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ヒロインに転生したのに悪役令嬢にジョブチェンジで断罪されて悪役に執着されてるんですが、何故?

「ミシティア!お前のような下賎な女は見たことがない!金輪際俺達に近づく事は許さない!!恥を知れ!」





 広々とした白亜の大聖堂に普段は誰もが聞き惚れる程の低い美声が響き渡れば、ミシティアと呼ばれた亜麻色の髪の乙女は眉間に皺を寄せ口角をひきつらせる。





(解せぬ!否、解せる訳がない!)


 何せ恥じることなどしていない。


 ましてや悪いこともだ。








「ふん!己の行いが恥じすぎて口が聞けぬようになったか」


「早々にその身を恥じてこの学園から立ち去れば良かったものを」


「所詮下賎なものは下賎なものだ。そんな者が我らと同じ立場になろうなど汚らわしい」





 それなのにミティシアが口角をひきつらせても何とか淑女の体裁を保とうと耐えていたのに、最初に叫んだ美声の持ち主の回りにいた金魚の糞ども……もとい、側近達は口々に罵詈雑言ともとれる言葉を投げつけてきた。





(んだと?)





 最後の汚らわしいの一言を皮切りにミティシアの中でプチンと何かがはじけ――





「上等じゃ、このアホンダラどもがぁぁ!」





 気づけば白亜の大聖堂に今度は亜麻色の髪の少女の咆哮が響きわたっていた。























 ☆★☆★☆























「ミティシア・ロウリー嬢はいつも俺の想像の斜め上をいくね。まさか国外追放になるまでこの国の王子や側近達を罵るなんて!見ごたえあったね。この国に来て良かったよ」





 何故か楽しそうにミティシアの髪をくるくると遊ぶ手を、ミティシアはペシンと叩き落としため息をついた。





「別に貴方の想像なんかどうでもいいし、見ごたえがあったとかやめて。私は私の正しいと思った事をしてきたまでです」





 ふん!と鼻息荒く流れる景色にミティシアが視線を戻せば、隣でクスクスと笑う声が漏れはじめた。





(本当に……まあ、やり過ぎた感はいなめないけれど)


 まさか切れすぎた結果が国外追放とは……。


 おかげで、ミティシアは実家にまで追い出されてしまった。





 それでも、私は間違ってない、はず?


 正しいと思うことをしてきただけなのに何故こうなったのかしら?





 隣の笑い声を聞かないようにミティシアは耳を塞ぐとそっと目をとじた。























 自分が流行りの乙女ゲーム“この愛を得るために”のヒロイン、ミティシア・ライル男爵令嬢だと気づいたのはミティシアが15歳の時だった。


 白亜の大聖堂で行われた貴族の子供が通う学院の入学式で、挨拶のために登壇した黄金に輝く彼を見たときに前世の記憶が一気に脳内を流ていったのだ。





(まじか!まじか!まじか!)





 そして脳内の記憶にミティシアは思わず真っ青になり、絶望したのだった。














「だけど、いいの?ミティシア?君はこの世界のヒロインなんでしょう?」





 回想している間にいつの間にか隣の笑いは収まったらしい。


 再びミティシアの髪を彼はくるくるとその男らしい手で遊びはじめていた。





「ちょっと、乙女の髪触りすぎですよ。そんなので私はいちいちトキメかないからね」





 触ってくれるなと再びミティシアは眉間に皺を寄せながら睨み付けペシンとその手を叩き落とせば、隣の男はまた笑い出す。


 一体何がそんなに楽しいのだろうか?





「君って本当に面白い子だよね。普通さヒロインって取り敢えず何でもキュンキュンときめいちゃうんじゃない?それにこんなに悪役と仲良くしないし?」





 また彼にとられた髪の一房にチュッとキスをおとされ、思わずうぇっと小さく嗚咽をはく。





「…気持ち悪いことしないでよ。それに取り敢えずキュンキュンって、私はどんだけ阿婆擦れよ。あと別にあなたとも仲良くしてる訳じゃないわよ。貴方が勝手に近くにいるだけでしょう?それに!もうヒロインじゃないから」





 そう言って髪を一房とりかえすと、流れる景色に視線を戻した。











(……ほんと)


 やり過ぎたし、やり過ぎよ。








 ミティシアはそっとため息を溢した。




















 "この愛を得るために"





 このゲームのヒロイン、ミティシア・ライルの母は男爵の愛人だった。その為ミティシアを妊娠すると正妻から母は疎まれ屋敷を追い出されるのだ。


 その後隠れてミティシアを平民として生んだ母は、数年後流行り病でなくなる。時同じくして流行り病で男爵婦人も亡くなり子供に恵まれ無かった、男爵はミティシアを探しだし自分の子として引き取るというヒロインあるある設定で構築されていた。





 そして貴族の子となったがゆえに学園に行き婚約者のいる王子と出会い恋に落ち、卒業と共に結婚してハッピーエンドを迎える。勿論、元婚約者は悪役令嬢として王子を憎む悪役と手を組み、王子とミティシアの障害になるのが大まかなゲームの粗筋だ。





 しかし、そのゲーム設定の内容がミティシアは気にくわなかった。





(これって浮気の末に剥奪しちゃう形よね?ないわー)





 ない。


 なしよりのなしよ。


 まず第一に婚約者が居る男に近付くヒロインがありえない。


 そりゃ、相手の令嬢が怒るはずだ。


 しかも、未来の旦那が浮気して嫉妬しただけなのに悪役と呼ばせる製作会社も流行もミティシアはなんとなく受け入れられなかった。挙げ句にたかだか恋の縺れで国外追放とか、処分が大袈裟すぎる。





 そして、さらに気にくわないのがヒロインのみならず王子を狙い悪役と手を組む婚約者だ。


 そもそもその悪役男だし。


 結局何だかんだで悪役令嬢は悪役の相方にまで色気を振り撒き取り入る。


 それってこれまたこちらも浮気じゃない?嫉妬する程婚約者を愛していたのではないのと思わずおもってしまっていた。





(それにさぁ……)





 かりにヒロインと王子がくっついていたとして、いきなりそのまま将来結婚とか非現実的すぎるでしょ。


 まだ18で結婚決めちゃう?


 嫌よ。無理。


 しかも、平民として生きて来たのにいきなり貴族になった挙げ句王妃候補とか……ありえない。というか、パット出の平民が王妃など末恐ろしい。





 それに、毎日ゲームのように愛を囁かれ、他の男と話すだけで嫉妬などは正直現実世界では勘弁願いたい。アレは漫画や小説などだからトキメクのだ。





(それに……浮気なんて良いこと何にもないし)





 前世のミティシアは日本と言う国で、10年も付き合った男に浮気されていた。そして、あっさり鞍替えされた挙げ句の果てに捨てられ、気付けばミティシアとしてこの世界にいたのだ。


 だからミティシアとなった今でもなんとなく鞍替えも浮気も許せかった。


 聞くだけでも正直ムカつく。








 そんなこんなでミティシアは王子がゲーム通りに近付いてきた時は、王子を突き放すようにただ毎日のように正論だけをのべていた。婚約者をきちんとみろ、一国の主になる自覚が有るのかと。


 お陰で最初は他のものと毛色の違うミティシアに対して「私のことをそこまで思ってくれている可愛い女性」と勝手にゲーム通り勘違いしてアプローチを繰り返してきた王子は、次第にミティシアを生意気な鬱陶しい女として見るようになった。そして自分から近付いて来たくせに次第に正論だけを繰り返すミティシアに嫌気がさし遂には避けるようになってきたのだ。





 全くもって身勝手この上ない。





 けれどそんなことを気にせずミティシアは同時に悪役令嬢に対しても同じ事をした。


 お陰で悪役令嬢になるはずだった彼女はわがままを言わなくなった。勿論ミティシアに嫌がらせもしてこなかった。


 むしろミティシアを見て震えて固まり、泣き出していたように見えていたが。


 多分…それは気のせいだろう。





 勿論ミティシアは悪役令嬢だけでなく王子の取り巻きまでもがゲームの通り近付いてきても、正論をぶちまかし続ける事も忘れてはいなかった。





 そもそもこのゲームにそんなに思い入れがなかったから。


 ただ、ミティシアになる直前にたまたま流行りに流されゲームプレイして、クリアしていただけだ。


 結果、ミティシアは誰にも惚れられる事なく、悪役令嬢は王子と確執を生むことがなかったため物語は見事な大団円で終わるはずだった。


 だったのに。





 まぁ、要はやり過ぎたのだ。


 いつしかミティシアは彼らに反感をもたらし嫌がらせをする悪役と捉えられたようだった。





 思い出すのは先程の白亜の大聖堂での断罪。





 ミティシアを見て瞳を潤ませ震える悪役令嬢。


 それを庇うようにミティシアを断罪する王子や金魚の糞ども。





 そして散々な言われように切れるミティシアの暴言の数々。


























「まぁ、言いすぎていた気はするけど。別に虐めてた訳でも嫌がらせしていたわけでもなかったのに。だいたいなんで、私の肩書きが悪役令嬢になってるのよ」





 流石ゲーム世界への転生。





 ミティシアには転生アルアルなステータス画面を開くオプションもついていた。それを隣の男を気にせず空間で開けば、そこにはしっかりと“元ヒロイン”“現悪役令嬢”と書き込まれている。





「いつの間にジョブチェンジしてんのよ。っか、元ヒロイン、現悪役令嬢とか」


 扱いが雑だ。





 挙げ句に――





 チラリと横に居る人間を見て、ミティシアは思わずシラけてしまった。





「何やってんのよアルファ」





 先程取り返した髪の一房が何故かまた彼の指先と戯れている。


 それに、先程よりもさらに距離が近い気がするのは気のせいだろうか?





「ん?ミティシアの髪っていい匂いするし、フワフワだし」


 ついね、っとペロッと舌を出すアルファにミティシアは呆れ顔を隠すのをやめた。





「つい、じゃないわよ!だいたいね、貴方も貴方で何なのよ!」





 勿論アルファもミティシアの例外から外れてはいなかった。


 なぜなら彼は本来隣国の王子に対して負の感情をむき出しにして悪役令嬢と手を組みラスボスになる予定だった隣国の公爵令息であり悪役張本人だから。





 アルファ自体ラスボスを張れる悪役とあって頭脳明晰、文武両道。まさにハイスペック持ちで、さらに極上なイケメンである。


 宵闇のような深い蒼髪はサラサラとながれ、キリリとつり上がった暗褐色の瞳は憂鬱気に、それでいて人を引き付ける宝石のようだ。





 だがしかし、そんなことはミティシアには関係ない。


 勿論同じように対応していたはずだ。ただ、他のキャラと違ってアルファに関しては何時までも恨み辛み持ってるのは人生損している、前を向けと少し励ましや支えが入っていたのは否めない。





 しかしそれが、アルファの何かを刺激したらしい。





 アルファは無駄にミティシアに近付くようになった。そして断罪され国外追放となった今、彼はミティシアをなぜか一緒に自国に連れ帰ろうとしているのだ。

















「何がなんなの?」





 からかうようにミティシアの顔を覗き込むアルファは楽しそうだ。その様子がミティシアの眉間の間に皺をつくる。





「何がって。だって、貴方は本来ラスボスになる悪役令息だってはずじゃない。私をも陥れようとする敵よ敵。それがなんで私を自国に連れていこうとしてるの?」


 しかもなんで隣でニコニコしてんのよ。





「あー。そう言っていたね。でも、ミーシャが運命を変えてくれたお陰で、悪役じゃないらしいし。ミーシャは国外追放でしょ?俺の国に行けばちゃんと国外追放になってるからいいじゃん。本当にあの王子には感謝しか今はしてないよ?」


「感謝?」


「そう、本当にミーシャを手放してくれて感謝」








 後半言葉の呟きとともに突然距離が近くなったとミティシアが慌てていると、首筋にヌルリと生暖かな感触が這った。





「やっ!あ、ん」





 その感触にさすがに驚き思わずミティシアが小さく声を溢せば、アルファは暗褐色の瞳をギラリとさせ細める。





「ん、ミティシア。そんなに可愛い声を出しちゃうと違う意味で俺は君を陥れる悪役になりたくなるね」


 最も、何をしても俺に陥れたいのはかわらないけどねと舌をペロリと出している様は流石に極上なイケメン。ゲームに思い入れのないミティシアでも思わず少しだけドキリとしてしまった。





 なぜ?


 どうしてこうなってしまったの?


 これではまるで、アルファが私をまるで狙ってるみたいな……





「わ、私は悪役になってても国外追放されたからって貴方と手を組んで復讐とかし、しないし」





 気持ちを落ち着けたくて、ギラリとした瞳から目をそらし身体の距離をとろうとすれば、アルファの手はいつの間にかミティシアの腰に回っていてがっちり押さえられてしまっていた。





「復讐?だからそんなこと、もうどうでもいいよ?あ、でもミティシアが俺らの国でめちゃくちゃに愛されて幸せになれば、最初にミティシアに目を付けたアイツらにとって復讐になるかな?」





 クスクスと笑うアルファはどこまでも楽しそうだ。





「うん、そうだ。そんな復讐ならしてもいいね。ねぇミティシア。悪役はラスボスの悪役と手を組むんだよね?」





 ニヤリと笑うアルファはチロリと真っ赤な舌をだし唇を嘗める。その仕草がやけに色っぽく感じて、ゾクリとしてしまう。





「は?な、何いっているの?わ、私は悪役じゃないし」


「さっき現悪役令嬢だっていってたよね?元ヒロインさん?」





 ヒイイイィ





 どうして、どうして、こうなった?


 なぜ?





 ヒロインに転生したのに悪役にジョブチェンジで断罪されて悪役に執着されているのは何故?





 ミティシアの叫びは馬車の中で響き渡っていた。


ムーンライト用に只今編集中。

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