1 . 出会
※注意※
こちらは私の連載中作品『√Heven』と繋がっています。(番外編?)
先にこちらを読んだ方が良いかもしれません。
この俳優――“豊宮 レン”。
あたし、“小鳥遊 椿”が出会ったのはたった、2週間前の始業式。
*
朝は苦手だ。
朝日は昼の太陽よりも眩しい気がする。
まぁ、それは目の問題なんだろうけれど。
叔母に早朝に起こされ、それからずっと起きていたせいか
学校についてからすぐに机に突っ伏した。
まだ隣の席の男子も来てないらしい。
少し寝よう。
10分後。
辺りが女子の黄色い歓声で賑わっていて目がさめた。
何事かと顔をあげると、教室に入ってくる前のある人がいた。
豊宮 レン。
現在TVの中では一番人気と噂されるほどの俳優。
料理、スポーツ、勉強、何でもできる万能高校生俳優。
このクラス、3-Cにもファンはそれなりにいる。
「ねぇレン君!レン君の隣の席の子だれぇー?」
「あ・・・えとね、小鳥遊さん?」
その途端、周りの女子が「えー!!」とクレームをつける。
あたしですか!?
女子から恨まれるのは私なんだけれど。
「君かな、小鳥遊さんって」
レンが営業スマイルだか本物スマイルだかわからない笑顔をあたしに向ける。
「いえ、違います」
ここは別人のふりをする。
だが。
「椿はこの子だよ」
いつのまに学校に来ていたのか、親友の新塚 優希がレンに教える。
「優希・・・。」
さすがドSである。
女子の中でもずば抜けてSだ。
「やっぱり。どうして隠したりしたの?」
はっきりいって、この俳優の顔は似合わない。
顔立ちは綺麗なのだが、性格と合っていない。
性格は優しそうで明るそうだけど
目が鋭く尖っていてまるで優しそうに見えない。
黙っていたら普通にクールなイケメン・・・アニメによくあるキャラである。
しかも前髪が少し左目にかかっているせいか一層そう見える。
「え、あの。女の子達に悪いので。あたしは席、変えて貰います」
その瞬間、女子は喜んだが束の間。
レンがあたしの腕をつかんだ。
「なにす・・・」
「俺の隣になって。気に入っちゃった」
口は笑ってるのに目が笑っていない。
なんだろう、豊宮 レンってもっと・・・何かが違う。
「小鳥遊さんずるい・・・」
女子はあたしを僻んであたしたちの席から離れていく。
「はぁ・・・あのさ」
さっきと態度が変わった。
なんというか、砕けたというよりも尖った感じ――。
「はい?」
「お前、あの女子共を俺に寄りつかせんな」
まるで別人。
でも優希が話の途中に入ってきたぐらいで分かっていた。
こんな鋭い目をした人が優しいわけがない。
優しくないって思った。
今まで怖かった人は目が鋭かった覚えがある。
今まで色んな人を見て、接してきたからわかる。
「やっぱりね。豊宮君ってそういう人って気づいてた」
「最初から気づいてなかったのか?とんだ馬鹿だな」
レンは鼻でふんと笑う。
「あと俺、豊宮 レンとかいう不細工な名前じゃねえし」
「じゃあなんと?」
本名が知りたい。なんとなく興味で。
こんな暴言吐く人だってわかったのに。
「俺は黒崎 尚。この性格業界で見せた事ねえし本名だってばらしてねえ。お前、ばらしたら殺すから」
この人が殺すとかいうと本気に聞こえるから怖い。
「宜しく尚。」
挨拶をすると尚はシカトして本を取り出していた。
なるほど。こういう奴か。
これは面白い1年間になりそうです。
*
という経緯でこの2週間、喧嘩したり暴言吐かれながらも頑張ってきた。
まだまだこれからずっとこの席なんだけど。
「おいブス」
いつも『ブス』、『茶髪』、『不細工』・・・
名前(苗字)で呼ばれたことはあの営業スマイルの時しかない。
「何?」
「教科書よこせ」
返事も聞かずに手元の現国の教科書を奪い取られる。
現に今は現国の授業をやっていて、担当教科の先生が説明をしている所だった。
「ちょ、ちょっと!返して!」
「忘れた。お前は空でも見てろ」
なんと自己中な男だろう。
こういう場合2人で見るものではないのだろうか。
「はぁ・・・」
何を言っても聞かない人らしい。
そんな事2週間前からわかっている。
言われた通りあたしは空を見つめていた。
そういえば高校になっても何も変わらなかった。
もう3年生だ。
何か刺激がほしい。
尚は俳優をやっていて仕事でクラスを抜ける事も多い。
あたしも熱中できる事を探せばきっと―――。
いや、ダメダメ。
今は色々と忙しい。
熱中できる事なんて探すだけ無駄だ。
いつのまにか周りを見ると既に自分の席を立っている生徒で賑わっていた。
男子は廊下で騒ぎ、殆どの女子は尚の周りに来るんだけれど。
どうやら休み時間を告げる鐘が鳴っていたらしい。
ずっと考え事をしていて気付かなかった。
「俺、今からまた仕事で抜けるんだ。ごめんね。また明日」
あの営業スマイル。
ああしていれば本当にかっこいい。
「レン君~!お仕事頑張ってね!」
「今日のテレビ絶対見るからね!」
尚のファンの女子が皆それぞれ声をかける。
そうだった。この女子達は尚の本名も本当の性格も知らないんだった。
尚は学校では豊宮 レンで通っているから。
あの人の本性を知らない女子は哀れだ。
尚から目を離した瞬間。
ドクン――。
心臓が死にそうな程に痛い。
息が出来ない。苦しい。
またこの、症状。
自分の席から尚を見ていた優希があたしの状態が変わった事に気づいて席に近寄ってくる。
「椿、・・・大丈夫か?」
心臓を抑えたあたしに心配そうに話しかけてくる。
「そのことは学校では内緒・・・の約束だよね」
まだ鈍い痛みが治まらない。
優希とは一週間前にある約束をした。
駄文、見て下さり感謝です<m(__)m>