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航海で助けた少女

お読みいただき、ありがとうございます。

ファンタジー要素は限定してますので、ファンタジーがお好きな方にとっては、物足りないかもしれません。

できるだけ毎週、火曜日の20時ごろを目処に投稿するつもりです。よろしくお願いいたします。

目的地のアレクサンドリアまであと1日の地点にさしかかった時、ヘルメスから連絡が入った。航路から約10km北に離れた小島の浜辺に、人が打ち上げられているらしい。何故こういうことがわかるかというと、それは私の行動予測をして、複数の衛星の軌道を調整し、幅約50kmでスキャンを行っているためだ。低い衛星高度、高精度な光学系、進歩した画像解析によって、人間の表情まで判別できる。

「ねぇ、ルチアーノさん。海で遭難した人が近くの島に漂着してるみたい。進路を北に向けて助けてあげてくれないかしら?」

「なんだって?どうしてわかった。だが、まぁ今はいい。すぐ救助に向かおうじゃないか。」

ルチアーノさんはそう言うと、すぐに船長に命じて進路を変えさせた。島自体はもともと見えていたのだが、30分も帆走したら、肉眼で人が漂着しているのがわかるようになった。船長は船に積んであったボートを下ろさせ、私と他の船員2名とで救出に向かった。浜に漂着していたのは17歳ぐらいの少女。私がその子の頬を叩くとうっすらと目を開け、救助がきたことを理解すると少し安堵した表情を浮かべ、すぐに目を閉じてしまった。おそらく安心して気が抜けたのだろう。私は船長と協力して意識のない彼女をボートに乗せ、船まで戻ってきた。

その子を見てルチアーノさんは言った。

「驚いたな。本当に漂着者がいたんだ。どうやって見つけることができたのか教えてくれ。」

「言わなかったかしら?私は遠くのことを知る手段があって天候予測をしてるんだって。その応用よ。」

「私が知りたいのは、それがどんな手段かってことだよ。もしそれが納得のいくものだったら、キミの言うことの信頼性も格段に高まるってわけだ。」

「それはちょっと言えないわね。それに、私が言うことの信頼性は、実績でのみ判断して貰うだけでいい。懐疑的な人を無理に信じさせる気はないわ。」

「誤解しないでくれ。純粋な興味で言ったまでだよ。説明できないって言うのならおとなしく口をつぐんでる。」

助けた少女は、私が使っている船室のベッドに寝かせることになった。他に適切な船室がないのと、私がその子の看病を買って出たためだ。

今はその子の横で寝顔を眺めている。褐色の肌に黒い髪。目を瞑っているので、はっきりとはわからないが、きっと綺麗な子なのだろう。服装は露出多めの薄ものだ。白を基調とした布地に褐色の肌のコントラストが美しい。衣服の生地はいかにも高価そうだし、装身具も金をふんだんに使ったセンスの良いものなので、きっと裕福な家の娘なのだろう。

「うう…」

30分もすると、うめき声とともに、彼女はうっすら目を開けた。青い瞳、なんて綺麗なの。ようやく意識を取り戻した彼女に、私は優しい声で話しかけた。

「気分はどう?」

使った言語はアレキサンドリアで使われている言語を選んだ。彼女の服装と彼女を保護した場所から考えて、そのように選択したのだが、どうやら通じたようだ。

「そんなに悪くありません。ここは…?」

「そう、よかった。ここは、エルミスからアレクサンドリアに向かう船の中よ。航路途中にある島の浜辺に貴女が打ち上げられていたのに気づいて保護したの。」

「じゃぁ…私、助かったんですね。侍女は…侍女のミルセは?それに、他の方は?見つかってないんですか?」

「残念だけど、貴女以外には誰も見つけてないの。」

「そうですか…私たち、海賊に襲撃されたんです。日が暮れる頃で、船室でお茶を飲んでいたら外が騒がしくなって…娘を探せっていう声が聞こえたから、きっと私を探してたんだと思います。ミルセはすぐにドアのところに行って、鍵を確かめた後で、お嬢様、脱出口から逃げましょうと言いました。すぐにここも…と言ったところで、ドアを開けようとする物音がして…ミルセが私に早く脱出するように言って…私はミルセを残して脱出口をくぐって滑り出ました。あぁ…どうしよう。私、一人だけ逃げてしまった…」

私は彼女の手を優しく握りながら

「貴女を逃すことがミルセさんの願いだったんでしょう?貴女が逃げ出さないまま捕まってしまったら、ミルセさんはもっと悲しむと思う。それに、最悪の場合は貴女を渡さないように抵抗した挙句、殺されてしまったかもしれない。だから、貴女のとった行動は最善の選択肢だったと思うわよ。」

「そう…そうかもしれません。ミルセ、無事だといいけど…」

私は彼女を握る手に力をこめて言った。

「海賊にとっては人も財産の一つでしょうから、そう簡単に殺したりしない。売られたとしても助けることは可能だから、彼女たちが見つかる日を待ちましょう。」

「そう…ですね。」

「先ずは少し休まないと。ねぇ、喉、渇いてない?お水があるわよ?」

「お水…ありがとうございます。飲みたいです。」

私は、彼女が半身を起こすのを助けた後、サイドテーブルの水差しに用意していた水をカップに注いで、彼女に持たせてあげた。

「ゆっくり飲むといいわ。私は貴女が気づいたことを、荷主さんや船長さんに知らせてくるから。」

私の知らせを聞くとすぐ、ルチアーノさんと船長さんは、私について船室にやってきた。彼女は、水を飲んで一息ついたのか、すっかり落ち着いた様子でベッドの上で丁寧に頭を下げ、助けてくれたことへの感謝を伝えてきた。

「助けてくれてありがとうございます。私はアレクサンドリアの商人の娘で、クレオパトラ・シュリーファと申します。」

「シュリーファだって?もしかして、オマル・シュリーファさんの娘さんか?」

ルチアーノさんは、驚いた様子で、自分の名前も名乗らないうちから、彼女に聞き返している。

「はい、そうですけど…貴方がたは?」

「あ!これは失礼した。私はこの船のオーナーでルチアーノ・パブロッティ。こちらは船長のアルバーノ。そしてこちらは…」

「ミラーダ・ルナ・石動よ。ルナと呼んでくださいね。ルチアーノさんとの契約で航海に対するアドバイスみたいなことをしてるの。」

「オマルさんは私の商売相手で、今回、ある商品を受け取る約束でレクサンドリアに行くところなんだ。もし貴女が望むのなら、一緒にオマルさんのところに連れて行くが。」

「え、ほんとですか? ぜひ、お願いします。私を父のところに連れていってください。」

そう言うと彼女は再び丁寧に頭を下げた。

彼女がここに至った事情を知りたかったけれど、それはもう少し彼女の体力が回復してからにしようということになり、ルチアーノさんと船長さんは一旦退室した。私は引き続き彼女の看護をするべく船室に残り、あまり負担にならなさそうな食べ物を少しずつ食べて貰ったり、飲み物のお世話をしたりしていた。

その間、私は彼女をリラックスさせようと、あまり煩くならないように気をつけながら、自分のことを話すことにした。

「そうすると…ルナさんは、お仕事で、世界のあちこちを回られたんですね?」

「ええ。でも、その仕事の契約は切れたところだから、当分はナポリエール王国に住むことにしたの。王都の近くにお家を買って、二人で住んでるのよ。」

「そうだったんですか。私は、芸術の勉強のために、ナポリエール王国の王都にある王立アルカディア学園に留学するんです。そのために、ナポリエール王国へ向けて出航したんですが…出航の翌日にこんなことになってしまって…でも諦めません。一度アレクサンドリアに戻って出直してきます。」

そう言う彼女の瞳には強い決意がこもっているように見えた。

「そう、強いのね。若い人にとっては海外留学は魅力的ですものね。芸術だけではなく色々な文物を目にして感じると良いわ。応援します。」

「ありがとうございます。海賊の襲撃でミルセたちの行方がわからなくなってしまったのはショックですけれど…でも、ルナさんたちと知り合えたことは良かったと思ってます。アレクサンドリアからの留学生は私だけのようなので、近くに知り合いがいるのは心強いから。」

「私のお家は王都の南門から馬車で20分ほどだからね。何か困ったことがあったらいつでも言ってちょうだい。できることなら力になるわ。住む場所はもう決まっているんでしょう?」

「はい。お父様の知り合いのお家に逗留させていただくことになってるんです。」

「ふぅん。もしよかったら、その方のお名前を教えてくださる?連絡先を知っておいたら、後々便利だから。」

「はい。その方は、宝石商のアメリオ・ヴィットリーニっていう方です。王都にヴィットリーニ商会っていうお店があるそうですよ。」

「わかったわ。帰ってから場所とか確認してみる。落ち着いたら私のお家に遊びに来てちょうだい。」

「わぁ!嬉しい。絶対行きます。」

「それで、アルカディア学園にはいつから?」

「登校はだいたい二ヶ月後からです。生活環境を色々整えてからになりますね。」

「わかったわ。それじゃぁ、今日はもう眠りなさい。侍女さんをはじめ、他の方の安否は心配でしょうけど、今は貴女自身を労ってあげて。明日のお昼にはアレクサンドリアの港に着くと思う。貴女が眠りやすいように、私はしばらく外にいるわ。おやすみなさい。」

私は部屋を出るとルチアーノさんのところに行って、彼女たちが出航してすぐ海賊に襲われたことと、どうやら彼女を捕らえることが目的らしかったことを伝えた。

「そうか、ありがとう。助けたのが、今回の取引相手の娘さんだったなんて、因縁めいたものを感じるな。取引と何か関係があるんだろうか…」

「どうかしら。オマルさんは売主じゃなくて、あくまで仲介者なんでしょう?仲介者の娘さんを拉致するメリットってあるのかしら?」

「娘を盾にとって仲介から手を引かせることはできるかもしれんが…そうなったところで、売主が別の仲介者を立てるか、もしくは自分たちで直接取引すれば良いだけだからな。あまりメリットがあるとは思えないな。」

「そうよね。だとすると、やはりクレオパトラ自身が狙いっていうことなんでしょうね。クレオパトラを拉致したとして、どうするつもりだったのかしら。」

「普通に考えれば身代金狙いか怨恨。特殊なケースでは、娘さんを手元に置きたいと考えているヤツが居るのかもしれんな。」

「今特定するのは難しそうね。だけど、娘を探せっていう声があったそうだから、クレオパトラを狙ったのは間違いない。とすると、彼女が船に乗ってるのをどうやって知ったのかしら。出航の日が広く知られていたのかな?」

「普通はそのような予定は秘しておくものだが…まぁその辺は、ご両親に訊いてみないと何とも言えんな。」

ここまで考えて、私の心になんとなく引っかかったのは、クレオパトラの逗留先に予定されていたヴィットリーニだった。大切な娘を預ける相手だから間違いないと考えた相手なのだろうけど、出航の日を伝える相手がいたとすれば、それはヴィットリーニであったろう。私は、ヴィットリーニ家の人の出入りがキャッチできるよう、衛星の軌道調整をヘルメスに指示した。衛星での画像撮影は連続監視できるわけではないから、気休めではあるのだか。


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