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4.前途多難な旅の始まり。

「ついたよ」


 扉を開けて、部屋に入ってからやっとグラシアは降ろしてくれた。


「もう安全だからね」


 グラシアはそう言うけど、なにか不安なのはなぜだろうか?

 っていうか、別に危険じゃなかったけど。

 ルームメイトの悪ふざけだったし。

 気持ち悪かったけどさ。


「グラシア。とりあえず明日は部屋に戻るからな。あいつらもちゃんと話せば大丈夫だから」

「駄目。絶対に駄目。カミロはここで寝起きして。私がカミロを守るから!」

「守る……。なんかそういう嫌だ。確かに俺は女の子になったけど、そんな風に言われるのは嫌だ」


 思わず俺は本音を漏らしていた。

 女の子になって一番不満なのは、グラシアに守ってもらう立場に逆戻りしたからだ。

 俺は、グラシアを守れるような騎士になりたかったのに。


「カミロ。泣かないで」

「泣いてなんかないからな」


 最悪だ。

 なんか、涙脆くなってる。

 うう、呪いの馬鹿野郎。


 その夜、俺はグラシアの部屋に泊まった。

 二人部屋のところをルームメイトが出て行ったため、ベッドが一つ空いていて助かった。



「ごめんなさい。呪いを解く方法が見つかりませんでした。その魔獣を捕らえて解析することは可能でしょうか」


 エレナさんのところへ通って三日後、申し訳なさそうに言われてしまった。


「そうだね。じゃあ、エレナ。魔獣の情報を得たら、知らせるよ」

「ありがとうございます。カミロさん、グラシアさん、全然力になれず申し訳ありませんでした」

「そんなことありません」


 実はあまり期待していなかった。

 殿下はきっと俺たちをダシにエレナさんに会いたかったんだろうな。

 でもあっさり引いたのはわからないけど。


 そうして俺たちはエレナさんの元から殿下の部屋に戻り、護衛騎士は解任され、騎士団に戻ることになった。

 なんて、いうか、我儘?

 まあ、いいけど、

 毎回なぜかメイド服着せられるのも嫌だし、グラシアの部屋に泊まるのもちょっと嫌だったから。

 だって、グラシアはこれみよがしと部屋で着替えたり、なんか「私の肉体を見て」、アピールをする。

 今のグラシアはなんて言うか彫像になれるくらいの体つきをしている。

 可愛いから、カッコいいになって、女の子にももてまくりだ。

 傍にいる俺が睨まれるのは本当に意味がわからんけど。

 俺が俺の見えないところで着替えてっていうと不思議そうな顔されるから、俺も仕返しで服を着替えようとしたら、めっちゃ怒られた。

 不公平すぎる。

 グラシアは元々は女の子なんだから、女の裸なんて大丈夫なのに。

 俺だって男の裸は全然大丈夫なんだけど、グラシアは……。

 え、もしかして、グラシアもそういう意味で?

 俺、期待してもいいの?

 いやだけど、今のままじゃあ……。


 頭に浮かぶのは、俺がドレスを着て、グラシアが騎士の正装をして結婚式に挑む情景だ。

 だめだ、だめ。

 俺は男に戻って、グラシアに好かれたい。


「カミロ?さっきから黙って、なんか考えているみたいだけど、大丈夫?」


 着替えを終え、部屋着を着たグラシアがベッドに座っている俺をかがみ見る。 

 さらっとした髪が垂れて、目元が涼やかなハンサム顔がドアップだ。


「大丈夫!」


 なんていうか、カッコいい。

 俺が男に戻ってもこんな色気は出せないだろう。

 ああ、なんか悔しい。

 でも早く戻りたい。

 俺が元に戻ったら、グラシアも元に戻ることを考えてもいいみたいだから。

 うん。

 あの魔獣を探せば、最悪もう一回呪いを食らえば、元に戻るかもしれない。


 ☆


 翌日俺とグラシアは元の第三分隊に戻った。


「待っていたぞ!カミロ!」


 両手を挙げて歓迎してくれたのはアリシオ先輩だけど、その手の動きはなんなんだろう。


「カミロ、グラシア。やっぱり元には戻れなかったのね。残念だわあ」


 ギエム先輩がうんうんと唸りながら現れる。


「お帰りなさい。戻ってきてくれて嬉しいですよ。あなた方がいないと私も現場に出る必要があり、大変でした」


 分隊長のダルミロ様はなんていうか、分隊長としての責任感はないんだろうか?


 とりあえず、俺たちは第三分隊に戻り、ほっとしていた。

 元には戻れていないけど、やっぱり護衛騎士として殿下の周りにいるのは堅苦しかった。

 メイド服も嫌だしね。

 護衛騎士って憧れていたけど、俺には向いていないな。

 まあ、平民には適切じゃない気がする。


 こうして第三分隊に戻って、俺はもう殿下に会うこともないんだろうなあと思っていた。

 しかし一週間後、俺たちは再会した。


「あの魔獣がカナーンの村に出現したようです。調査および捕獲、捕獲が無理なら退治してきてください」


 一週間後、あの呪いの魔獣情報が手に入り、俺たち第三分隊は調査に行くことになった。

 分隊長はもちろん同行しない。

 行くのは俺と、グラシア、アリシオ先輩、ギエム先輩の四人だと思っていた。けれどもそこにエレナさんが加わったのだ。呪いの魔獣をその目でみたいということで、参加許可が下りたみたいだ。

 俺は不安で、多分グラシアもそうだったと思う。だって、魔獣退治は命がけだ。エレナさんに危険が及ぶ。

 しかし、それに対して、ギエム先輩が言い放った。

 いや、ギエム先輩に成り切ったあの人が、だ。

 

「私があなたを守りましょう。ご安心ください」


 仮面を被り、ギエム先輩の名を語る、その人。

 アリシオ先輩はちょっと引いていて、それがまた彼が本当は誰かなのかを推測させた。

 だけど、アリシオ先輩はエレナさんがいないところで、俺たちに釘を刺した。


「あれはギエムだ。わかったな。何も聞くな」


 ……どうやらブルーム殿下がギエム先輩の代わりに同行するらしい。


 王族と魔術師の二人を加えた魔獣調査の旅……。

 前途多難すぎる……。



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