第2話「禁忌を犯した2人」
凛子:私はすぐにウェブネシアにハマった
ロキ:アールじゃん! 今日もログインしてんのかよ! もうウェブネシア中毒じゃん
アール:凛子うるさいな! アールくんがぼっちにならないように来てあげてんじゃん!
ロキ:はあ!? 一週間でフォロワー1000人行ったからって調子乗んな!
アール:調子乗ってないし!
アール:ティファニーちゃんと二郎くんとハイネちゃんが私のハウスでやったバーチャル歌LIVEした時にギフト送りまくって、ランキング乗せてもらって、人が集まったからこうなってるの! 私もビックリよ!
ロキ:いや、お前めちゃくちゃ歌上手いよ……
アール:はあ!?(照・驚) そんな事言われても嬉しくないんだから!
ロキ:今どきアニメキャラでもそんなツンデレゼリフ言わないだろ……
0:《場所》会見場
夏樹:ウェブネシアは島の中で仲良くなり、フレンドとお話するだけのSNSとしてだけではなく、一緒にゲームをしたり、自分のハウスで自己表現ができるLIVEができます
夏樹:LIVEの内容は自由。トーク、歌、演劇、朗読、ゲーム実況。LIVEは自分のハウスのステージに立ち、ウェブネシアの誰でも視聴が可能です
夏樹:現実世界では実現不可能なバーチャルの魔法のような演出。空を飛んだり、ドラゴンを出現させたり。高校生の想像力はそんな私の想定を超えていきました
0:《ウェブネシア内》
アール:そういえば二郎くんとハイネちゃんは? LIVEのお礼できてないんだけど
ロキ:アール、お前がフォローしてる人数減ってないか?
アール:あ、9人から7人に減ってる………
ロキ:俺も174から172に減ってた
アール:ロキくん、覚えてるのすごいね……
ロキ:フォロワーはよく外されるから、よく減ってるんだけどそれはいいんだ
アール:今フォロワー80くらいだっけ?
ロキ:82……俺のフォロワーが少ないって話はいいんだ!二郎とハイネのアカウントがない! 消されてる!
アール:あの2人付き合ってたよね!? 別れてやめちゃったってこと?
ロキ:ハイネだけならありうるけど、二郎は絶対ない。あいつはリリース当初からのダチだけど、リアルに友達がいないから、絶対ウェブネシアをやめない
アール:って事は………。もしかして、リアルの個人情報をバラして垢BANに!?
0:《場所》会見場
夏樹:このアプリは高校生の出会い系になりかねないと危惧していました
夏樹:私たちはAIに会話やメッセージをモニタリングさせ、年齢と性別と誕生日以外の情報。本名、住所とそれに繋がる住んでいる地域、その他リアルで行なっているSNS情報の交換を禁止しました
夏樹:AIに引っかかったユーザーは弊社の社員が即時確認し、規約を破ったユーザーのアカウントを停止。フルダイブヘッドセッドの機能でウェブネシア内でのきでの記憶は全て消去し、リアルで会うのを不可能にしました
0:《ウェブネシア内》
ロキ:フォローしてるアカウントの停止理由と停止期間は運営に問い合わせると分かるんだけど、どうやら個人情報の流出らしい。アイツらリア凸しようとしてたみたいだ。停止期間は2人とも1000年。実質的に永久BANだ
アール:1000年後に復活なんて、異世界の物語の魔王みたいだね……
ロキ:そうだな……。まあ1000年後、俺たちは生きてないな
アール:ねえ、ロキくん……。二郎くんも、ハイネちゃんも……。たまたまウェブネシアで出会っただけなのに、お互い好きなのに! 個人情報保護とかそんな事で引き裂かれるなんて! 酷過ぎるよ!
ロキ:それがこのアプリなんだ……。高校生しかいない世界……。俺たちは親の同意の元、こうやってここにいる。ネットの知らない人間と会ってはいけません。当たり前なんだ……
ロキ:二郎もハイネも俺たちの記憶なんてとっくに消されてるし、まさか恋人がウェブネシアでできたなんて思いもしないはずさ? そのうちウェブネシアの存在すら忘れて、楽しくやっていけるよ
アール:でも私にとって2人は大切な友達だよ……ロキくんもそうでしょ?
ロキ:所詮ネットなんだから……暇つぶしじゃん! だから泣くなって!
0:アールはロキをビンタした
アール:最低!
0:アールはログアウトした
ロキ:2人が居なくなって、俺が一番ショックだよ………
開智:二郎は俺の人生で最初にできた親友だった。一緒にゲームして、モテない悲しさを共感し合って、ウェブネシア内とはいえ、二郎に人生最初の彼女ができた時は自分の事のように喜んだ
開智:ハイネは喋るのが苦手だけど、自分の趣味の話になるといい意味でキモくて面白くて。友達が病みツイしてたら、真っ先に心配して話を聞きに行くいい奴だった
ロキ:あいつらとの付き合いは俺が一番長いんだぜ
開智:ずっとフォロー欄の一番下にいた最古参の二郎の名前がなくなってる事を確認して、俺はため息をついた
ロキ:馬鹿野郎……