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21.嫌がるヤツほど避けられない

期末テストも終わり、一学期も残りわずか。

夏休みを目の前として生徒たちのテンションもより一層上がってくるこの頃。


オレも例外に漏れず、いつにも増してテンションは高い。

祐人曰く「いつもと変わらないようにしか見えない」そうだが。

あのクラスマッチ以降、オレはいつも通り大人しく過ごし、最初こそクラスメイトからの興味の視線や嫌な視線もあったが今では日常に戻った。

一つだけ変わったことといえば…


「おはよう黒田君、今日も暑いね」

「おうおはよう浅野。それな、そんな中で部活してるお前らはすげぇわ」

浅野が今まで交流がないのが嘘みたいに話しかけてくるようになった。


初めはクラスメイトも驚いてギョッとした視線を向けてきたが、2週間も続くと慣れてくれたようで、そして誰とでも仲が良い浅野だからこそ落ち着いてくれた。


恐らく白石なんかが同じムーブをしたらヤバいだろうな。


「ところで、黒田君は体育祭何に出るのか決めたかい?」


浅野がオレに聞いてくる。

我が校では体育祭が9月の最初の週末に行われる。

直前に予行練習をすることや競技の準備や編成、練習期間を考慮すると一学期のうちに出場種目を決めておく必要があるのだ。


まぁ体育祭など頑張る理由もなければ、個人技が光る競技しかないと言えるので何でもいいのだが。


暑いし疲れたくないからできるだけ出たくないというのが本音だったりする。

学校によっては6月に行うところもあるらしいが、梅雨だから中止になったり短縮形になったりすることが多いのではないだろうか。

羨ましい限りだ。


「いや、特には決めてないが、そっちは決めたのか?」


「俺もまだなんだよね。だから黒田君を参考にしようと思ったんだけど…」

オレを参考にするとはどういうことだろうか。

同じ競技に出ても足を引っ張るだけだぞオレは…。


むしろ個人競技にだけ登録して本番は休むという手もあるな。

名案かもしれん。


「そろそろHR始めるから席につけ〜」

そんなことを考えていると、担任の橙堂先生がやってきた。

本日のLHRで競技を決めるはずなのでちょっと本気で打診してみよう。


そんなことを胸にオレは担任の話を聞き流した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして7限のLHR

「それじゃあ各自、希望の競技のところに名前を書いてくれ。最低でも1人2種目は出るように」


担任の橙堂先生が生徒に指示を出すと教室の黒板前に人が集まる。

別に早い者勝ちというわけではないが、例えば綱引きは各クラス男女3人ずつの選出であり、既に3名分埋まっていると自身の名前を書きづらいという心理的抵抗が生じる。


希望の種目を得るためにも早めに書きたいという心理が働いてるのだろう。

オレも例外ではなく、個人競技を探して名前を書くべく黒板付近に居る。


が、ここで気づいてしまう。

何と徒競走以外の個人種目は各クラス男女1人ずつ選出のものだった。

借り物競争、100メートル走、1500メートル走だ。

各クラス1人ということはおいそれと休むわけにはいかない。代理を立てるのは大変だし、それによって余計な恨みを買うかもしれない。

トラブルの元だ。


さらに100メートル走は各クラス短距離の早いものが集まり1500はその長距離バージョンだ。

うちのクラスなら加藤と蒼井、祐人の仕事といえる。

かといって借り物競争はあの生徒会長だ。何が書かれてるか分からない。

つまり出るという選択肢もほとんどない。


仕方ない、団体競技に出るしかないか。

そうしてオレは黒板を俯瞰して見るために1度席に戻ることにした。

1人あたりの仕事量が少ないため楽そうに見えた綱引きや玉入れは既に埋まっている。

残り空いてるのは…

騎馬戦、クラス対抗リレー、選抜リレーか。

先述の通り、オレは特別足が早くない。

なんなら短距離は遅い部類に入る。

だからリレーは却下。

となると、後は騎馬戦か。


そうして立ち上がりオレは騎馬戦のところに名前を書いた。


そうして全員が希望の種目に名前を入れ終わり

った。


「えぇ〜、そしたらほとんどピッタリだな。っと、騎馬戦が1人多いな。そして二人三脚だが、1組足りないようだ。騎馬戦希望の男子はジャンケンして、負けたやつは二人三脚な。女子は…希望してくれるヤツいるか?いないならクジ引きでも構わないが」


ということだった。

オレの平穏な体育祭のためにもこのジャンケンは重要だ。

下の矢倉の役をつかみ取るんだ。


そして二人三脚は各クラス2組ずつなのだが、男女ペアなのだ。

まぁ普通に抵抗があるだろう。


というか男子諸君は内心出場したいが、女子にがっついてると思われたくないから空いてるような気もする。


1組埋まってるじゃないかって?

うちのクラスには有名カップルがいるだろう。そういうことだ。


オレを含めた男子7人が拳を突き合わせる。

「「「最初はグー!……」」」




「はい、それじゃあ二人三脚の男子は黒田な。女子の方は希望はいないか?」

負けた。

1人負けというわけではないがなんか順当に負けた。

1番嫌がってるヤツが負けるという神様のいたずらは健在なようだ。


そして橙堂先生よ。その聞き方はオレが傷つくだけだからやめてくれないか?

見ろよ。女子同士がヒソヒソと話し合っているじゃないか。

悪口だったら泣きそう。

まぁ実際は別に気にしないが。


「はい、私が二人三脚に出ます」

だが、オレの予想とは裏腹に立候補者が出た。

可哀想なオレを見かねて救済してくれたのだろうか。

ほんとにペアは誰でもよかったがオレがペアであることを嫌がる人だと申し訳ないので正直ありがたすぎる。


救世主の顔を拝もうと声の主の方に視線を向けると、手を挙げて立ち上がっていたのは白石だった。


なるほど、聞き馴染みのある声だと思った。

白石はオレと目が合うと、よろしくお願いしますという感じに頭を下げる。

オレも感謝の念を込めつつそれに応じる。


男子生徒からの視線が痛いが、許容レベルだろう。

加藤や福島の恨みの篭った視線も気にしなければどうということはない。


どちらかというと祐人や蒼井の何か言いたげな視線の方が鬱陶しいまである。

この間の追求が完璧に誤魔化せたとは思えないし、今の状況で疑念が再発しているかもしれない。

そろそろ誤魔化しは効かないし、万事休すなのだろうか。


まぁ今は無視だ無視。


「はい、じゃあこれで体育祭の競技は決まりな〜。それじゃ、今日は帰っていいぞ、他クラスはまだ終わってるか分からんから騒ぎすぎるなよ〜。おつかれ」


橙堂先生はそう言って締めた。


本命の騎馬戦こそ取れなかったが、白石のおかげでマシな結果といえるだろう。


白石ならそこまで気を遣う必要もないしな。

男子からの視線を気にしなければだが。


オレは面倒事が無さそうなことにホッとして帰路についた。



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