33.尾行中は背後の警戒が疎か
8月も下旬に差し掛かってきた本日。
2度目の登校日である。
盆も終わり、生徒の安否確認がメインとなっている日で特にイベントが行われることはない。
部活動組はどうせ学校に来る必要があるため何とも思ってないかもしれないが、帰宅部としては普通にしんどい。
先生によっては宿題の提出口を設けていたりしてくれるため、そういった目的を作ってようやく許容できるレベルだ。
そうしてすぐに訪れた放課後。
クラスの面々はある話題で持ちきりだ。
「明日楽しみだねー」
「え!?○○君と行くの!?」
花火大会である。
年に一度の開催される市内、なんなら県内で最も大きな花火大会が明日行われる。
クラスの多くの人も行くようで明日の予定について話している。
夕方以降、何なら花火自体は夜だから部活も関係ないしな。
「白石さんは花火大会に誰かと行くんですか?」
そんな中、白石に声をかけるものの声が聞こえる。
年に一度のチャンスということで勇気を出したのだろう。
「ごめんなさい。先約があるので…」
しかし、男子生徒Aの勇気も虚しく断られてしまった。
可哀想に。
教室には人も多く、クラス中に玉砕シーンを見られてしまったようだ。
男子生徒Aもとい浅村君、君の勇姿は忘れない。
しかし先約か。
白石は何も言ってなかったが、蒼井あたりと行くのだろうか。
「ねぇ、真。明日暇だよね。花火大会一緒に行こうよ」
「え、嫌だが」
白石と浅村君の様子を眺めてると、隣から祐人が声をかけてくる。
そんな誘いに乗るわけないだろう。
当然断る。
「そこをお願い!たこ焼きとか奢るからさ!それに真こそいいの?年に一度、更に言えば花火のバリエーションは毎年変わるからもう見れないんだよ?」
と、祐人は説得を試みてくる。
日本人の悪いところだ。
年一とかオーリーワンとか限定的な言葉に惑わされる。
オレも例に漏れず揺らいでる。
そして祭りのたこ焼き。
あのたまにタコが入ってないところも含めて嫌いじゃない。
仕方ないな。
「ジェラートも追加な。それで手を打とう」
「決まりだね。それじゃあ明日よろしく。詳しくはL〇NEで送るね」
オレの追加要求も見越していたようで快諾して祐人は部活に向かった。
さて、オレもすることするかね。
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下駄箱で待つこと数分。
目的の人物が姿を現した。
茶園亜美先輩だ。
生徒会副会長で美少女四天王の一人。
兼ね備えた美貌に厳格な性格。
生徒会の一員として表に立つことも多く注目度も高い。
そんな先輩はオレに気づくことなく校門を出ていく。
そして、その後ろを付かず離れずの距離で歩く者が一人。
眼鏡をかけた細い男子生徒だ。
名前は分からないが、2年生であることは確かだ。
今2年生の靴箱から出てきたし、このような生徒がいることは桃瀬先輩に確認済みだ。
オレはその先輩のさらに後ろを着いていく。
恐らくあの人が茶園先輩のストーカーだろう。
以前緑川会長と出くわした時、この話を持ちかけられた。
茶園先輩にストーカー行為を働いている生徒がいる可能性がある、と。
会長が解決してくれと思っていたのだが、この件をオレがどうにかすれば生徒会勧誘の話は無しにしてくれるという条件のもと、引き受けさせてもらった。
それに会長は業務で忙しく、茶園副会長とは下校時刻も方向も合わないということで証拠を集めたり解決に導くのが難しいらしい。
下駄箱にいるオレの存在にも気がつかないレベルで警戒心も無く、ストーカーに自身で気がつくのは無理だろう。
会長も1度それとなく伝えてみたらしいが、茶園先輩は自分にストーカー行為をはたらくものなどいるはずないと一蹴されたらしい。
そういうわけでオレが密かに解決する状況が生まれた。
まぁこれではオレもストーカーと思われかねないが。
今日中に解決することは出来ないため、今回の目的は犯人の特定及び、証拠となりうる映像か写真の確保だ。
そのため、オレは2重ストーキングのようなことを行っている。
メガネの先輩、恐らく別所先輩は茶園先輩のストーキングに夢中で、オレの存在には気がつく素振りも見せない。
高校からほど歩いたところで、オレはスマホのカメラを構えた。
高校の近くだと他の生徒の目もあり、偶然一緒の線も消えないが、ここまで来ればその言い訳は難しいだろう。
厳密には難しくさせられる、だが。
その後は様子を見つつ着いて行き、別所?先輩と茶園先輩が別方向に別れた。
閑静な住宅街なため、恐らく茶園先輩の家の近くだろう。
別所先輩が引き返して来ることも考慮してオレもそろそろ退散させてもらうか。
夏休み中で、別所先輩は恐らく帰宅部。
バレることを恐れているようなので、夏休みにわざわざストーカー行為を繰り返す可能性は低そうだな。
それに、直接的な行動を起こすとしたら然るべき時に行うだろう。
その時までに完全な証拠と道筋を立てる必要がある。
別所先輩には申し訳ないが、オレの平穏な日常のためだ。
そんな行為をした己を恨んでくれよ。




