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詐欺対策

久しぶりに改稿しました。

これまで書いてあった最後まで改稿できましたら、また新しく追加いたします。

またおつきあいいただければ嬉しく思います。

ステファネッリと話をした翌々日、私たちは推奨する航路とスケジュールを提出し、契約を結んだ。ステファネッリが航路とスケジュールを遵守すること、および積荷がリストどおりであることを条件として、補償額は2億ルード、保険金額は料率10%で2000万ルードである。補償額の2億ルードは約束どおりサラが拠出してくれた。まったく、なんていうお金持ちなの?というか、お金持ちの神様って何なのかしら…

さて、出航までの2週間、私はステファネッリの屋敷を監視することにした。屋敷は高さ約3メートルの塀と堅牢な門で囲われているが、私の跳躍力を以ってすればこれらを越えて侵入するのはたやすい。夜陰にまぎれて敷地内に侵入し、出入り口と窓の全てに画像と音声のセンサーを設置するとともに、屋根の目立たないところに追跡用のドローンを待機させた。こうしたセンサーで得られた情報の全ては、衛星ネットワークを通じて静止軌道上のステーションに送られ、出入りした者のうちAIヘルメスが不審者と判断した者の行方をドローンで追跡することになっている。こうしたセンサー類やドローンは、地球から遠く離れたベースで生産されるものなので、消耗した時にすぐに補充できるものではないため、回収を前提として大切に使っている。まぁ、センサーの類は小さいため一度に大量に入手できるから、回収が難しい場合も多いのだけれど現時点ではそれほど問題にはなっていない。

こうして準備を整えた翌日の深夜、さっそくステファネッリ邸を訪れた者があった。どう考えても普通の来訪者が来る時間ではない。ドローンで追跡の結果、王都のとある屋敷に入って行くところまでが確認された。私は画像データを受け取ることはできないので、AIヘルメスから座標を教えてもらって地図にプロットをした。この屋敷が誰のものでどんな人が住んでいるのかを知る必要があるのだが、私はまだここの土地勘がないため、サラにお願いして教会関係者から情報を得ることにした。

「ねぇ、サラ。地図のこの場所にある屋敷って、どんな人が住んでいるのか教会の方に訊いてくれないかしら。昨日の深夜、ステファネッリの屋敷に出入りした者がいたの。この地図の屋敷はその深夜の来訪者が入って行った屋敷よ。時間が時間なだけに、後ろ暗いことの連絡のために出入りしたはずだわ。だから相手がどんな者なのか知りたいの。」

「何か情報をやりとりしてるとは思ったんですけど、この情報だったんですね?」

「え、私がAIと情報をやりとりしていたって、わかるの?」

「ええ。私、電磁波とか超音波とか、人間に感知できない信号も感知できますもの。その信号が意味するところを理解するには、もっと多くを経験する必要がありますけどね。」

「うーん、さすが神様だけのことはあるわ…」

「私にとっては、人間だけが相手というわけでもないので。」

人の形をしてはいても、やはり神様だ。まぁ、人の形をしていても普通の人間とは違うという点では、私も似たようなものではあるが。

「このお屋敷の情報の収集は、たぶん明日までがかかります。」

サラは妖しい微笑みを浮かべて言う。この前に行ったとき、ろくに大司教様の相手をしなかったから、今回はそれなりに相手をしないといけないのだそうだ。まったく…大地聖教会ってどういう組織なのよ。

結局、サラが戻ったのは翌日の昼だった。

「久しぶりに大司教様と深くお話できました。ちゃーんと情報も取ってきましたよ。大司教様だけでなく他の職員さんたちからも。」

うふふと、頬を染めながら思わせぶりに言うサラに、私はげんなりしてしまう。

「地図に記された屋敷は、マリッツィアーノ・フィロポンテっていう男爵のお家のようですね。この男はここから馬車で3日ほどの海辺にあるコート・ロッソが領地で、領地には男爵の息のかかった造船所があるんだそうです。その造船所は、最近は造船のお仕事が少なくて、経済的に困ってる様子だそうですよ。」

「サラ、ありがとう。とても助かるわ。今回の保険は船の評価額が通常の2倍を越えるから、おそらく船が沈没したことにして船2隻分以上の保険金をせしめようとしているはずなの。だから、今の船を新しい船として生まれ変わらせるのに、造船所を牛耳っているマリッツィアーノ男爵に話をつけた、ということではないかしら?マリッツィアーノ男爵も傘下の造船所が困っているとすれば話にも乗るでしょう。」

「でしたら、その造船所にステファネッリの船を持ってきたところを押さえれば良いですね。」

「そこは商工会に頼みましょう。お金を払えば人を出してくれると思うから。予想される航路からすると、出航の2日後ぐらいにコート・ロッソに着くでしょうから、その時を狙って。ただ、それだけではね…」

「あら、それだけではダメですの?」

「ええ、たぶん。ステファネッリの船を造船所で押さえた際に、ステファネッリが主張しそうなことが2つ考えられるの。最初のケースは、ステファネッリが欲をかいて、押さえた船はエルシード号とは別の船だと主張して保険金に固執してくる場合。これを主張するなら、船に設置したセンサーが残っている限り、言い逃れはできないでしょう。でもこの可能性はかなり低いと思うわ。

もう一つのケースは、ステファネッリが守りに入って、押さえられた船をエルシード号と認めて保険金を諦めてしまった場合。その場合は、私たちが示した航路を外れたことにより契約は無効になって、私たちの得るものは掛け金だけになってしまう。このケースは詐欺師を野放しにするようで癪にさわるだから、航路を外れて造船所に向かった行為が最初から計画されていて、保険金を騙し取る狙いがあったことを、何とか証明したいのよ。」

「なるほど、わかりました。でも、なかなか難しそうですね。」

「一番良いのは、エルシード号改造の注文書が出てくることなのだけど、私たちがエルシード号を押さえてから探し始めるんじゃ遅すぎて、燃やされて証拠隠滅されてしまうと思う。かと言って、先にこの注文書を盗み出しておくのは、裁判のときに証拠として提出しても、入手経路を明かすことができないから、偽物だとして採用されない恐れがある。それに、注文書を盗まれたことに気づかれたら、警戒されて、その時点で契約が解除されるかもしれない。」

「じゃぁ、注文書にはあまり期待できないということですね?」

「そうよ。次に考えられる作戦は、新規建造ができる造船所を探していることにして、エルシード号の作業に使うと思われる期間に、件の造船所のスケジュールが空いているかどうか調べることね。これは商工会を通じて確認してもらうようにします。でも、スケジュールが埋まっていることは間接的な証拠にしかならないし、どんな案件で埋まっているのかを強く訊くことはできないと思う。相手を警戒させることになるかもしれないからね。」

「そうですねぇ。何の件で埋まってるかがはっきりできないと、強い証拠にはならないですね。」

「あと一つ考えたのは、裁判になったときに、ステファネッリとマリッツィアーノを反目させるようにし向けること。具体的には、エルシード号がマリッツィアーノの造船所で押さえられたときに、ステファネッリとの関係を認めることのないよう、口止料を支払うという偽手紙をマリッツィアーノ出しておいて、裁判直前にやはり口止め料は払えないっていう手紙を出せば、裁判ではマリッツィアーノはステファネッリを裏切ってくれるかもしれないわ。」

「さすがに、腹黒い工作も手がけていただけのことはありますね。」

「え?こんなの普通よ。普通。でもこの方策は、こちらに都合の良いことばかりを考えていて、本当にそうなるのか確信が持てないの。それに、受け取った手紙の確認をされるとちょっと面倒になる。それでね、実はついさっき思いついたことがあるの。大地聖教会の協力が得られると更に良いのだけど、私からソフィア大司教様にお願いした方が良いかしら?」

「いえ。ルナさんに対しては、少しは嫉妬心があるみたいだから、私からお願いしてみます。私が言えばきっと喜んで協力してくれますよ。それに、もしかしたら大司教様ご自身が何かしてくれるかもしれませんし。」

悪戯ぽく答えるサラの言葉に私も苦笑しながら、

「じゃぁ、お言葉に甘えましょう。こうしてくれます?」

私は大地聖教会が果たしてもらう役割をサラに説明した。

サラは、ソフィア大司教様に協力を仰ぐため、再び王都へと向かった。ついでに、商工会を訪れてルフィオさんに事情を話し、マリッツィアーノ男爵の造船所のスケジュールの問い合わせと、エルシード号が出航した翌日から5日間の造船所の動向監視を依頼した。


サラは、思いの外早くその日のうちに帰宅して、大地聖教会と商工会への依頼の結果を報告してくれた。

「商工会の方は、20万ルードで、造船所のスケジュールと、エルシード号が出航した翌日から5日間の動きを見張ることを請け負ってくれました。それから、大地聖教会の方は、大司教様の協力を取り付けることができました。」

「ありがとう。ご苦労さまでした。大司教様の方は、この前みたいに、朝帰りかと思ってたわ。」

「大司教様は、今回の役どころがとても気に入ったみたいで、ご自身が港に赴くんだって顔を紅潮させて張り切ってました。そして、この件がうまくいった暁には、ご褒美として改めて来て欲しいのだそうです。」

うふふと微笑むサラの顔を見て、私は脱力感を覚えた。


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