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88歳のエルフVTuber、手さぐりで執筆配信始めます

作者: 桜崎あかり

【無茶なテーマを突き付けてきた】


【これ、どういう風に消化すればいいのか】


【今回はネタが難しすぎる】


【これはさすがに皆勤賞は途切れるだろうな】


 様々な声をSNS上で拾っていたのは、これからバーチャル動画配信者を始めようとした人物である。


 彼はある程度のWEB小説に関してはかじっており、別の短編コンテストではいい所まではいったという。


「なるほど。そういう事か」


 彼はテーマに関して、何となく苦戦している理由を察した。


「内容に関しても、色々とひねっている人は多いが……」


 WEB小説の場合、サイトの特色を生かすというのはよく言われている。それを踏まえ、彼はとあるネタを思いつく。


(そうか。こういうネタをやれば、いいのか……)



『皆さん、初めまして。日本にやってきた88歳のエルフです』


 動画配信サイトにおいて、突如として始まったのは若い美少女、というには若すぎるような外見の人物だ。


 その彼女の口から出たのは『88歳のエルフ少女』というパワーワードである。外見を踏まえると、確かにエルフであれば88歳でも納得する人はいるだろう。


 ちなみに、このエルフのイラストは絵師に依頼したものではなく、自分で書いたものらしい。


『今回は日本ではやっているといわれているWEB小説を執筆していこうかと思います』


 この配信を見ていた視聴者は、誰もが驚いた。やる事が執筆配信だというのである。


 さすがにエルフが設定無視気味に唐突なゲーム配信を始めたりするよりは、まだ説明ができる可能性もあるかもしれないが、たいていの人はすぐに離れてしまう。


 企業勢の3Dモデル披露配信などと違い、彼がやっているのはあくまでも個人勢としての配信だ。視聴者の数は二の次と考えるだろう。



 彼が今回の配信に踏み切ったのには理由がある。それは、ここ最近のSNS上では様々なネガティブな話題が連鎖していき、それが彼にとっては非常事態と言えることだった。


 一歩間違えれば、そのネガティブな話題に便乗した小説を書き、炎上をさらに拡大させるような状況もゼロではなかったので、それを何とかするためにも執筆配信に踏み切った事情もある。


(このまま無言配信だと何だかさみしいから、せめて……)


 しかし、下手にタイムリーな話題を出すと、そこからぼろが出て炎上しかねない。そう思った彼は、しばらく無言配信を続けることにした。


 小説の執筆をしていくうちに誰かが突っ込みを入れると信じて。



 最終的には20分ほどの配信時間で誰も突っ込みをする人はいなかった。最初に自己紹介を行い、そこからそのまま無言の執筆配信を続けている結果である。


 それでも逆にしゃべらなかったというのもあってか、SNS上で微妙な話題となり、そこから予想外の『バズり』となった。


「小説の方よりも、こちらの方があっているという事なのだろうか」


 小説の閲覧数よりも配信の来客数が多かった事実は、彼にとってもダメージではあるのに違いない。


 しかし、それでも来客が多かったという事が今後の執筆モチベにもつながるだろう、と彼は考えてしばらくは配信を続けることにする。


『日本にやってきた88歳エルフの執筆配信です』


 今日も何処かで、同じようなエルフ配信者が小説執筆を配信する動画が『バズ』り、後追い配信者が増えることを祈っているだろう。


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