6
ドレスを脱ぎたい!!!!
茉莉の体は限界だった。
話し合いが終わって通常業務が始まった彼らは着々と仕事をしている。
茉莉はぼーっとするのは得意な方だがそれは身体が自由な時に限る。
この世界の胸当てはコルセット一体型だ。
つまり自然と姿勢が良くなりなおかつ、お腹あたり、そして呼吸が苦しい。
そこまでキツく締め上げてはいないが、いかんせん茉莉はゆったりとした服を好んでいた。
ドレスを脱ぎたい、ゆったりとした服に着替えたい、自身の要望を叶えるため、茉莉は抗議をしようと決意する。
茉莉は曲がりなりとも成人女性だ。泣き喚くといったことはせず冷静に交渉しようとした。
「苦しいです。ドレスを脱がせてください」
そう。しようとしたのだ。冷静に交渉を。
しかし、茉莉の体は限界だった。
なぜ脱ぎたいのかだけを簡潔に述べ、他は全てすっ飛ばして男だらけの執務室でドレスを脱がせてほしいとわけのわからない言葉を発している。
「・・脱がせ・・・え??」
ルイスの水色の瞳が揺れる。
1人で脱げないのだから脱がせてほしいという言葉はある意味的確だ。
もちろん普通に考えれば部屋に戻って侍女たちに頼めばいい。
「部屋に戻って着替えてきてもらってもいいのだが、いかんせん警備が手薄なのだ。今はライアンには休んでもらっている。・・・さて、どうしたものか。」
そういうアルベーヌの顔は唇の端が上がっているのを隠しきれていない。
「侍女さんたち呼んでくださいよぉ〜。」
「この執務室はたとえ侍女だとしても女性は入れない決まりになっているのだ。」
「どうしてですか??」
茉莉は気になったことを素直に質問する。
この疑問には宰相であるキリアートが答えてくれた
「陛下は一国の王で結婚適齢期をすでに過ぎていますが未婚です。そんな中女性の執務室入室の許可があれば女性が押しかけてきてしまうでしょう?」
「??私入ってるじゃないですか。」
「マツリ殿は特別だからな。」
「なるほど?」
私は女ではない何かってこと??だとするのならばなんだ?
茉莉がなんとも残念な方向に勘違いしているが、なんか許されてるならいいかと茉莉は考えるのをやめた。
「事情はわかったのでとりあえずコルセットだけでも緩めてください。苦しいです。1番上手なの誰ですか?」
「私がやろう」
口角が上がりに上がりまくっているアルベーヌが席を立ち茉莉に近づく。
「私がお手伝いいたします。陛下はお座りになっていてください。」
「護衛のお前が自身の両手を塞いでどうする。」
ルイスとアルベーヌが言い合いを始めた。
宰相であるキリアートはただため息を吐くだけだ。
「言い合いしてる暇があるなら私をコルセットから解放してほしい・・・。」
「どうかしたのか?」
茉莉が途方に暮れていると扉から静かにライアンが入ってきた。
茉莉は扉の近くから歩いてくるライアンにソファから立ち上がり近づいていく。
「もう働いて大丈夫なんですか?昨日は徹夜してたみたいですし・・。」
「これくらいなんてことない。忙しい時期は数週間まともに仮眠もとれないからな。」
「ひっ」
寝ることが趣味化しつつある茉莉には理解のできない世界だった。
聞かなかったことにしようと茉莉は決心し、言い合いしてる2人を視界にとらえながらライアンに本題を話した。
「コルセットがきつくて苦しいので緩めてくれませんか?警備の問題とか色々あって部屋に戻ることも侍女さんを呼ぶこともできないらしいので」
「・・・私は構わないがマツリ殿はいいのか?」
「??私から頼んでるのにいいも悪いもないですよ。」
何を当たり前のことをと茉莉は思いながら背中をライアンの方に向ける。
「・・・なるべく見ないようにする。」