表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一角獣はアセクシュアル  作者: Locoxxxx
21/23

モイラとムネチカはナイトブリッジをシラフで歩いていた。

高級品を扱う店舗が軒を連ねる通りには、さまざまな国の言語が飛び交い、人々でごった返している。

二人はそこからハイドパークへ向かうことにした。


バス停の前のカフェでカプチーノを二つ買い、公園内を散策する。

やがて水鳥たちが羽根を休める細長い池のほとりまで来たとき、唐突にムネチカが言った。


「身体を売るの、やめない?」


前を歩いていたモイラが、きょとんとした顔で振り返った。


「なんで?」


ムネチカは、真剣に、ゆっくりと問いかけた。


「またエイプリルみたいな人が出てきて、刺されちゃったりしたらどうするの」


「あたしにだって学習能力はあるの。もうあんな下手はうたない」


そういって、モイラは風を吸い込むように、グンと伸びをした。

まるでそんな事件などなかったかのように。


ムネチカは深刻な口調で、


「またキーモが守ってくれる?彼にそこまで重荷を背負わせてまでやること?」


と、詰め寄った。

モイラは足元に伸びた長い影を蹴った。すねた子供のように、こちらを見ようともしない。


「モイラはわかってないよ。みんながどれだけ心配したか」


「ずるいよ、そんなこというなんて」

モイラは伏し目がちに、哀しそうな顔をした。


「ぼくら友達なんでしょ?」

モイラは黙った。


「友達がお願いしてるんだ」


モイラはすっかりうつむいてしまった。


「これがモイラのいう、人生を楽しむっていうことなの?」


モイラの瞳が追い詰められた小動物のように光った。そしてぎろりとムネチカを見た。


「あたし、ぜんっぜん傷つかないんだよ?得意なことして生きてるだけじゃん。何がいけないわけ?」


ムネチカは小さな、小さな声で、


「ぼくが嫌なんだ」


 と応えた。


「モイラはぼくのこと、どう思う?ほんとうに友達だと思う?」


ムネチカの声はだんだんと大きくなり、



「それなら僕の言うことも聞いてよ!」と、大声でわめいた。



「でかい声ださないでよ」モイラが冷たくいった。


ジョギングしている人や、ベンチに座る老人たちの目が一斉に二人へ注がれる。

モイラが歩き出した。

ムネチカは速足でそのあとを追った。


「キーモから聞いたんだ。モイラは愛が理解できないって。だから身体を売るんだって。そんなのぼくのリストカットと同じじゃないか」


モイラはムネチカの言葉を振り払うようにして歩き続けた。


「ぼくは、将来、っていう、見えないものに対して怯えていたんだ。それでリストカットがやめられなかった。きみは愛に対して怯えているんだ!」


ムネチカがモイラの腕をぎゅっと掴んだ。

モイラはその手を払いのけようともがくが、ムネチカは離さない。


「世界は変えられるっていったのは、モイラじゃないか!」


「うるさい」


「モイラだって、自分の世界を変えられるんだよ」


「うるさい!」


そう吐き捨てるなり、モイラはムネチカの手に噛みついた。

思わず手を引っ込めるムネチカを置き去りにして、モイラは大通りまで走っていくと、そのままタクシーに飛び乗り、黄昏れの街へと消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ