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悪役令嬢はもう、こりごり!

※ちょっと変態出てきます。

 悪役令嬢と謳われた絶世の美女ラフールは、数々の悪行及び皇太子の恋人の殺人未遂の罪でかつての婚約者であるアランドモン皇太子により斬首の刑が決定となった。


 冷たい石造りの藁だけがひかれたその部屋で、斬首が執行されるのを待っていたラフールは嘆く。

 「なぜ私がこのような仕打ちを受けなければいけないのですか。私はただ、貴方を心からお慕いしただけじゃない! それに、私と言う婚約者がありながら国も、自身のお立場もわきまえずどこの馬の骨だかわからない女と浮気をしたくせに私だけを悪とみるあなたが憎い」


 しかし、そのラフールの心からの嘆きを聞いても、かつての婚約者であるアランドモン皇太子はラフールに、見苦しく汚らわしいと切り捨て牢を後にした。


 (ああ、アランドモン様が憎い。もし、生まれ変われるのなら、二度と貴方になど恋はしないわ)


 二度と貴方になどであうものですか。

 あなたなどもう、大っ嫌いだわ。


 そう心に刻み、ラフールは断頭台の露となった。






 

 ……なった、はずだった。


 それなのに、なぜ?


 小さくなった手足を見てラフールは青い海のようにきらめく瞳をこれでもかと見開いた。


 (……な、なぜ?)

 ゆっくり、恐る恐るベッドから出て鏡をのぞき込むとラフールは更に驚く。


 自分は立派な女性だったはずだ。

 

 腰まで届く長いプラチナブロンドの髪をたなびかせ、放漫なバストをこれでもかと強調し城で一番の絶世の美女と謳われたラフールはそこにはいない。

 鏡に映っているのは、肩までのプラチナブロンドの髪が四方八方に飛び散らかり、胸はこれから発達するのか、お椀がひっくり返っただけの厚みしかないただの美少女が映っていただけであった。


 鏡を見て動けずにいるラフールに使用人であるローナが声を掛けてきた。

 「おはようございますお嬢様。今日はいよいよ婚約を申し込みにアランドモン皇太子殿下が来られますね」

 

 うきうきした様子で語るローナにラフールは口をぽかんと開けて間の抜けた声を出してしまった。

 「ろ、ローナ。今なんて?」

 「ふふふ。お嬢様は昨日から皇太子殿下との婚約の日だと何回も聞きたがりますね」

 婚約ですよ、こ・ん・や・くと語尾にハートでも付くんじゃないかと言うほど浮かれてローナは告げてくる。


 「な、な、な……」

 

 なんですってええええ!とその言葉に遅れてラフールは叫び、気絶した。



 「ら……ーる、らふーる!」

 いったいどのくらい気絶していたのだろうか、ラフールはベッドでねかされていた。そして、ラフールがぼんやり目を開けるとそこにはかつての幼い頃のアランドモン皇太子の姿があった。


 「ひい!」

 見たくもない顔が自分をのぞき込むように近づいていて、思わずのけぞってしまったラフールを不思議そうな顔をして皇太子がさらにのぞき込む。

 「ラフール嬢?」

 その顔は幾分か幼くなってはいるものの忘れる事ができない憎い顔。


 「あ、あ、アランドモン皇太子殿下! も、も、申し訳ございませんが、あなたは、貴方はっ!」

 

 私を殺した憎い男ですよね!


 そう叫ぶつもりだったのに、いざ本人が目の前にいると、斬首された恐怖で体は拒絶を始める。

 のけぞりつつもラフールは美しい顔の眉間に皺を刻みながら皇太子に何とか自分の意見を述べようと声を絞り出すが、あの時の牢でラフールを汚らわしいと言い放ち立ち去った顔が思い出され、恐怖でうまくこえが出せなくなってしまった。


 (もう二度と皇太子に出会うつもりなどなかったのに!)

 

 「ラフール嬢、落ち着いて。僕だよ、アランドモンだ」


 アランドモンがラフールにそっと手を差し出す。

 「っ! 触らないで!」

 その手がラフールに触れる前に、自然と体がアランドモンを拒絶する。


 (誰があなたなんかに身体を触らせるものですか! 私を見捨てて、殺したくせに!)

 

 二度と、二度と私を裏切り、殺させやしないんだから!

 

 悪役令嬢とののしられ、悪評をながされ、愛を得る事も出来ず、最後は斬首なんてもうこりごりだ。

 ラフールはアランドモンを拒絶したそのままの勢いでベッドから飛び出るとそのまま逃げ出した。


 二度と、二度と破滅の道しかない悪役令嬢にはならない。

 間違っても自分を殺した男にはもう恋心など抱きはしない。


 


  

 そう思って、ベッドから飛び出て逃げ出し早5年。

 ラフールは冷たい鉄格子をそっと指でつついた。


 なぜ……なぜこうなったのかしら?

 

 あんなにも必死で逃げたのに、あんなにも彼を拒絶したのに。

 深いため息でラフールの眉間の皺は濃くなる。


 

 「おや、ララ? 悲しそうな顔をしてどうしたの? 僕が傍に居なくて寂しいの?」

 鉄格子の外側にいる男はそういうと、ガチャリと鉄格子の鍵を開け牢の中に入ってきた。


 「……別に、寂しくないですし、後生ですから入ってこないで。近寄らないで。出て行って」

 「相変わらず僕の可愛いララはつれないね。だけどそこが躾がいがありそうで、可愛い」


 (変態がいる……)

 変態が国を治めている。この国はもう終わったもどうぜんだと、ラフールはため息をつきながらそばに寄ってくる変態……もとい、成人したアランドモンを蹴り飛ばした。


 


 逃げ出してからの5年間、前世では見捨てられ処刑されたのに今世ではなぜか追いかけられ続けてしまった。そして5年目にして無念ながらアランドモンにつかまってしまったのだった。

 そして入れられたのは再び牢獄。


 ただし、前世のような石畳に藁だけしいてあるような粗末な牢ではなく、なぜかアランドモンの寝室に特注で作られた鳥かごのような牢だ。その中には柔らかなクッションやベッドまでが収められ、まるで宝物のような丁寧な扱いを受けていた。


 そして以前にはなかったアランドモンからの執着した愛情までもがそこに押し込められている。


 (私の人生ってやり直したところでさんざんなのね)

 ラフールはアランドモンから牢の鍵を奪い、鳥かごの牢からけり出して保身のために中から鍵をかけた。


 「ああ、愛しいララ。君はいつになったら僕になつくのかな」


 けり出されてもなおうっとりとアランドモンがラフールを見つめてくるせいで、ラフールはここ最近頭痛が止まらない。


 「貴方なんて好きになんてならないわよ。それよりいい加減あきらめなさい変態」


 ああ、なんで前世で私は悪役令嬢なんてしてしまったのだろう。

 これはそのバツなのね。

 バツなのよね。


 ラフールの深い憂を帯びたため息は止まらない。


 もう十分悪役の禊ぎ(?)は受けたはずだ。

 もう二度と悪役になどならないから、来世は今度こそアランドモンがいない人生で普通に過ごさせてほしい。


 悪役令嬢はもうこりごりだ!

 


 ラフールはまた深い憂を帯びたため息をついた。

 

ただ変態チックな王子を書きたかっただけ。

すいません、石は、石は投げないで!

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