不思議
他人のこころを眺めてしまうことが、時々あります。
自身のこころを眺めるときは、大概、苦笑や微笑み、失笑や諦めのため息、そんなものをよく浮かべます。他人のこころを眺めてしまうときには、そういうあからさまな表情は押さえますので、逆に無関心に見えてしまうようで、悪気はないのに怒りをかってしまうことが少なくありません。
本人は、実に好奇心に満ちて眺めているのですが、分かってはいただけません。
不思議なことに、他人のこころと同じくらい、自分のこころが謎めいていることがあります。よく例えられる湖面というよりは、澱んだ底なし沼でしょうか。そこに映った自分の顔が歪んでいて、可笑しいやら、哀しいやら、いつの間にか1日が過ぎていたりします。
人の才とは不思議にも 思わぬ先に花の咲く
成したきことと、その才の 違えば、悔いの実りゆく
人の夢とは不思議にも なければ生きる甲斐もなく
あれば重荷となり果てて 生きることさえ楽しまぬ
人の想いは不思議にも 縁の絶えた人たちの
切れぬか細き糸となり その健やかを願わせる
人の記憶は不思議にも 削げば削ぐほど、本質の
美醜をもちて浮き上がり 繕うこともできはせぬ
人のいのちは不思議にも やがて、誰もが閉じてゆく
出会い、変化に不死を替え 短き旅を繰り返す
己がこころは不思議にも 己が支配の枠を超え
右往左往に揺れ動き 休まることもありはせず
人の不思議の不思議さは 過去に埋もれたわけもなく
内にあれども解けきれぬ 起伏の幅の波模様