表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「奇遇ですね。私の婚約者と同じ名前だ」  作者: もちもちほっぺ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/22

20

夜会の余韻が残る静かな夜、リリエットは寝室の窓辺に佇んでいた。


星の光が静かに降り注ぐ中、彼女の心は穏やかでありながらも揺れていた。


クラウディオが他の令嬢たちの誘いを断り、ただ自分だけを見つめていたこと。


彼の腕の中で踊りながら感じた、久しぶりのときめき。


それは決して過去の甘い夢ではなく、現実のものだった。


――でも、それだけで信じるには、まだ足りない。


彼の変化を認めながらも、長い間積み重なった感情のしこりは、そう簡単には消えなかった。


翌朝、食卓の席には家族が揃っていた。


母が優雅に紅茶を口にしながら、リリエットの表情をじっと見つめる。


「昨夜の夜会、素敵だったでしょう?」


問いかけに、リリエットは少し戸惑いながらも頷いた。


「ええ、とても……」


「クラウディオ様と、とてもお似合いだったわ」


その言葉に、リリエットは思わず視線を落とした。


――私は、本当に彼と釣り合っているのかしら。


「お前の気持ちはどうなんだ?」


エドガーが重く口を開いた。


リリエットは、兄の真剣な瞳を見つめる。


「……まだ分からないの。だけど、もう少し彼を見ていたいと思うわ」


その言葉を聞いて、エドガーは静かに頷いた。


「無理はするな」


「ええ、分かってるわ」


母も父も、それ以上は何も言わなかった。






学園では、クラウディオの変化がより顕著になっていた。


学業も剣術も、以前にも増して優れた成績を収め、学園内での評価はますます高まっていた。


彼はこれまで以上に完璧だった。


だが、それ以上に変わったのは、リリエットへの態度だった。


以前のように冷たく距離を置くことはなく、かといって急に親密になるわけでもない。


彼は、慎重に、そして誠実にリリエットと向き合おうとしていた。


それが、リリエットの心を少しずつ揺らしていく。


「リリエット、今日はサロンに行かないか?」


ある日、クラウディオがそう提案した。


驚いたが、断る理由はなかった。


「……ええ」


クラウディオのエスコートでサロンへと向かう。


そこには、彼がわざわざ手配したという純白の花々が華やかにテーブルを飾り、リリエットが好きなデザートも用意されていた。


「これ、あなたが?」


「君が好きだと言っていたからな」


彼はそう言って、さりげなく花に触れた。


――こんなふうに私の好きなものを覚えてくれているなんて。


それが、かつての彼にはなかったものだった。


それでも、まだ完全には信じられない。


「クラウディオ様は、私のことを知ろうとしているのね」


リリエットはそっと言った。


「……今まで、知ろうとしなかったからな」


「後悔してるの?」


クラウディオは静かに頷いた。


「もちろんだ」


その言葉が嘘ではないと、リリエットは感じた。


「……ちゃんと考えてくれて、嬉しい。ありがとう」


彼はその言葉だけで十分だと言うように、ただ微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ