アフターパーティ
モイラとバズとムネチカが帰路に着いたのは、金曜日の夜から四十八時間以上経った、日曜の夜だった。
廃倉庫の入り口には、まだまばらに客たちが残っていたが、キーモとエイプリルの姿はもうなかった。
「いやー派手な誕生日会だったねー」モイラが伸びをする。
「こんなに長いだなんて!二日だよ、ふ・つ・か!」歩きながら、ムネチカは耳に指を突っ込み揺すってみる。
「あー」と声を出してみるが、いつものようには響かない。完全に鼓膜がバカになっていた。
ムネチカにとって初めての事だらけの週末。
いきなりドラッグディーラーの住処へ連れて行かれ、廃倉庫でのスクアットパーティへゆき、爆音で鳴るテクノミュージックのただなかで性別不明の少年にファーストキスを奪われ、違法なブツをさばき、最後は床で寝てしまった。
途中、目を覚ますと、かたわらにモイラの姿があった。つぎに目を覚ますと、今度はとなりにバズが座っていた。
寝心地は最悪だったけれど、守られている気がして、なんだか嬉しかった。
ともあれ、疲れた足をなんとか動かし、バス停へ向かいながら歩いていると、バズからマリファナの入った巻き煙草がまわってきた。
かるく吸い込んでみる。
煙の塊が肺を圧迫して、強烈かつ独特な植物の匂いが口の中に広がる。ムネチカは思い切り咳き込んだ。
「なにー、はじめてなの?」弾けるように二人が笑った。
「あ」モイラが間の抜けた声を出して立ち止まった。
バズとムネチカもすぐに足をとめた。
オールドストリートの通りに立つ道路標識に、ブランコがぶら下がっているのだ。
「なにこれー」モイラがはしゃぎ声を上げて飛び乗った。
「だれだ、こんなとこにブランコつけたやつは」
バズがいぶかしむ。
「ははははー、なにこれー、やばー」モイラは大きく揺れながら、気でも違ったかのように笑い続けている。
「ムービー撮ってー、ねー、撮ってー、ぎゃはー」
バズが面倒くさそうにスマホを向ける。
「ムネチカも乗りなよー」
最初は恥ずかしそうにしていたムネチカだが、あまりにも楽しそうなモイラを見て、自分も乗ってみ
たくなった。
「ぼ、ぼくも乗りたい」
いったい誰が備えつけたのか、都会の一角にポツンと吊るされたブランコに乗り、ムネチカは思い切り勢いをつけて揺れ始めた。
「気持ちいいでしょー!」地上からモイラがさけぶ。
(いや、気持ち悪い)
次の瞬間、ムネチカは宙に向かって、派手に嘔吐した。
慣れないビールと、初体験のドラッグ。そこへ、さっきのマリファナがトドメを刺したのだ。
バズはスマホを構えたまま「きったねー」と後ろへ飛び下がった。
「ばっかじゃん」モイラは歩道にへたり込んで笑った。




