28.嘘だけでなく悪事も結局はバレてしまう
「というわけで、祐人にバレた」
勉強会から翌日、いつも通り白石に料理を教わって(振舞ってもらって)、食事中。
昨日起こったありのままの事実を話すことにした。
というか流石に共有する必要があると判断した。
「っ!……そうですか。まぁ赤城さんなら幸いですね」
白石は一瞬驚いたが、すぐに冷静に受け止めてくれた。
「すまんな。あんなに協力してくれたのに、祐人には隠し事が通じなかった」
「いえ、むしろ羨ましいです。私にはそんな方、いませんから…」
白石は羨望と失意の混ざった表情でそう言った。
「いないのが普通だろ、オレと祐人が特殊なだけだ。それに、いないならお前が誰かの理解者になればいい。お前がその誰かを理解した時、相手もきっとお前を理解しているはずだ」
それこそ、オレと祐人がそうだ。
最初はただ部活が同じなだけの存在だったが、今ではこれ以上ない理解者だ。
まぁそれを思い出したのは昨日なんだが。
「私が誰かを理解する…。そうですか、そうですね。そういうことですか。なんとなく分かった気がします」
オレの言葉に白石は先程のネガティブな感情から一転、何かを掴んだような様子だ。
「黒田くん、私頑張りますね!」
そう宣言した。
「お、おう頑張れよ?」
よくわからないがとりあえず同意しておこう。
「ところでだが、これからもオレとの関わりは他言無用で頼む。祐人は恐らく誰にも言わないし、他にバレる要素は無いだろう。あとは…」
「黒田くんの平穏のために、ですね」
いい笑顔でオレの言葉に被せる。
分かってくれていて何よりだ。
だが、オレは祐人にバレた時、驚愕と焦燥と同時にどこかスッキリした気持ちも芽生えていた。
正直なところ、隠し事の共有先がいるのは心が楽だったりする。
白石にはそれが居ないというのは不公平な気もするし、オレばかり我儘を通してもらってるのは申し訳ない。
「もしもの時、白石が信用出来る相手になら相談してもいいからな」
オレはその旨を伝えるためにもそう口にした。
「ありがとうございます。そうですね、もしもの時は誰かに相談します」
こうすることで、白石は溜め込まない。
そうすれば不意に爆発して不特定多数に漏れる心配はないはずだ。
「そういえばこちらも聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
この話は終わりといった感じで聞いてきた。
「なんだ?」
「昨日、生徒会長に呼ばれたんですけど…」
瞬間、オレは口を閉ざす。
それはもうみっちりと。
「生徒会に入らないか誘われまして」
「…」
「でも、私と生徒会長は全く面識が無いんですね」
「…」
「それで、どうして私を勧誘するのかを聞いてみたら…」
「…」
「とある方に薦められたとのことでした。それでそのとある方というのが…」
「すいませんでした」
終業式の日、生徒会に勧誘されたオレは非常に嫌だった。
だが、任命されてしまうと断る方が面倒だったりする。
そうなれば、生徒会長にも確認をとったが、代役を立てるというのが最も効果的な手であると判断した。
そしてその代役として白羽の矢が立ったのが白石だ。
もう1人紫条も推薦したが、それは既に勧誘済みということだった。
そして、終業式以降で呼べる最短の日が昨日。
夏休みにも関わらず登校する日だ。
オレが白石を売ったことが早速バレてしまったというわけだ。
「謝る必要はありませんよ。生徒会に誘われること自体は誇らしいことですし」
許された。
良かった。
罰として飯を作ってもらえないとかなったら流石に凹む。
最初渋っていたのが嘘みたいに夕食時が楽しみになってるのだ。
「そうか。でも悪かったな勝手に名前を挙げて」
許可も得ずに生徒会に推薦している事実は変わらないので謝らせてもらう。
「いえ。それでなんですが、黒田くんは生徒会に入るつもりはあるのですか?」
「正直全くない」
無いからこの事件が起きてしまったまである。
「そうですか…。それでは私も断らせてもらいます」
「どうしてだ?白石にデメリットは無いように感じるが」
オレは普通に面倒だから嫌なのだが、白石みたいな勤勉なタイプは向いているのではないかと思う。
断る理由は見当たらない。
「そんなの決まってますよ。私はこの時間を気に入ってます。それが減るのは充分にデメリットと言えます」
またこいつは無自覚に…。
だが、恐らくこいつは本当に他意などないのだろう。
気にしたら負けということだ。
「そうかい」
「はい、そうです」
それからは食事を片付け、いつも通りまったりと2人で過ごした。




