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検問所にて

これまで気になっていた部分を改作します。

最後のエピソードまで行ったら、新エピソードも書いてゆきます。

どうか、暖かく見守っていてください。

夜が明けて、私は昨夜のことを思い返してみた。夢にしては細部まで思い出すことができ、あいまいな部分がない。まさか、本当にあったことなのか。この星の意識体だなんて、普通は考えられない。でも、申し出てくれたことは、私にとってはかなりありがたく感じることではあった。私の特殊性を初めから知っていて、いつ果てるともわからない長い旅路を共に歩いてくれるとしたら…それはきっと私にとっては大きな慰めになることだろう。

今日、その人がやってくると言っていたけど本当だろうか。まぁ、なるようにしかならない。気にせずにゆきましょう。

今日は王都の不動産屋さんに行って、住む家を探さないといけない。いいとこが見つかるといいのだが。


朝食を食べ終わった私は、宿屋のご主人に、王都まで一緒に行ってくれそうな人がいないか聞いてみた。幸いなことに、帳場の女の子が付いて来てくれることになった。セシオラというその娘さんは、やはりこの宿屋の娘さんだった。

「セシオラさん、よろしくお願いします。私は外国から来たばかりだから、色々わからないことがあると思うのよ。きっと困ることが出てくるから、その時はできる範囲で助けてもらえると嬉しいわ。」

「はい。任せてください。って言っても、私もわからないことは多いと思いますけど。それでも二人で悩んだ方が気が楽ですよ。私のことはセシオラとお呼びくださいね。」

「ありがとう。私のことはルナと呼んで。」

「さすがに年上のお客さんを呼び捨てににはしにくいから、ルナさんとお呼びしますね。」

「わかったわ。じゃぁ出掛けましょうか。」

宿屋から王都の城門までは、歩いて1時間ぐらいだそうだ。まぁ近い方である。

私は道すがらセシオラから、周辺の都市の様子、王様の性格、人々の暮らしなど、色々な話を聞いた。また私も、問われるままに色々な遠い国々の様子を教えてあげた。

そうやって話をしているうちに、王都の城門が見えてきた。門の前には検問所があって、5名ほどの兵士が詰めており、そこで城門を通過しようとしている人々をチェックしているようだ。

「ねぇ、セシオラ。あそこで何やってるか知ってる?」

「あれは、身元保証書を確認してるんだと思います。」

「身元保証書って何?私、そんなもの持ってないんだけど。」

「え?お姉さん、身元保証書持ってないんですか?」

「だって私、とても遠いところからの船で昨日着いたばかりのよ?身元保証書がどんなものかさえ知らないもの。」

「身元保証書は、それを持っている人が、ある程度地位の高い人から信用を得ているっていうことを保証するものなんです。自分の雇い主とか住んでいる村の村長さんとかにお願いして保証書を書いてもらうことが多いです。対価を払って保証書を作ってくれる人もいたりするんですけど、保証書を持った人が悪さを働いたら保証した人が罰を受ける場合もあるから、保証に足りるかどうかは割と本気で判断されますね。私のは父が書いてくれたものです。一応宿屋の主人なので。」

「うーん、困ったわ。もっと早くわかっていたら何とかできたかもしれないけど…」

検問所までにはまだ100メートルぐらい距離がある。このまま突っ込んで行って事情を説明したら、わかってもらえるだろうか。

「ねぇ…セシオラが私の身元を保証するっていうのは有り?」

「それは有りませんね。私は一介の使用人といった位置づけですから。」

まぁ、そうだろう。訊いてみただけだ。セシオラだけ検問所を通過してもらって、私はこっそり中に入ることはできると思う。けれど…お家を探すには不都合があるかもしれない。その点を訊いてみた。

「ねぇ、今回王都に来た目的は不動産屋さんに行って住まいを探すことなんだけど、契約を交わすときに、また身元保証書が必要になるってことはない?」

「そうですね…私はお家を買うなんて経験はもちろん無いのですけど、一般的には、高額の契約を交わす場合は、お互いに身元保証書を確認するのが通例になっていると聞いたことがありますから、身元保証書の提示を要求される可能性は高いと思います。」

「そうよねぇ…きっと要求されるわ。困ったな…」

私たちの歩みは目に見えて遅くなっていた。後から来た人たちにも結構抜かされているから、とても目立っている。検問所まであと20メートルっていうところで、ふと顔を上げた兵士の一人と目があってしまった。

「おい、そこの二人。さっさと来ないか。」

ちょっとキツイ口調で命令されてしまった。もうこうなったら事情を説明するほかはない。門を通過させてもらえないかもしれないけど、捕まることはないでしょう。私たちは足を早めて検問所に向かった。


先ずセシオラが身元保証書を提示する。係の兵士はサッと目を通して、通行可との判断を下す。次は私だ…

「あの…実は私は、昨日遠い国から到着したばかりでして…」

言いかけた途端、係の兵士がキッと私を睨んでくる。

「身元保証書は持ってないと言うのか?」

完全に詰問口調。ちょっと不味い感じだ。

「はい。申し訳有りません。特にツテもなくて、そういった物が必要だとついさっき聞いたばかりです。」

正直に告げた私の態度を見て、兵士の態度は多少和らいだものの、門を通過させてくれる気はなさそうだった。

「ふむ…なるほど。気の毒ではあるが規則なのでな。お前が真に信頼のおけるものであるなら、身元を保証してくれる者も出てこよう。日を改めて来るが良い。」

「そんな、また出直してくるだなんて…」

「しかし、規則だからな。これを曲げることはできん。」

すると、検問所に並ぶ列の後ろの方から、トーンの高い声が響いた。

「ちょっとお待ちください。」

そちらに視線を向けると、修道女風の衣服に身を包んだ女性が列からはみ出して小走りにやってくる。

「よかった。何とか間に合ったみたいです。どうぞこれを…」

その女性は、細い鎖の付いた銀色の金属プレートを兵士に差し出した。表面には何やら文字が刻まれており、裏面に球体を抱いた女神が刻まれているようだ。

「これは…」

兵士は、表面より裏面の模様を食い入るように観察している。兵士の表情は少し驚いた者のそれだ。

「この図案…大地聖教会が発行する身元保証書みたいだな。重要な発行元なので教育で学んではいたが、初めて見た。」

え、どういうこと?私は何が起こっているのかわからずに、その修道女風の女性と兵士とを代わる代わる見るだけだった。

「おい、みんな来てくれ。この身元保証書、本物と思うか?」

検問所に詰めていた兵士全員がその身元保証書を確認しに集まってきた。

「これは本物だと思うな。一度だけ本物ものを見たことがある。裏面の図案も材質も、これみたいに神秘的な感じだったぞ。表面に名前が刻まれているから、その女に訊いてみればいいんじゃないのか?その女にはこれをまだ見せてないのだろう?」

「そうだな。おいお前、名前を言ってみろ。この身元保証書に刻まれている名前と合っていればお前を通してやろう。」

えー、その身元保証書に刻まれている名前が私のものだなんて、ありえないと思うけど。それに、大地聖教会なんて関わり合いないし…まぁいいわ。名前が違ってたからって罰せられる訳でもないでしょう。私が持ってきたものでもないから。

「じゃぁ言いますけど…私は、ミーラーダ・ルナ・イスルギって言います。どう?合ってます?」

「ミラーダ・ルナ・イスルギ…合っている。よし、お前を大地聖教会が身元を保証した者と認める。通ってよし。」

え?これ、どういうことかしら。あり得ないんですけど。後でこの修道女風の人から説明があるのよね?そうよね?などと思いながら、私はその修道女風の女性を驚きの目で見ながら、セシオラと一緒に王都に入る門を通過した。

「あ、もちろん私も一緒に行きますわ。はいこれ。私の身元保証書です。」

「うむ。サラ・セントマリア、通ってよし。」

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