週末
いつものように週末がやってきた。
モイラはまるで子供のようにはしゃいでいた。
なんでも今夜のメインDJは、モイラの大のお気に入り、クリス・フレイザーなのだそうだ。
地下鉄でエレファントアンドカッスルへ向い、そこから歩く。歩く。ひたすら歩く。
モイラに遅れをとらないように早足で、
「楽しそうだね」と、横からムネチカは語りかけた。
「とーぜん!」
「クリス・フレイザーってそんなに凄いの?」
「あたしにとっての神様!見た目はキューピーさんみたいなオジサンなんだけどね」
「そんな凄い人がスクアットパーティに来るの?」
モイラは首がとれそうなほど大げさにうなずいた。よほど嬉しいらしい。
やがて、目前に列車の高架が現れた。高架下にはレンガ造りの古びた壁がずっと続いている。
壁ぞいに歩いていくと、少し先に人影が溜まっているのが見えた。
「今夜もドラッグ売るの?」
「ううん」
ムネチカは何気なく「なぜ?」と訊いてみた。
あのね、といってモイラは人差し指を立てながら、
「パーティにもいろいろあってね」と、教師のようなそぶりで説明をはじめた。
「前に行ったところみたいに自由な場所もあれば、怖い連中がドラッグを売るためにパーティを開くケースもある。そんな場所は要注意。勝手に商売なんかしていると、身包みを剥がされて、ボコられて放り出されちゃうよ」
「今夜のパーティは、どっち?」
モイラはケタケタと笑いながら、
「ダメなほう」
と、言った。
「笑えないよ」ムネチカはうなだれた。
入り口には、空港でよく見かけるタイプの金属探知機があった。
雰囲気が重々しい。バウンサー(警備員とういうか、用心棒)の数も多い。
中へ進むと、バズとキーモが先に来ていた。
モイラは二人の頬に自分の頬を寄せて挨拶した。
「今日こそ合法的に楽しむんだね」ムネチカの問いに、
「そんなわけないじゃん、バーカ」とモイラが振り返る。
各々にエクスタシーが入ったビニールのパッケージが手渡された。
「おかわり自由だからね」モイラはウィンクし、
「いくよ」というなり、メインフロアへ向かって歩き出した。




