41、はい、はい、はい!私の推しはシン君
「おはよー」
いつも通りの朝が始まった。
「須田さん、そろそろライン教えて下さいよ〜」
アカネちゃんだ。
「そうですよ、もう何年一緒に仕事してるんですか」
静香ちゃんが指を折りながら数えている。
会社の人には、あんまりラインを教えていない。
別にいいけど、だいたい毎日会うのに必要あるかな〜って
「いいけど、シン君観ないといけないから、あんまり見れないかもよ」
「私だってミュー君観ないといけないんで、そんなに頻繁に送るわけじゃないですから」
と、アカネちゃんが笑う。
その日の夜、会社数人のグループラインが出来ていた。
仕事が早いな。静香ちゃんとアカネちゃんだろう。
招待されて、参加。
へ〜みんな可愛いアイコン。
私のは、黄色いぬいぐるみマスコットだ。
たまたま、シン君からのツイート、素敵な動画が送られてきていたのを観ていた時で、それを挨拶と一緒に
共有して送った。
「いきなり、シン君キタ〜(笑)」
アカネちゃんだ。
「あら〜消去しようかな」
中山さんが意地悪を言う。
「可愛いでしょ〜保存した方がいいと思うよ(笑)」
「じゃあ、お返しに」
アカネちゃんからミュー君の動画が送られてきた。
「じゃあ、もう1枚」
最近のかっこいいスクショ写真を送る。
「ラインはあんまり見ないって言ってた人が一番送ってくるんですけど〜」
静香ちゃんだ。
中山さんのプンプン怒っているスタンプが動く。アハハ面白い。
だけど、シン君のツイートにまだ返信していない。動画ももう一度観たい。
Twitter仲間のリプも読みたい。
「じゃあ、シン君観るので、おやすみなさい」
ベットに入る可愛いスタンプを選んで送信!
すぐに会社の仲間からも
お休みスタンプが送られてきた。
アカネちゃんからは、
「私も今からミュー君観るのでお休みなさい」
と付け加えられていた。
「おはよー!」
「おはよ〜」
「昨日さっさと二人消えましたね。」
静香ちゃんが言う。
「ごめん!」
両手を合わせて謝る。
アカネちゃんもごめんのポーズをとると、思いついたように
「グループラインの画像みんなの推しにしませんか? みんな誰がいいですか?」
もう妄想に入っているらしい。
「はい、はい、はい!私の推しはシン君!」
大きく手を上げた。
「知ってますよ」
「知らない人、居ないわよ」
アカネちゃんと中山さん他のみんなも呆れ顔。
「知ってます。昨日は子供の習い事で参加出来なくてすいませんでした」
サヤカちゃんが笑いながら言う。
「大丈夫よ。シン君の動画観た?」
「はい、可愛いですね」
サヤカちゃん、良い子だわ〜。
「私は〜フウ君推しで、お願いします」
サヤカちゃん……。
「ちょっと、シン君じゃないの〜?」
今までの流れでいうとシン君でしょう。
「はい、私フウ君のピアノと歌が一番好きです」
彼もイケメンで歌も上手いからな〜
「……」
まあしょうがない。
っていうか、シン君って言われてもちょっと焼けるし、いいか。
アカネちゃんがケラケラ笑いながら、他の人の推しを聞いていく。
俳優さんと音楽アーティスト。
なるほどね〜。
イケメン強いなぁ〜。
だけど、シン君が一番イケメンだよ。
可笑しい。
ケラケラ笑いが止まらなくなる。
「また、笑ってるーー」
俳優の名前を言った中山さんが呆れ顔で言う。
「分かりました。作っときますね」
アカネちゃんがメモしてニコニコしている。
妄想してるんだ……。
「お疲れさま」
「お疲れさまでした〜」
今日は忙しかった。
シン君のCDを聴きながら夕食の用意。
癒やされる。
1日の疲れもシン君の音と声で吹き飛ぶ。
ピンポン!
グループラインだ。
みんなの推しが並んでいる。
昨日送ったシン君のスクショ写真がみんなの推しと並んでいる。
誰よりもかっこいい!!
もっと可愛い写真にすれば良かったかな〜?
でも、みんなかっこいい写真。
お気に入りの可愛い写真は、
スマホを開ければすぐに見られる。
負けられないからこれでいいかな(笑)
「ねえ、最近この会社、学校みたいになってない?」
社員の松田さんだ。
怒られる?
そういえば最近、会社が変な感じになっている。
「私の推しポスターここに貼っとこう」
静香ちゃんが壁にポスターを貼る。
アカネちゃんがミュー君の写真をテーブルに置く……
ハートが飛び交っている……
「私は、ショウ君推しよ」
松田さんまで……。
シン君シン君言っているうちになんだか推しを公表していい雰囲気になってしまったようだ。
違うのに!シン君を推したかったのに……!
それでもみんな、楽しそう。
シン君のポスターは、まだ無い……
出遅れてしまったよ〜。
写真引き伸ばして貼ってもよかったんだけど……
みんなに見られるのは〜
なんか嫌ーー。
シン君見ながらご飯なんて、笑ってしまって食べられないよ。
スマホのシン君が笑ってる。
幸せだーー。
やっぱりシン君がアイドルみたいに写ってるうちわ持ってこようかな〜扇がれたら嫌だし悩むなぁ〜
シン君のテレビ出演日をみんなが休憩中に見るカレンダーに記入する。
シン君の動画オススメもカレンダーに記入。
シン君の載ってる雑誌発売日を記入する。
カレンダーがハートだらけになる。どんどん増えていく!
「可愛いシール持ってますよ。
貼りましょうか?」
「シン君の顔写真シールってないんですか?」
ミカちゃんいいこと言えるんじゃない。
キャー! シン君のシールって〜
「あったら貼る?」
キャハッ、笑いながらカレンダーを眺める。
シン君の顔シール……
ベタベタ貼りたい。無いからな〜
みんな、ありがとう!
「本社の人が来る時は外してね〜」
松田さんが苦笑いする……。
チャイムが鳴る!
「今日もお仕事頑張ろう!」
ピンポン! シン君!
心が躍るーー!!
推しはシン君だけーー!
「須田さん、あいちゃん」
5時、帰り支度をしていると、
上司の川瀬さんが声を掛けてきた。
「はい、何ですか?」
川瀬さんは、厳しい人だ。
私、何かやってしまったっけ?
「あいちゃんって最近テレビに出てるシン君って知ってる?」
出た、シン君……返事に困っていると、
「YouTubeもやってるんだけど、凄く面白いのよ〜」
同じだ……
「はい、知ってますよ!」
川瀬さんの顔がパッと明るくなる。
「知ってるのね!可愛いくてかっこいいわよね〜」
「デジャブだ……」
小さく声に出た。
川瀬さんがキョトンとしてから
「あいちゃんってTwitterやってる?」
これ、聞いたことあるんだけど……
「……」
「どうしたの?」
「もしかして、リクエストするとか? ですか?」
「キャー何で分かるの? あいちゃんもシン君のファンなの?」
「違いますよ。弾き語りならサラサさん……」
言いかけてこのままじゃ帰れないと思い直して、
「YouTubeでTwitterのやり方教えてくれる、親切な人教えますから頑張って下さいね。URL送ります」
「ありがとう。難しくて……。また教えてね!」
川瀬さんが笑顔でピョンピョン跳ねている。
「あいちゃんがシン君のこと知ってて嬉しいわ〜」
知ってますよ。
「シン君はママの推しですから!」
「あいちゃ〜ん、シン君育成ゲーム欲しい!!ママやりたいの!シン君の曲が流れるやつ! 指鳴らしてほしい!近いシン君がいいの!名前呼んで欲しい! 神曲歌って〜!」
シン君ハート〜キャハハ!
彼女は誰よりも幸せです。
気がついたら最終話の日まで来ていました。
読んで下さった方、本当にありがとうございました。
書いていて楽しかった!!
自分で書きながら号泣したり〜爆笑したり〜(笑)
ママの推し、シン君はこれからも
どんどん大きくなります。
ママもずっと推して推して……怖っ
「あいーー大変!!」
ほら来た。
シン君ありがとう〜
楽しいーーキャハハ!
彼女は誰よりも幸せです。
また、お会い出来たら嬉しいです。
バイバイ!!




