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作戦

お読みいただき、ありがとうございます。

細かい部分の辻褄合わせをしております。投稿前に気づけたらよかったのですが、実力不足てす。


クレオパトラの留学を応援したくて、背景の解明と、二度とこのような事件が起こらないようにするための処置を引き受けたものの、これはなかなか難しいことだった。わかっていることと言えば、今回の海賊による襲撃の狙いがクレオパトラであること、何らかの手段で出航の日を知り得たこと、出航後1日という短時間で襲撃されていることから、よく計画された襲撃であったろうこと、ぐらいだ。

具体的にどうやってやるんだ?とのルチアーノさんの問いに答えて私は言った。

「先ずは手がかりを増やさないといけないわね。うまくゆくかどうかわからないけど、オマルさんのお嬢さんがもう一度留学に出かけるという情報を流して、襲撃してくる海賊の根城を特定して押さえようと思うの。彼らの根城にはきっと、首謀者またはそれに近い者からの依頼状があると思うのよ。海賊にしてみたら、相手に裏切られないための保険として、誰に頼まれたかわかる情報を保管しているはずだから。

では、作戦を言いますね。先ずオマルさん。オマルさんは、お嬢様が再度留学に出発するので受入準備をお願いできますかと、ヴィットリーニさんに打診の連絡を入れてください。2月1日にアレクサンドリアを出航して、2月7日にエルミスの港に到着しますって。そしてヴィットリーニさんへの連絡は、オマルさんが絶対の信頼を置けるひと一人で行ってください。多数の人を経由すると、情報漏洩源の可能性が絞りにくくなるから困ります。

次にルチアーノさん。ルチアーノさんは、10日後の2月1日の出航に向けて準備をお願いします。おそらく、出航して一日経った頃に海賊が襲ってくると思うけど、海賊と遭遇したら追いつかれないように時間を稼いでください。出港地の根城を特定して、時間を稼いでいる間に、事件の依頼人に関する証拠書類をその根城から奪取します。ルチアーノさんの船の性能が低かったらこの作戦は成立しないんだけど、だいじょうぶ?」

「ああ、スピードでウチの船に勝てる船はそうないはずだ。荷物をほとんど積んでいないのなら、まず大丈夫だと思ってくれて良い。」

「そう。頼もしいわね。」

「作戦はわかったけれど、そもそも同じ手で来るんだろうか?」

「ええ。来ると思うわ。襲撃を企画した者は直接自分の手を汚すつもりはないだろうから第三者に依頼するんでしょうけど、依頼先をいたずらに増やすのは情報漏洩の観点から嫌うはず。そうなると、よっぽど理由がない限り、同じ海賊に依頼してくるんじゃないかと思うの。最初の襲撃はクレオパトラを取り逃がしたものの、次の襲撃を躊躇するような失敗は特になかった。だからきっと同じ海賊が来ると思う。ただ、次のときはお嬢様の護衛が増えてる可能性を考慮して、かなりの手勢を連れて襲撃してくるんじゃないしら?もしそうだったら、根城の方は手薄になるから、そこはこっちの付け目ではあるわね。」

「なるほど。肝心の海賊の根城を特定するのはどうやってやるんだ?」

「あぁ、それは気象の予測と同じようなことよ。つまり、船舶の動向を広範囲に把握しておけば、私たちを狙ってきた船がどこから来たかは、たぶんわかる。」

「え、本当か?まったく便利な能力だな。きっと言うとおりなんだろうが、人知を越えていて薄気味悪ささえ感じるな。」

「あら、薄気味悪いだなんて言われると傷つくじゃない。」

「すまん、すまん。半分はやっかみが入ってるから、許してくれ。ところで、海賊の根城を押さえるのは誰がやるんだ?」

「それはサラに手配してもらうつもりよ。あの子はあれでも大地聖教会の特別枢機卿だから、色々な地域の教会の手勢を動かすことができると思うの。」

「しかしキミは海の上だぜ?陸に着くまで連絡手段がないだろうが。」

私は、うふふと微笑んで大丈夫と答えただけで、それ以上の説明はしなかった。ルチアーノさんは、私のことだから何かあるんだろうなと思ってくれたようで、呆れた様子を見せつつも、まぁいいか、と言ったきりだった。

実は、エルミスを出港するときに、サラがヘルメスの通信を傍受できるようになったと言っていたので、ヘルメスを通じて私からサラに情報伝達できるかどうかを航海中にテストして、実際にできることを確認していた。だから、ヘルメスを介してサラに連絡すれば、大地聖教会の手勢を使って海賊が戻る前に根城を押さえることができるだろうと踏んだのだ。

「じゃぁ、オマルさん、ルチアーノさん、役割はご理解いただけたと思いますので、準備を進めていただけます?」

二人がうむと頷いて、その場はお開きとなった。


準備を進めている間、私たちはオマルさんの家に逗留させていただくことになった。

私はクレオパトラと一緒に、買い物に行ったり、演劇を観たり、食事をしたりする中で、お互いのことを色々と話し合いすっかり仲良くなった。クレオパトラはなかなか活発な子で一緒に居ると楽しい。容姿容貌も私にとっては好ましく思われた。彼女は、私の家が古い屋敷を整備したものでかなり広いことや、露天の温泉と望楼があることなどを知ると、とても興味を持ったようだ。私の家を逗留先にできないか?と訊いてきた。

「だって、ルナさんのお家って、怪しい者は入れないんでしょう?お父様もきっと了承してくださると思うの。それに、望楼と温泉を堪能してみたい。望楼と温泉って普通のお家には絶対ないから、きっと楽しいんじゃないかしら。お部屋の数には余裕があんでしょう?」

「確かに安全性で言えば、私のお家以上に安全な場所はないかもしれないわね。お部屋もかなり空いているから、クレオパトラと侍女さんが来ても余裕はあるわ。ただ、王都からちょっと距離があるし、貴族のお家とは違って豪華ってわけでもないわよ?」

「あら。そんなこと気にしませんわ。どうかお願いします。それに、サラさんにも会ってみたいし。」

「サラだったら、クレオパトラは気に入ると思うけど…ウチに逗留したときの最大の危険はサラかも。あの子は、綺麗な人には見境なく手を出す可能性があるもの。」

私がサラのことを言うと、クレオパトラはドギマギした様子ながら、そ、それも勉強だと思いますからと、顔を引きつらせながら答えた。

実際、相当危険な気はする。でも大人になるための一つの経験だと思えばいいのかも。

「わかった。貴女に覚悟があるのなら、まぁいいか。今回の事件の片がついたらオマルさんに言ってみましょう。その時には、オマルさんも私のことを信用してくれてるでしょうし。」

そんなことで、私はクレオパトラがウチに逗留することを了解したのだった。


ヘルメスに依頼していたヴィットリーニ邸の監視は、サラが機転を利かせてセンサーを門のところに仕掛けてくれたお陰で、クレオパトラの乗った船への襲撃の翌翌日、深夜2時ぐらいに郵便受けに書状を入れていった者がいたことがわかった。これがクレオパトラを確保し損ねたとの連絡だとしたら、タイミングとしては符号する時期である。深夜2時というのもいかにもそれっぽい。私は、引き続きヴィットリーニ邸の監視を続けることと、もし訪れた者があったら、その者がどこに帰ってゆくかもできる限り調べることを、ヘルメスに指示した。監視の甲斐があって、クレオパトラの新たな出港の情報がヴィットリーニに伝わった日の翌日、ヴィットリーニ邸を深夜に訪れる者があった。これはおそらく海賊の連絡係で、ヴィットリーニの指示を海賊の頭目に伝えるのが役割だと思われた。このため、オマルさんの娘さんの逗留先をヴィットリーニの家とする選択肢はほとんどなくなったのである。

問題は黒幕が誰かだ。ヴィットリーニが黒幕なら簡単なのだが、その可能性はかなり低いと思われた。なぜなら、ヴィットリーニ自身がクレオパトラの拉致を必要としているのなら、逗留させておいて拉致するのが簡単で、わざわざ海賊に依頼する理由はないからである。当初私は、ヴィットリーニがクレオパトラの拉致を命じた手紙なりを海賊の根城で押収できれば、それをネタに、ヴィットリーニから情報を引き出すことができると考えていた。だが今はちょっと嫌な予感がしている。もしかしたらクレオパトラ拉致の依頼文は、そこまであからさまなものでは無いかもしれないし、そもそも依頼文などは無いのかもしれない。だが他の手立ても考えつかないことから作戦は決行せざるを得ないだろうと思った。

私達の出航の2日前、衛星画像から海賊船と思われる船の出港を確認し、出港地を特定したとの連絡がヘルメスから入った。場所はアテーナイである。これにはちょっとドキリとした。王都から遠いのである。私は、ヴィットリーニが依頼するのだから、海賊は王都からそれほど離れていないところを根城としているはずと思っていたのだ。だが、アテーナイは王都から船で2日程度の所である。すぐに動けば海賊の留守の間にギリギリ到着できる距離なので何とかセーフといったところ。ヘルメスを経由して情報を全てサラに集約し、あとは何とかお願いしますと伝えた。後でどんな見返りを要求されるのか、ちょっと怖い。

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