幸せ
掲載日:2026/09/14
「ため息をつくと幸せが逃げる」
ならば、逃げる所を捕まえれば良い。
科学者達は、そう考えた。
ため息をつく被験者を隔離し、周囲を観察した。
だが、『幸せ』は見えなかった。
観察が出来ない。
もしかしたら、量子のように、観察すること自体が、
『幸せ』に何らかの影響を与え、見えなくしているのかも知れない。
一人が呟いた。
「見る必要はない。
ため息から逃げるという行動原理を利用して、
『幸せ』を追い詰めれば良いのだ」
天才的発想だった。
一つの部屋に、被験者はぎゅうぎゅうに詰め込まれた。
部屋の一箇所だけ、隙間がある。
何度も何度も、ため息をつく被験者達。
ため息が充満していく。
追い詰められた『幸せ』は、その隙間に逃げ込んだ。
瞬間、その隙間が隔離され、
小さな檻の中に『幸せ』が閉じ込められた。
科学者達は歓喜の声を上げた。
これで実験の、し放題だ。
増やして売り物にもなる。
彼らは檻の中の『幸せ』を覗き込んだ。
『幸せ』は
深いため息をつき
『不幸』になっていた。




