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「奇遇ですね。私の婚約者と同じ名前だ」  作者: もちもちほっぺ


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15/22

15

クラウディオは、セシルの部屋の扉を軽く叩いた。


「兄様? どうしたの?」


部屋の中から聞こえる声に、彼は短く息を吐き、扉を開いた。


「話がある」


セシルはベッドに腰掛け、読んでいた本を閉じると、兄をじっと見つめた。


「……もしかして、リリエットのこと?」


その問いに、クラウディオは静かに頷いた。


「彼女の気持ちを取り戻すために、俺は何をすべきなのかを知りたい」


セシルは一瞬、呆れたような顔をしたが、すぐに皮肉げな笑みを浮かべた。


「ふぅん……ずいぶんと真剣そうね。でも、今さらそんなことを考えるなんて、兄様って本当に不器用というか、鈍感というか……救いようがないわね」


「分かっている」


「本当に?」


セシルは腕を組み、冷ややかな目で兄を見つめる。


「リリエットはね、兄様の美貌や剣術の腕前に惹かれたのもあるけど、それだけじゃないのよ」


「……?」


「彼女は、兄様の私に対する態度を見ていたの」


クラウディオは息を詰めた。


「セシルに……?」


「そう。兄様は昔から私には優しかったでしょう? それを見て、リリエットはきっと『兄様は本当は優しい人なんじゃないか』って思っていたのよ」


「……」


「だからこそ、期待し続けてしまったのよ。『いつか、私にもそんな風に接してくれるかもしれない』って」


セシルは大きくため息をついた。


「でも、兄様はそんな彼女をずっと突き放してきた。彼女がどれほど勇気を出してお茶会に誘っても、話しかけても、期待しても……全部無駄だった」


クラウディオは拳を握りしめた。


「俺は……」


「自業自得よ」


セシルははっきり言った。


「今さら、彼女が自分に興味を持ってくれないことに焦っているんでしょう? でも、それは兄様が自分で撒いた種なのよ」


クラウディオは何も言えず、ただ沈黙した。


しばらくすると、セシルはふと思い出したように微笑んだ。


「あ、それとね」


「……?」


「リリエットって、兄様が長髪だった時期があるでしょう? あの頃、彼女のテンションがすごく高かったのよ」


クラウディオは思わず眉をひそめた。


「長髪……?」


「ええ。学園に入る前、兄様が少し髪を伸ばしていた時期があったでしょう? あの頃、彼女はよく『すごく素敵です』とか『あなたの優美な雰囲気にお似合いです』とか言ってたわよ」


クラウディオは記憶を遡る。確かに、かつて彼は一時的に髪を伸ばしていた時期があった。


だが、それがリリエットの関心を引いていたとは知らなかった。


「……そんなこと、彼女は言っていたのか」


「ええ。でも、兄様はそのときもそっけなく流してたけどね」


クラウディオは言葉を失った。



「ま、せいぜい頑張ってね」


セシルはそう言って、本を開いた。


「どうせ今さら何をしても、簡単にリリエットの気持ちは戻らないと思うけど」


クラウディオは、その言葉を噛み締めながら、静かに部屋を後にした。

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