表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一角獣はアセクシュアル  作者: Locoxxxx
10/23

屋上

冬のロンドンの日の出は遅い。


フロアでひとしきり踊ったモイラとムネチカは、火照ったからだを冷ましに、倉庫の屋上にのぼった。

濃い紫色の空が、遥か彼方まで続き、微かなオレンジ色へと変化していく。

吐く息が白い。


「クソ綺麗だけど、やっぱ寒いね」互いに顔を見合わせて微笑んだ。


大空を見上げて、ムネチカは密かに高揚していた。

この感覚がどこから来るものなのか、考えてみる。


ドラッグのせいかと思ったが、それだけではない気がする。

生まれて初めて法律を破ったこと。

全身が震えるくらいのボリュームで、音楽を感じたこと。

今まで知らなかった種類の人たちに出逢ったこと。

今、この瞬間、素晴らしい空色と異国の空気を感じていること。

そして、初めてのキス。


そのどれもが当てはまっている気がする。


「楽しんだ?」モイラが尋ねた。


ムネチカは小さく笑った。

「なんかむちゃくちゃなカンジ。トイレがないなんて。びっくりだよ」


「スクアットパーティだからね。ここなんてまだ綺麗な方だよ」


モイラはポケットから煙草を取り出し、火をつけた。

頬をくぼませ、煙を吸い込むと、朝焼けに向かって、ふうっと吹きかけた。

ムネチカはモイラの横顔に尋ねた。


「そういえば、さっきの女の人だれ?青い髪の、怖い人」


モイラは肩をすくめて呆れたように、


「あー。エイプリルのことね。あたしのストーカー。いっつもああやって難癖つけてくるんだ」

と、煙を吐き出した。


「ストーカーってほんとにいるんだ……なんかすっごいやなカンジだったね」


「むかしはあんな子じゃなかったんだけどなぁ」モイラは遠くを見るような目をした。


「友達だったの?」


「うーん、ちょっと違うかな」といって、モイラはボア付きのフードで頭を覆った。



くわえ煙草のまま、モイラがウェストポーチを膝に乗っけてジッパーを開いた。

そこには、今夜のアガリのすべてが詰まっている。ざっと六百ポンドはありそうだ。


「すごいね」ムネチカは目を丸くした。


「これで、今週の家賃は払わなくて済む。ムネチカ、あとでちゃんと分け前はあげるからね」モイラはゴロリと仰向けに寝転がった。


「もらっていいの?」


「だってうちら友達じゃん」モイラの栗色の前髪が風にそよいでいる。


ぼくたちって友達なのかな、そう訊こうとして、ムネチカは口をつぐんだ。


(友達ってなんなんだろう)


ムネチカは赤々とした日の出に目を細めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ