31、チケット発券日、最強の仲間達
チケット発券日!
この番号をコンビニに持っていけば
席が分かる。ドキドキする。
「あいちゃん一緒に行って〜」
ママがお願いしてきた。
「コンビニ、いいよ」
自転車で近くのコンビニに行くのかと思ったら
「駅前のコンビニがいいの。店員さん感じいいし、コピーしに行った時もあっちの方が綺麗に出来たから、いい席が当たりそうな気がするのよ」
笑いそうになった。
「あっそう、いいけど」
付き合ってあげよう。
店員さんに番号を見せる。
機械じゃないのね。と思いながら
慣れた手付きの店員さんが、後ろからチケットを持って来て手渡す。
「ありがとうーー!」
ママ満面の笑顔。
いやいや、普通に店員さんだから
そこまで心込めたありがとう言わなくても……
チケットは紙の封筒に入っている。
店内のスイーツを見ている私に
「あい、あいちょっと来て」
店内の隅っこからママが手招きする。
「あ〜もう買えたの?」
「うんうん」
ママがうなずく。
「怖いな〜でも見たい」
さっさと見たらいいのに
ママはそっと封筒からチケットを取り出して、ん?
これは?
D−16って?
「ママ、良かったじゃんおめでとう!」
「えっ? そうなの? どこ?」
「座席表見てないの?」
「チケットに書いてあると思ってたから」
慌てて検索する。
福岡ホール座席表
ママが足踏みしながら
「やったー」
笑ってるけど涙が出てるよ。
「嬉しいーー!」
ママ声大きいよ!
前から4列目ほぼ真ん中
S席以外で1番舞台に近い席だ。
「間違いないかな〜?本当かな〜」
何回確認するんだろう。
「ここまで来たんだから駅内の百均寄ろうよ」
やっとママをコンビニから連れ出せた。
百均に入ると、ママは隅っこに陣
取ってチケットを再確認、満足したのか笑顔で応援グッズ売り場に向かう。
もう、家に沢山ある筈だけどね。
ママはご機嫌だ。
夕食、今日はお寿司いただきま〜す。
テレビを見ながら食事をするパパに
ママがさり気なく、
「6月20日ピアノ聴きに行ってくるから」
と正直に言った。
「そうなの? いいよ」
「夜遅くなるから、夕飯食べててね」
「分かった」
パパは特に気に留めることもなくビールに手を伸ばす。
元々お出掛け好きのママを止められないのは分かっているのかも知れない。
後でママがキッチンで洗い物をしながらガッツポーズを取っているのを見てしまって可笑しかった。
また出張に行くパパに、内緒にしておいてもいいのに、嘘つけない。
ママの愛だね〜
「前から4列目ーー真ん中!当たったの!」
朝からみんなに伝える。
「すごいじゃないですか」
「須田さんって運いいんですね」
「本当、強運だわね」
「いやいや、ありがとう!シン君が選んでくれたのよ」
両手を結んで上を見上げて笑顔で言うと、
「絶対違うけどおめでとう」
あっちからも誰かが、
「選ぶのはコンピューターですけど、おめでとうございます!」
って言ってくれた。
さあ仕事!頑張らなくっちゃ!
「何着て行くんですか?」
アカネちゃんが聞いてきた。
「シン君のロゴ入りTシャツと下どうしようかな〜黒いパンツかオレンジのスリムパンツで迷ってる」
「オレンジが目立つんじゃないですか?」
と、アカネちゃん。
「座ったら見えませんから何でもいいですよ」
静香ちゃんが呆れてる。
「誰かライブ行ったことある人いる?」
期待はしてないけど、
あったら教えて欲しいことがある。
えっ? 本当? 嘘〜! びっくりした。
みんなあるの? 凄い!
サヤカちゃんは、福岡ホール最前列も真ん中も経験しているそうで、
「須田さんの席、当たりですよ」
って言ってくれる。
「キャーそうなの? ありがとう」
特に静香ちゃんは、全国ツアー、アイドルと一緒に回る人だったと知って驚いた。
「静香ちゃん、思ってたのと違うーー!」
色々聞きたいことが〜。
「バックどんなのがいいかな〜?」
「何でもいいですよ。椅子の下に入れとけばいいです」
あ、これは娘も言ってた。
「雨が降ったら傘は? どこに置けばいいかな?」
「席の横か椅子の下に置いとけばいいですよ」
「何持っていけばいいかな?双眼鏡は?」
「いいですけど、そんな前の席で双眼鏡使ってたら変ですよ」
そうなの? 前の席って言ったーー静香ちゃんの言葉が嬉しくてもうダメ、キャハハ!
呆れ顔の静香ちゃんが、
「ライブじゃシン君がどこに隠れて見てるか分からないんですから、モニターもあるし、そのつもりでいて下さいね。大口開けて笑ってたら引かれますよ」
「嘘! そうなの? キャーやば〜い」
横で聞いていたアカネちゃんが、
「親指と人差し指でハート作れますか?」
と聞いてきた。
「ハート? ん?」
「こうですよ」
と言って、手本を見せてくれる。
指で小さなハートが出来ている。
「いやーー恥ずかしい」
「こう?」やってみる。
「もっと小さく可愛いハート作らないと」
中山さんも参加する。
入ってから30分ぐらい時間がある
その間ずっとすることないし、ハート作っとこうかな〜妄想が始まる。ダメダメ!
これ、本番で出来るかな〜?
ドキドキしてきた。
緊張したら、トイレ行きたくなるかも……
「トイレ行きたくなったらどうしたらいい?」
「あ〜私の場合グループアイドルだったから、推しじゃない人の時に行ってましたよ」
静香ちゃんが言うと、中山さんが
「私の行くライブは年配の人が多いし、お酒飲みながらだからトイレタイムがあるわよ」
そうなのか。シン君のは?
「何時間ぐらいのライブですか?」
静香ちゃんが聞く。
「二時間ぐらいの予定よ」
「我慢して下さい」
呆れ顔で言われてしまった。
「後、何持っていけばいいのかな?」
なんか心強い、ここで仕事してて良かった。
ニコニコしていると、
「チケット完売ですか?」
静香ちゃんが聞く
「どうかな〜」
「空席があるとアーティストさんのテンションが下がるから黒い布を掛けて舞台から見えなくしたりするんですよ」
想像したら、シン君が空席に布を掛ける……
「シン君可哀想、布掛けるの?」
泣きそうだ。
「いやいや、それ絶対シン君がやるわけじゃないですから」
それを聞いてたアカネちゃんが
「私がシン君なら5個目ぐらい掛けるところで悲しくて泣きますよ」
と言って、笑う。
スタッフさんがやってくれるのね。
そんなことが無いといいけど……
「須田さんの席D−16ですよね?
もしかしたらシン君が座るかも知れませんよ」
静香ちゃんが思い出したように凄いことを言う。
シン君が座るって言った????
「何で? なんで?」
それ、神席ってやつですけど……
「客席からどう見えるか確認するアーティストさん多いんですよ。
丁度いい場所の席じゃないですか
D−16」
真顔で言われると本気にするよ。
「キャー座れないよ」
顔を覆って妄想してしまう。
「好きな番号でって人もいますけどね」
シン君の好きな番号って?
検索しても出てこないか……
16ならいいな〜
見てもらいたいな……16番
あーードキドキする。嬉しい!
もうすぐ会える。
読んで下さってありがとうございました。
ママへ感想をお待ちしています。
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今、どうしても書きたかったので
至りませんが宜しくお願いします。
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32、うちわ完成!!
……続いていきます。