第1話「終末が決まった世界で」
開智:俺たちは顔を知る前に恋に落ちた
凛子:名前を知る前に告白をした
開智:会ったことはない
凛子:顔も名前も知らない
開智:それでも、この気持ちだけは
凛子:本物だ
0:《場所》沢山の記者が集まる会場
0:カメラが向けられた机の後ろまで髪の長いスーツの人が真ん中に立った
夏樹:記者の皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます
夏樹:株式会社ウェブネシア代表の日下部夏樹です
夏樹:私共が開発し、2年間の運営を続けてきたフルダイブ型ソーシャルネットワーク・《ウェブネシア》は6月いっぱいでサービス終了をし、それに関する会見を開催させて頂きます
夏樹:まず、このアプリケーションについて説明からしたいと思います
0:《場所》ウェブネシア内
ロキ:サービス今月いっぱいで終わっちゃうのかぁ。みんなとの繋がりもここまでか……
アール:そうだね。ティファニーとか他の子とも喋れなくなっちゃう……
ロキ:アール、1番は……俺でしょ?
アール:うん……もちろん
0:アールは俯いた
ロキ:なぁ、アール
アール:なに? ロキくん
ロキ:サービス終了後にも2人で話せたらいいな……
アール:どうやって? 利用規約に書いてあったじゃん。他のSNSとか交換したら、2人とも記憶消去されるんだよ?
アール:リアルの話をここでして、次の日からのログインしなくなった友達を知ってるでしょ? どうしようも無い事なんだよ。この世界では
ロキ:うん……そうだよな……冷静じゃなかった。ごめん
アール:ううん………明日も早いから私ログアウトするね?
ロキ:そっか。俺はもう少し残っていくよ
0:アールはログアウトし、消えた
ロキ:アール……好きだ……。なんで離れなきゃいけないんだよ……!なんで出会ってしまったんだ……
0:《場所》会見場
夏樹:このアプリは弊社が開発したこのフルダイブヘッドセッドを着用する事で、意識をオンライン世界に繋ぐ事ができ、自分の理想のアバターを作成し、ウェブネシアの世界で生活できるという世界初のフルダイブ型ソーシャルネットワークです
夏樹:そして、このアプリの最大の特徴は、このアプリは高校生しか利用をできないと言う事です
夏樹:そして、たとえサービスが終了しても個人を特定する情報をアプリ内の人間に教えてはならないと言う利用規約が存在します
凛子:私、吉川凜子は本音を話せない性格だった。学級委員や生徒会をやっていたリーダータイプ
凛子:だけど、みんなから嫌われたくない。ニコニコして、我慢して、そうすれば、丸く収まる。そうやって生きてきた
凛子:そんな時に、「自分とは違う自分になれる高校生だけの場所」というキャッチフレーズに惹かれ、ウェブネシアを始め、名前は《アール》にした
アール:え……ログインできたけど……使い方わかんないな……
ロキ:えっと、お困りですか? もしかして初心者の方ですか?
凛子:初心者だった私にウェブネシアの世界を教えてくれたのがロキくんだった
ロキ:あ! ナンパとかじゃないです!(焦) もし困ってたらと思って声かけただけなので!
アール:そんな事思ってないですよ!(焦) じゃあ………質問いいです?
ロキ:もちろんです!
凛子:優しくて真っ直ぐ。そしてなんか可愛い。ロキくんにはそんな印象を持った
ロキ:アールさん……フォローの仕方とか分かります?
アール:え? 分かりません
ロキ:じゃあ、俺がアールさんの最初のフォロワーになりますよ。ここのコマンドを開いて、こうやってやるんです。あ、俺のフォロワーにはならなくていいですよ!(焦)
ロキ:こうしてるのはフォロワー稼ぎが目的じゃないし、ウェブネシアを楽しめるユーザーが増えてほしくてやってるだけなので! この先気に入った人が居たら、その人をフォローしてあげてください
アール:じゃあ(ニヤリ)
0:コマンドを使ってアールはロキをフォローした
ロキ:え?
アール:気に入った人が居たのでフォローしちゃいました(笑)
ロキ:なんですか、それ別に後で外しても全然気にしませんよ〜
アール:外しませんよー(笑)
ロキ:そうなの?ありがとう! アールさん
開智:俺、大宮開智は学校に居場所がなかった。ゲームやアニメ、そういったものだけが救いだった。
開智:そんな中で「学校の外の第2の居場所」というキャッチフレーズを見つけ、リリースと同時期にウェブネシアを始めた。名前のロキはすごく適当に付けた
アール:ロキくんはイケメンアバターもあるのに、なんでそんなダサいアバターにしてるの?
ロキ:だってさぁ、イケメンアバターは現実とのギャップで病むよ?
アール:ふはは
ロキ:なんで笑うの?
アール:なんかロキくんぽくて好きだなぁって
ロキ:え、好き……!?お前、男に軽率に好きとか言うのかよ……
アール:ロキくんにしか言わないよ?
開智:アールはよく思わせぶりなことを言う