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一角獣はアセクシュアル  作者: Locoxxxx
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白い粉

「なんでぼくがこんなことやらなきゃいけないんですか」


ムネチカは泣きそうな声で言った。

モイラはファッション雑誌のページをひたすらカッターで切っていく。

テーブルの上には小さなキッチンスケールがあり、バズが白い粉をスプーンですくっては乗せている。

次にそれを正方形に切り揃えた紙に乗せて、何重にも折り、包んでいく。


「さっさと手伝って」モイラは視線をこちらに向けることなく手を動かしている。


「これってドラッグでしょ?」ムネチカの問いに「そうだよー」と陽気にモイラが答えた。


バズは部屋に流れるテクノミュージックに小さく体を揺らしながら作業に勤しんでいる。

ムネチカは今にも泣き出しそうだ。


「これって、違法じゃないですか」


モイラは、うん、とニッコリ微笑んだ。


「おまえ、やったことある?」バズが言った。


「あるわけないでしょ」


「そうだよね。日本人だもんねー。でもさ、何でもそうだけど、やってから良し悪し決めてみれば?偏見はいけないよ。ほら包み方教えるから手伝って」モイラは話しながらも器用に包んでいく。


「これが俺たちの週末の生活なんだ。嫌なら荷物まとめて出て行くか?」バズのメガネが光る。


「言いかたキツイなぁ。ほんとに出て行かれたらどうすんの。またいちからフラットメイト探すの?日本人が入るなんてラッキーなんだよ?金払い良いし、文句言わないし」

といって、モイラは紙を切る手を止めた。

「ひとつ十二ポンド。三十も売れば、家賃の足しになるよ」


「ぼく、こんなことしなくても家賃はちゃんと払いますよ」


「どのみちキミもドラッグはやるんだろうし、いつかはね。やるんならあたしたちと一緒がいいと思う」


「ぼくはやりませんよ」ムネチカは、テーブルに近づこうともしない。


モイラがふたたび作業の手をとめてムネチカを見た。


「今日はあたしの誕生日なの。一緒に祝ってほしいの。ほら、あたしたちって友達じゃない?」


(友達って。ただのフラットメイト、同居人でしょ)


とは、言えなかった。そんな度胸をこの少年は持ちあわせていない。

ムネチカはぎこちない手つきで、ひとつだけ包んでみた。

子どもの頃にやった折り紙を思い出しただけで、罪悪感は感じなかった。


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