賭けの結果
これまで気になっていた部分を改作します。
最後のエピソードまで行ったら、新エピソードも書いてゆきます。
どうか、暖かく見守っていてください。
俺はルフィオ・ファルネーゼ。実はこの商工会の会頭補佐をやっている。案外大者だったってわけ?というルナの言葉は、まぁ当たっている。俺が会頭補佐でなければ、賭けの参加者は100人も集まらなかっただろうから。賭け金をルナ達に伝えた後、俺はすぐに会頭室へと向かった。会頭のジュゼッペから、ルナ達に接触して、彼女らがどんな者であるのかを見極めるように言われていたのだ。
「それで、ルフィオ。あの姉ちゃんたちと話はできたのか?」
「はい、会頭。賭けをもちかけて、彼女達がどういうつもりでいるのかを把握するように務めました。」
「それで?」
「一言で言えば、彼女らは信頼に足るというのが私の見立てです。」
「ほう、そうか。お前がそこまではっきり言うんだったら、そうかもしれないな。もう少し説明してくれ。」
「私の見る限りでは、ルナという女が天候予測の全てを仕切っている感じですね。そして予測には絶対の自信を持っている。もちかけた賭けに対しても、特に嫌う様子はなく、勝つのが当たり前という反応でした。晴雨の判定が微妙な日というのまでわかるようです。だから今回は判定がはっきりする日を賭けの対象にしたのだと。ハッタリをかますつもりなら、そういうことは言わんでしょう。いったいどういう仕組みで正確な予測ができるのか、興味深いところです。」
「うーむ。外国から来たと言ったから、この国には無い技術があるのかもしれんな。」
「航海スケジュールと航路の提案についても訊いてみたんです。そうしたら、風向きとその強さ及び降雨の程度を1〜5時間おきぐらいに分けて予測すると言うじゃありませんか。それに、海底の地形が印された海図も見せてもらいましたよ。」
「どうやら俺はちゃんと話ができていなかったようだな。もしルフィオが聞いた話のとおりなら、彼女達をうまく使うことができれば、相当役にたつだろう。引き続き情報を探ってもらえないか?」
「承知しました。それから、修道女の格好をした女ですが…サラだったかな?」
「サラ・セントマリア。修道女ではないそうだぞ。確か、特別枢機卿と言っていた。」
「特別枢機卿って何でしたっけ?。まぁいいや。そのサラですが、こちらはルナっていう女のサポート役に徹するみたいで、賭け金の総額が2000万ルードとなったことを伝えたときに、この女が用意すると申し出てきました。」
「ほう、2000万ルードと言えば、普通の勤め人の年収の3〜4倍じゃないか。それを躊躇することなく用意すると言ったのか?」
「ええ。全く動じる様子はありませんでしたね。私が彼女達に賭けたので、彼女達が準備する金は結局1800万ルードということになったんですが、それでもかなりの金額であることは間違いありません。」
「何だって?お前さんも彼女達に賭けたってのか?」
「ええ。話を聞いているうちに、彼女達の予測が外れる気がしなくなったもんで。」
「ふーむ。会頭補佐のお前が賭けるぐらいなら、彼女達は確かに信頼に足る者なのかもしれないな。まぁ、あとは結果が出るのを待とうじゃないか。他には何か?」
「賭けの募集をした時にわかったんですが、彼女たちの住まいは、呪われていると言われていた家のようですね。ほら、王都からアスミルの港へ行く途中に大きな湿原があるでしょう?その湿原の端に建つ、望楼付きの家らしいですよ。」
「おぉ、川を挟んで建っている、300年前からあるって言われている家だな?勝手に侵入しようとした者が必ず雷に打たれて死ぬという。」
「はい、そうです。橋のたもとの碑文に警告が彫られていて、建物に侵入しようとした者には必ず落雷があるってことで、呪われた家と言われているようですね。それなのに、彼女たちは何故住むことができるのか?これも大地聖教会のおかげなのでしょうか?あそこは、何十年かに一回は女神が姿を現すとの噂があって、熱心な信者もある程度いるようですが…」
「そもそも川にかかる橋を誰が維持してるのかわかってないんだ。20年ごとに依頼された業者が橋を補修しているらしいが、誰が費用負担をしているのかわからないらしい。何ともミステリアスだな。」
「これ以上調べるのが、少し怖い気もしますね。でもまぁ、やってみますよ。」
「ほう、何故?落雷に逢うかもしれんぞ?」
「二人とも、すごい美人ですからね。」
「あぁ、確かに。」
会頭はニヤリと笑って、カップを口に運んだ。
商工会の会頭を訪ねた11日後、私はサラと連れ立って商工会にやってきた。
ここまで10日間の天候は、もちろん私の予測したとおりで、11日後の今日は風雨が強く、馬車がなければとても出歩くあるう気はしないというレベルになった。賭けが私たちの勝利であることは文句のつけようがなかった。商工会のテストが合格であることを確認するため、会頭との面会希望を申し出たところ、すぐに会頭室に案内された。
「やぁ。見事に賭けに勝ったな。俺も儲けさせてもらったよ。」
ルフィオさんがにこやかな様子で話かけてくる。
「まぁ、当然の帰結です。それにしても、ルフィオさんがここに居るということは…ルフィオさんは商工会の関係者で、私たちのことを探るように言われていたってことなんでしょうか?」
「ご明察。私はこの商工会の会頭補佐なんだ。ルナさんたちが会頭に商売の説明をした後すぐ、ルナさんたちがどのぐらい信用できるのか見極めるように会頭から言われてね。お天気テストだけでは、さすがにまずいだろうってことさ。賭け金を伝えた日にすぐ報告したよ。お前さんたちは信用できるって。」
「うむ。ルフィオから色々と話は聞いたよ。お前さんたちを貶めるようなことを言ってしまって申し訳なく思う。このとおり謝罪するよ。頼まれたとおり、ポスターの掲示は許可するし、お前さんたちの予測が役に立ちそうと思う場合には、積極的に情報を与えるようにする。しかしな…これは老婆心なのかもしれないが、保険業は危険じゃないのか?海賊に襲われて積荷が失われたのを天候のせいにされることもあるだろうし、意図的に行方をくらまして、天候による難破だとして保険金を請求されることもあるだろう。まぁ保険金詐欺だな。最近は詐欺師も多いからなぁ。」
「あら。私たちのことを心配してくださるんですか?ありがとうございます。でも大丈夫。嘘をついてもすぐばれますよ。保険契約を結ぶときに、状況を知る手段を色々と受け入れてもらうようにしますから。騙す気がないならすんなり受け入れられそうなことばかりです。それに、もし不正が発覚したら保険金額の10倍のペナルティを課すようにします。」
「問題は、詐欺の証明ができるかってとこなんだがね。」
「まぁ、その方法は言わないでおきましょう。もし回避された時に、私も会頭さんも困るでしょう?」
「わかった。そこまで言うのなら、お前さん達の裁量で何でもやってみるといいさ。それで、早速だが、保険を頼みたいと言っている者が出てきたぞ。貿易商のローザ・ステファネッリっていう女だ。とかく汚い商売をすると噂になってはいるんだが、これまで不正の証拠が見つかったことはない。商工会を通じてのコンタクトの依頼だから、商工会の判断で断っても良いが、どうする?」
「なかなか面白そうですわね。噂の貿易商との勝負ですか。もちろん受けてたちますよ。それに、普通の商売だっていう可能性もありますもの。それに、もしこれが私たちから保険金を巻き上げるための依頼だとして、それを防いだら、かなりの宣伝効果になりますよね?」
「普通の商売ね。まぁ、俺にはそうは思えないのだが…それを承知でやると言うのなら私は止めん。」
「先ずは詳しいお話を伺いましょう。船や積荷に保険をかけるのでしょうから、今の段階で船と積荷が見れるなら、どこか港に近いところでお会いするのが良いと思います。」
「おお、それだったら、商工会の事務所がアスミルの港にあるから、そこに5日後でどうかね?」
「はい。私の方は問題ありません。サラも良いわね?」
「ええ、大丈夫ですよ。特に教会の用事もありませんし。」
「もしできれば、保険の対象としたいものとその価値のリストを、その時までに作成していただけると時間の節約になります。」
「わかった。その旨伝えよう。では、5日後に商工会の港の事務所で。詳しい地図は、お前さん達が言っていた宿屋に届けさせる。もし向こうの日程が合わなかったら連絡する。」
「よろしくお願いします。」
私たちは商工会を後にした。
年末年始のため、少しペースが落ちるかもしれません。




