大地聖教会
これまで気になっていた部分を改作します。
最後のエピソードまで行ったら、新エピソードも書いてゆきます。
どうか、暖かく見守っていてください。
王都にある大地聖教会。敷地は広大だが、建物はこじんまりしたものだった。外周には柵が張り巡らされていて門もあるのだが、18時まで門が解放されていて誰でも入れるようになっている。サラは礼拝堂の横にある教会関係者が利用する出入り口から建物の内部に入って行く。教会庶務と書かれた部屋の前で、ノックをしてからドアを開けた。そこには教会職員3名がいて、事務仕事をしていたようだ。
「こんにちは。お久しぶりですね。」
「まぁ、サラ様。お元気でしたか?ようこそお越しくださいました。大司教様が毎日のように気にされてましたよ。サラはまだ来ないの?来ないの?って。」
「この前お会いしたのは1ヶ月ぐらい前でしたかしら?」
「ちょっとお待ちください。すぐに、大司教様にお取り次ぎいたしますから。」
「ここに来た目的は、ソフィア様に会うことではなくて、私のお金で少し手形を振り出して欲しかったのと、預金残高の証明をいただきたかったのですけど。でも、何にも言わずに帰るとまた拗ねられそうですね。手形と預金残高証明の手続きをしている間に、ここにいらっしゃるルナさんと一緒に、お部屋に伺ってみます。手形の金額は1800万ルードでお願いします。」
「わかりました。1時間ほどかかると思いますから、大司教様とお話なさっててください。」
「よろしくお願いします。」
私は、職員の皆さんに軽く挨拶をしたあと、サラと一緒に、教会庶務の部屋を後にした。
廊下の突き当たりの大きなドアの前でサラは立ち止まり、ドアをノックして声をかけた。
「ソフィア様?サラです。少しご挨拶に参りました。」
すると、中で何かバタバタする音が聞こえ、ガチャリと音がしてドアが勢いよく開いた。そこには、30台半ばと思われる、金髪にグリーンの瞳のスラリとした女性が頬を上気させて立っていた。
「サラ!やっと来てくれたのね?久しぶりじゃないの。元気にしてました?」
目をキラキラさせて一心にサラを見ている。どうやら、私のことは全く目に入っていないようだ。サラのことだから、きっとこの方とも深い関係になったんだろう。まったく、呆れたものだ。
「ソフィア様。ご無沙汰しておりました。今日は教会庶務に用事があったので、ついでにご挨拶をと思い、お伺いしたんです。」
「ついでだなんて…つれない人ね…」
そこまで言って、サラの後ろに立っている私にハッと気づいたようだ。多少どもりながら、狼狽気味に私のことを訊いてくる。
「こ、こちらの方は?…」
「こちらは、私がお世話をさせていただいている、ルナ様です。」
「はじめまして。ミラーダ・ルナ・イスルギと申します。サラさんが教会に用事があるということで、付いて来てしまいましたが、思いがけなくも大司教様にお目にかかれて、本当に光栄です。」
「ご、ご挨拶が遅れて失礼しました。大地聖教会王都地区の大司教を務めております、ソフィア・ラ・フィルメーナと申します。それで…サラ、お世話ってどういうことでしょう?」
私が挨拶をすると、ソフィア様は動揺した様子でお世話がどういうことなのか訊いてくる。きっと私とサラの関係を気にされているのだろう。なんか可愛い。
「ルナ様は、最近この国にいらっしゃった方なのです。色々と不案内でお困りのこともあるでしょうから私が直接お世話をするようにと、女神アスタルテ様から啓示がありました。」
「え?じゃぁ…アスタルテ様にとっても大切なお方っていうことなの?」
「はい。そのようですよ。」
「そう…それじゃ、しょうが…あ、す、すみません。サラ、お任せしましたよ。」
これを聞いて、私は思わず苦笑してしまった。しょうがないって…サラと一緒にいたいという願望がダダ漏れになっている。それにしても、アスタルテ様の啓示と言われたのをすんなり受け入れたことには驚いた。だとするとこの方は、サラがアスタルテ様の言葉を聴ける一人だと思っていらっしゃるのだろう。実際は、ほとんどアスタルテ様本人なのだが…
「大司教様。この国に来てすぐ、アスタルテ様からサラさんを紹介していただいたんです。お家の手配やら、日々のお家の仕事やら、とても助かっております。アスタルテ様と教会、それにサラさんには改めて感謝申し上げます。」
「え!貴女もアスタルテ様からお言葉を賜ったんですか?」
「はい。一度だけですが。」
「教会関係者以外の人がお言葉を賜るなんて。ルナ様はよほどアスタルテ様に気に入られていらっしゃるのですね。」
「私がこれまで活動して来たことが、たまたま、アスタルテ様のお役にもたったみたいでした。それでだと思います。」
「興味深いわ。是非一度お話を聴かせてください。」
「ソフィア様。それでしたら、ルナさんのお家にいらっしゃると良いと思いますよ。ルナさんのお家はとても素敵なんです。湿原を見渡す望楼もあるし、お風呂は露天風呂でとてもリラックスできますよ。お料理は私が準備いたしますから。」
「まぁ!それは素敵ね。ルナ様さえご了解いただけるのでしたら、すぐにでも行ってみたいわ。あぁ、でも暫くは教会を離れられないような気がするのよね。」
「大司教様、そんなに焦らずとも大丈夫ですよ。私まだろくな仕事もないので、当面はいつでも大丈夫です。ご予定がはっきりしたら連絡ください。月とウサギっていう宿屋にお言付けいただければ、連絡付きますので。」
そうやって話しているうちに、職員の方から、手形が用意できた旨の連絡があったため、私たちは教会を辞去することにした。
サラと私はそれぞれ大司教様にお別れの挨拶を告げ、商工会へと戻って行った。
帰りの道すがら、私は大司教様に興味を覚えて、サラに彼女のことを色々訊いてみた。
「サラ、大司教様って随分お若いのね。」
「はい。大地聖教会は若い人の登用を積極的に進めているんですが、特にソフィア様はその能力の高さに加えて、前任者が夭逝されたこともあり、33歳の若さで2年前に大司教に抜擢されたんです。柔軟な思考と改革を進める実行力で人心をしっかり掌握していらっしゃいますよ。私とはかれこれ7年のお付き合いになりますかしら。」
「そうなんだ。貴女ずいぶん気に入られているみたいじゃない。」
「そうですね。かなり前から一緒に夜を過ごしたりしてましたから。」
「まぁ、そんなことだと思ってたわ。サラって、そういう点では全く禁忌がないのよね。」
「うふふ…ソフィア様、とても素敵なんですよ。それに、せっかく肉体を持ったのですから、楽しまないと。いずれは3人でも良いかも。」
「ちょっ!流石にそれはまずいんじゃないの?仮にも聖職者でしょうが。」
「あら。私、教会には所属してますけど、聖職者っていうわけでもないのですよ。お祈りもしませんし。自分にお祈りするというのも変でしょう?」
「ソフィア様は聖職者でしょうが。まったく…」
私たちは商工会に戻ると、ルフィオに手形を見せた上で、それを商工会に預かって貰った。
「じゃぁ、11日後にはここに来て、降り初めの確認をしてもらうことにするわ。大雨だからあまり来たくはないけど…」
「俺も、予測が外れる方に賭けた者の何人かに、立ち会ってもらうように言っておくよ。後でゴネられても困るからな。」
「今から思うと、降った雨の量を計って、一定の基準を越えるかどうかで判定すればよかったかもしれないわね。でもまぁ、今度の雨は、ゴネようもないほどの大雨になるので大丈夫でしょうけど。それではまた。」




