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一角獣はアセクシュアル  作者: Locoxxxx
22/23

葛藤

その夜、真剣な表情のバズがムネチカの部屋へやってきた。


「わるいな。何があったのか知らないが、モイラの強い希望だ。おまえには一か月やる。そのあいだに次のフラットを見つけて、出て行ってくれ」


ムネチカはあっけにとられて、言葉に詰まった。


「おれにもよくわからないが。あんなに暗いあいつを見るのは初めてだよ。腹を刺された時でさえ、ハッピーだったのにな」


ハイドパークでの口論以来、ムネチカとモイラの接点はなくなった。

もちろん、キッチンや廊下で顔をあわすことはあるが、唐突に、なんの気遣いもなしに、ムネチカの部屋の扉をあけるようなことは完全になくなった。


ムネチカは、徐々にドラッグに手を出さなくなった。

恐怖がそうさせたといっていい。

ドラッグのせいでリストカットをしなくなったのかもしれない。

しかし、ドラッグのせいで人間関係が崩れようとしているのも確かだった。


幸運にも、ケタミンは依存性の低いドラッグだったので、禁断症状も体験せずに済んだ。

そして、煙草やアルコールのほうが、よっぽど止めづらい、ということを知った。

同じころから、スクアットパーティやウィルアックスのところにも行かなくなった。


一度、学校から帰宅したとき、仕事前のモイラと階段でばったりはち合わせたことがあった。

モイラの目は焦点があっておらず、真夏でもないのに汗をかき、おぼつかない足取りで壁にぶつかりながら歩いていた。相当量のケタミンを摂取しているようだった。

そんなモイラを見ても、ムネチカは「おはよう」ということば以外、何もいわなかった。


しかし本当は、さけび出したいくらいに孤独を感じていた。

それでも、ドラッグをやって部屋にひとり閉じこもっているよりは、腕を刃物で切り裂いて悦に入るよりは、このクソッタレな孤独と共に生きるほうが、よっぽどマシだと心底おもっていた。


だからバイトのない日は、シラフで学校へ行き、語学を学んだ。

今は将来なんて、どうでもよかった。

ただ、同じ日々を繰り返して、生きることだけを考えた。

モイラはどうなのだろう。今日も客を相手に愛の存在を実感しようとしているのだろうか。


二週間が経ったある日、ムネチカは、キッチンで食事をしているバズに、


「次のフラットは探さない。ぼくは日本へ帰る」


と、伝えた。

バズはさほど驚いた様子もなく、


「じゃあフェアウェルパーティ(送別会)をしなくちゃな」

と、いった。


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