体無きお言葉、恐れ入ります。」

「所で紅也、今日の依頼はどうだった?」

「どうもこうも、ただのストーカー退治でしたよ。」

「それで、脇腹を打撲か?情けないな。」

 サッと打撲部位を触り、確かめる。

「ホントだ・・・」

「車にねられ8m飛ばされ、高さ179cmの塀に衝突。二度小さく地面を跳ねました。」

「沙流さん・・・」

「で、報酬は?」

「前納金5万円、報酬金10万円。彼の独断で前納金半額と言う結果で終わりましたが。」

「またアンタは・・・」

「良いでしょう?僕の受け持った仕事です。」

「この前の御婆さんみたいにみんながオヒネリくれるとでも思ってるの?」

「えっ!?なんでその事・・・」

「別に良いけどね、アナタの仕事だからアナタ流のやり方で。」

「はい・・・」

「でもね、安易に報酬を削るのはプロじゃない。自分の仕事にプライドを持ちなさい。」

「そぉ~そぉ~お姉さんもそう思う。」

「千枝様の今月の収入は12万3千円。」

「・・・沙流ちゃん・・・」

「千枝、もっと仕事しろ。」

 そこまで言うと千枝を掴み玄関の外へ追い出す紫姫。

「流石師匠。あの千枝さんを軽々と・・・」

「アンタも少しは鍛えなさい。」

「鍛えてますよ!!」


FILE,1 END...

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