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脱出ゲーム

 耳障りな鐘の音が響き、俺は覚醒した。

 しかしいくら目を見開いても、世界は闇に包まれている。

 あたりを手探ると、どうやら帷があるようだった。

 そおっと、布を掻き分けて外を窺う。

 

「————ッ⁈」

 

 突然冷気がこの身を襲った。外の世界は絶対零度のようだった。

 だがここから出る以外にできることはなさそうだ。

 覚悟を決めて、帷を開く。

 冷えた地面に、数々の人工物。どうやら閉鎖された空間に自分はいるようだった。

 足元に注意しながら歩みを進める。角張ったものに躓かないようにするためだ。薄暗い部屋で全てを見渡すことはできないが、ところどころ何かが当たる感触が気分を害した。

 

 ——さて、ずっと暗いままというのも不安だ。

 灯りを探そう。壁伝いに歩くと小さなボタンに触れた。

 世界に光あれ——念じずとも自ずとその部屋は灯火を取り戻した。されど今度は別の問題が浮かび上がってきた。

 見えはするが、なぜかまるで霧がかかったかのように不明瞭な光景なのだ。

 世界にモザイク処理が施されたかのような曖昧なビジョン。どうにかして本来の世界を取り戻したいところだ。

 そう思い、手がかりを得ようと歩くとふいに、地面に転がった何かがつま先に当たった感触がした。

 今まで見えていなかったのでその正体を考えたことはなかったが、どうやらそれはガラスでできた何かのようだ。

 それを通して世界を覗くと、鮮明に物が見える。この道具がこの空間から出ることに役立てばいいのだが…………。

 

 扉を見つけた。

 

 鍵はない。ドアノブを捻るだけで容易に開いた。これで鬱屈とした空間からおさらばできると思っていた。しかし————。

 

 扉の先には、さらに広い密室がこの身に待ち構えているだけだった。

 なぜかはわからないが急いで脱出しなければならないという使命感が湧いた。

 その空間にあるのは何個かのテーブルと、その上や周りに置かれた道具だった。

 まず一つ目のテーブルへ向かう。

 ここのギミックは簡単なものだった。それぞれの穴に対応する物質を入れてボタンを押すだけだ。

 四角い入れ物に四角の物体を入れてボタンを押す。

 その次に円形の板の上に丸いものを入れて様子を見守る。

 そうして第一のギミックは完了した。穴から入れたものを取り出して次のテーブルへ向かう。

 どうやら四角い箱の中に脚を入れて先ほど取り出したものを使うらしい。

 試行錯誤した結果、近くの穴にそれらを詰め込んでここのギミックはクリアしたようだ。

 しかしこれは罠だった。

 

「脚が、離れない……⁈」

 

 箱の中に入れていた下半身がまるでワニに噛み付かれたかのように抜け出せなくなっていた。

 それに時間を取られて数分のロスができてしまったからか、俺の額には汗が滲み出ていた。

 急いで次のテーブルへ向かう。

 そこには中央に穴の空いた壁があった。

 その下のテーブルにはブラシが置かれていた。

 ブラシを手に取ってその穴を見つめた。そこにはパールオレンジの円に白い点と帯があった。

 手を伸ばしてみるも、見えない壁に阻まれて届きはしない。

 しかしよく見てみると、どうやら穴中にある物はこちらの動きと連動しているようだった。こちらがブラシを動かすと、それと連動して穴の中にもブラシが現れる。

 この仕組みをうまく利用して、ブラシを白の帯のところまで持っていった。

 そうするとここのギミックは完了となったらしい。

 いよいよ最後のギミックとなった。

 ここでは色を選ばなくてはならないらしい。用意された布の中から一つを選ぶようだ。

 あるのは十二色ほど、赤から青まで、明るいのからくらいのまであった。

 何を以てどの色を選べばいいのか皆目見当がつかない。もうここは勘だ。黒を選択する——。

 さあ、扉を開けよう。外の世界へ脱出するんだ。必死になって走る。これで正解なら脱出できるはずだ。

 

 

  ◇

 

 

 結果として、男は脱出できなかった。何日も何日も同じように同じ部屋から出て、数時間の拘束を受けたのちにあの部屋に戻され、そこから出ることを強いられるのだった。

 

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