30. 結局知り合ってしまう
カンカンに照っている日差し、アスファルトを見ると陽炎。
うだるような暑さの8月某日。
通常であればクーラーをガンガンに効かせた部屋でゆっくりしているはずだ。
はずなのだが…。
「いやっふう!」
バシャーンッ!
「いやぁやっぱ、夏といえばプールだよなぁ」
プールに来ている。
事の発端は本日学校に入れないということで全部活動は休みとなった。
つまりは全員の予定が合ったということだ。
同じ外部活の福島、加藤、佑人、浅野はそれを共有していて福島がプールに行きたいという話になったそうだ。
その後オレだけ誘わないというわけにはいかないらしく誘われた。
当然最初は断ったのだが、佑人にどうしても来て欲しいと言われたら仕方がない。
正直予定などないし次の日の筋肉痛を考えなければ意外と楽しめるかもしれないしな。
今日来ているのはいわゆるレジャープールで、普通のプールとは別に、波を発生させるものや流れるもの、子供用があり、ウォータースライダーもあるといった割と一般的なレジャープールだ。
というか我が県は海の方が充実してることもあり、レジャープールが少ない。
ここはプールの周り、というか同一施設には複数の飲食店や土産売り場などがあるため決して小さいということはない。
恐らく県内では最も大きいレジャープールであるといえる。
元気に泳ぎに行った福島と加藤をしり目に、オレは佑人と浅野と話しながら浮き輪に浮かび流されている。
日差しの暑さと水の中の涼しさがいい感じに混ざりあって悪くない。
ドンッ
「あ、すいません」
こちらの浮き輪と誰かしらがぶつかってしまったようで、オレはすぐさま謝る。
「ああ、こちらこそ不注意で…、って赤城と
浅野と…確か黒田だったか?」
お相手も紳士に謝ってきたのだが、こちらの名前を言い当ててきた。
最近見た顔だな。
「あ、大友先輩じゃないですか。こんちわっす」
「本当だ。こんにちは」
大友先輩だった。
お忘れの方もいると思うので軽く振り返ると、サッカー部の先輩で以前佑人に嫌がらせをしていた人だ。
クラスマッチの試合で勝てばやめてやるよってなったらしくボコボコにさせてもらったあの先輩だ。
今は良好な関係を築いているらしい。
というかオレのこと認知してるのか。
いつか復讐とかされないのを祈ろう。
「お前らもプールか?」
「はい、せっかくのオフなんで」
「そうか、まあ俺らも似たようなもんだけどな」
という感じで仲のいい先輩後輩という雰囲気で話している。
「お〜いっ、なにしてんの〜?置いてっちゃうよ?」
そんな時、知らない女性の声が聞こえてきた。
「あぁ、悪いな。後輩たちと会ったもんでな」
「えっ?あっ!サッカー部の赤城君と浅野君じゃん!で、もう1人は…、クラスマッチで大活躍してた子だ!」
彼女は佑人、浅野を知ってるようだった。
まあこの2人はイケメンで評判なこともあり、3年生が引退してからは佑人と同じく浅野もチームの主力として活躍している。
1つ上からは知られていても不思議では無い。
「え、と、そちらは桃瀬先輩でしたよね?」
「え!私のこと知ってんの〜?いやぁ、有名になったもんだねぇ〜」
佑人が女性の先輩に確認をとる。
「ていうか、先輩達は2人きりで来たんですか?」
「いや、俺らは男女6人で来てるぞ。ほらあそこにいるだろ?」
そう言って前方を指さす。
確かに見たことあるような人たちだ。
「せっかくだしさ、お昼食べながら話そうよ〜」
桃瀬先輩がそう言った。
時間も昼過ぎでちょうどよく、オレたちも誰も昼食を済ませてないため異論は無い。
総勢11人は多いため、2つのグループに別れることとなった。
こちらは5人で、佑人とオレ、そして2年生が大友先輩と桃瀬先輩、あともう1人女子の先輩という構成だ。
別のグループには女子の2人は知らないが、男子の先輩は大友先輩のクラスメイトのサッカー部の人で、正直オレとしては気まずいため別で助かってる。
大友先輩は気さくでちょっとばかし熱い男だが、その分いい人というのは伝わってくるが、他は何となく気まずさが残ってしまっていたりする。
別グループに別れただけで同じ店にいるし見ようと思えば見れるのだが。
「それじゃ、改めて自己紹介!2年の桃瀬志帆ですっ。テニス部入ってます!」
最初に自己紹介してくれたのは先程の桃瀬志帆先輩。
我が校の四大美女もとい、美少女四天王に名を連ねる少女だ。
テニス部ということで小麦色に焼けた健康的な肌とショートカットの髪型。
そしてこの明るいテンションも相まって男子人気は四天王の中でも随一らしい。
正直関わることはないと思っていたが。
そして…、
「同じく2年の茶園亜美だ。生徒会副会長をしている」
もう一方は桃瀬さんとは対照的にロングヘアで、真面目そうな人だ。
話し方からも会長よりも威厳を感じるまである。
生徒会副会長をしていて、全校集会などでは司会、進行をしているため顔の方も見覚えがある。
この人も美少女四天王の一員で、男女問わず慕われているらしい。
何となく男に言い寄られてもバッサリ切りそう。
「1年の赤城佑人です。サッカー部で大友先輩の後輩です」
「知ってる〜!大友君からレギュラー奪った子でしょ!」
何てことを言うんだ。
佑人の自己紹介に桃瀬さんが反応するが、ストレート過ぎる。
見ろよ隣の大友先輩の気まずそうな苦笑いを。
佑人も何も言えなくなってるじゃないか。
流れを切るためにもオレも自己紹介をさせてもらう。
「同じく1年の黒田真です。部活には入ってません」
「クラスマッチでうちのクラスをボコボコにしてたよね〜。サッカー部じゃないんだね」
だから正直過ぎるって。
見ろよ大友先輩の(以下略)
が、一つ気になる点がある。
「桃瀬先輩。クラスマッチで大友先輩を圧倒したのはこいつですよ」
桃瀬さんが頻りに言っている、《《オレ》》が圧倒したという言葉。
本気で言っているとしたらマズイ。
学校でも有数の美少女だ。影響力も凄まじい。
そんな彼女の言うことは真実になってしまうのだ。
だから今のうちに正す必要がある。
「確かに赤城君はたくさんゴール決めてたけど、チームの皆は君を信頼してた。ってことは首謀者でしょ?」
「なるほど、だから緑川会長はあれ以来君の話題を出すようになったのか」
茶園副会長も同調する。
「先輩の気のせいでは?」
「ないよ。私、人と関わるのが好きだからそういうのわかるんだ」
桃瀬さんは間違いないと言う。
ここまで頑なだと訂正は難しいだろう。
大友先輩も何となく思い出して納得しているようだ。
否定は不可能だな。
「たまたまですよ」
無難に謙遜しておくしかない。
「たまたま、ねぇ〜」
桃瀬さんは訝しんだ視線をこちらに向けるが、特に言及はしてこなかった。
サッカー自体は詳しくないようだからあれがデザインされたものとは言えないのだろう。
オレは大友先輩に何も言わないで欲しいという念を込めて視線を送った。
「でもあれって…」
「ん"、ん"ー"っ"!!!いやぁ、そういえば先輩たちはやっぱり仲がいいんですか?」
オレは必死に誤魔化す。
大友先輩、空気を読んでくれ。
「え?うーん、まあ教室では仲良いかも?今回は誘われたから来たって感じだし」
「そうだな、普段は男子と関わることはあんまりないな。私としては問題を起こさないか心配で来たところもあるのだが」
よし、話は流れたな。
「そうなんですね。うちのクラスも男女で何かするってことは無いので、もし仲良くする秘訣とかあれば聞きたかったんですが」
うちのクラスは男子たちは白石を筆頭に女子と関わりたそうだが、ガツガツいく下品なやつと思われたくないため大人しい。
恐らくだが、女子と浅野、佑人あたりは結構仲がいいはずだ。
オレのこの言葉に佑人は嘘つきを見る目を向けてくる。
オレがクラスの仲の良さを気にするはずがないからな。
「まぁ1年生は特に仕方ないだろう。だが、二学期の体育祭、文化祭という行事を経たら距離は縮まっていくものだぞ」
「そうだねぇ〜。文化祭の後なんかはいろんな男の子に話しかけられたよ〜」
2人は懐かしむように振り返る。
というか桃瀬さんは文化祭にかこつけてアプローチされてただけだろうな。
その後は昼食を食べつつ世間話をし、もう一度プールでひと泳ぎ(ひと涼み)して解散となった。
何故か3人とは連絡先を交換することになったのだが、社交辞令というやつだろう。
こうして、奇しくも美少女四天王全員と知り合う結果となってしまった。
二学期もどうか平穏に過ごせることを祈ろう。




