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転生の果てに

メリバ物です。

ドロドロ要注意。

一度目の人生では、彼を恨んで終わった。


 「貴様! 私に逆らうのか! この恩知らず! 愚図め!」


 そういって私のご主人である貴方は毎日のように私を罵り、蔑んだ。

 そして毎日毎日私を棒や鞭、時にはその拳で私を殴った。


 「言う事を聞け! 早く全てを私に捧げろ」


 そういって彼は私に暴力をふるい続け、毎晩のように無理やり体をこじ開けた。

 

 既にこの身は買われた身。


 今更私のものに、と言われても私の所有権は彼が握っている。

 

 彼が何を言いたいのか分からなかった。


 私はしがない愛玩用に売られていた薄汚い奴隷だったし、彼は偉そうな貴族だったから仕方がなかったと言えばそこまでなのだが。


 そして彼に毎日のように殴られ、蹴られ、汚され、私は若くして死んだ。


 むしろそんなに罵り、見るのも嫌そうな顔をするなら私を買わなければよかったのに。

 いつもそう考えていたが、結局彼はこと切れる最後まで私を傍から離さなかった。




 二度目の人生では、なぜか私は前世の記憶があった。

 そしてさらになぜか一度目に私のご主人として生きていた彼に出会った。


 なぜ彼だと分かったかと言うと、前世と彼の容姿が同じだったからだ。


 けれど彼は容姿だけを前世から引き継いだだけのようで、私の事は覚えていなかった。


 そんな、彼と私の立場は今度は逆だった。

 まるで神が私に恨みを晴らすように導いてくれたようで、私は歓喜に身を包んだ。


 私は貴族のお嬢様、彼は身分の低い使用人。

 

 私は、ここぞとばかりに彼を痛めた。

 愚図、役立たずと彼を罵り、扇子でたたき、靴で頭を踏みつけた。


 前世の事など分からないだろう彼は、前世と同じその顔を歪ませ、海よりも青い瞳で私を睨んでいた。

 その顔を見るたびに私は訳が分からず、苛立った。


 前世の彼と同じ事をして、同じような人間になっている事にきずくと胸糞悪くなってきて次第に私は彼を痛める事をやめた。


 私は彼とは違う。



 けれど彼はなぜか私から離れることはなかった。


 私の瞳には彼を映したくなくて何度も何度も彼を解雇しようとしたのに、不思議と彼はその都度許され私のそばにいた。


 当然彼のせいで、私は貴族でありながらも誰からもめとられる事無く、流行り病によってやはり若くして人生を終えてしまった。

 




 三度目の人生では日本と言う世界で、彼は私の兄だった。


 やはり彼はいつもと同じ容姿で、私の事は覚えてはいなかった。


 今度は私は彼と極力距離を置くようにしていた。

 しかし、家族の絆と言うものが邪魔をしてなかなか兄である彼と距離を離すことができなかった。

 そしていくら関係性や立場が変わっても前の記憶が心を重くさせた。



 兄と妹。


 兄妹でも、彼と私の容姿も性格も何一つ似てはいなかった。

 彼とだけは、何があっても、どこも似たくなかったので良かった。



 そして、日本では使用人も奴隷の文化もない。皆平等だ。


 だから殴られる事も殴る事もなかった。

 そこは救いだった。


 



 しかし、なぜ彼はいつも私の人生に必ずいて、なぜいつも同じ容姿なのだろう。

 そしてなぜいつも私だけが彼を覚えていて、彼は私を覚えていないのだろう。



 

 次の人生があるならば、是非彼とは会いたくない。

 見たくもないし、彼の事を考えるのも嫌だった。


 彼は高校を卒業すると同時に家を出た。

 すごく、すごくありがたかった。

 そして心が晴れやかになった。

 

 やっと私は幸せに生きられる。


 彼が家にいると私は息が詰まった。

 

 そして、何よりも恋ができなかった。

 私に気になる人ができたり、好きな人ができると必ず彼はどこからともなく現れて私の恋の邪魔をした。


 

 本当にうっとおしかった。


 だから、彼が家を出てすぐ私は高校の先輩にデートに誘われて浮かれていた。


 兄という、邪魔者はいない。

 今度こそ私は誰かと添い遂げ幸せに生きるんだ。



 そう思っていたのに。


 先輩と初めて行った遊園地になぜか彼はいて、怖い顔をした彼に先輩から引きはがされ私は彼のアパートにつれこまれた。


 「いい加減にしてよ! なんであんたに私の人生いつもいつもいつも台無しにされなきゃなんないの。いい加減うざい。消えてよ! 貴方なんか覚えていたくない!」


 泣きながら彼を必死にたたけば、彼はいつもの海のような青い瞳を濃くし力ずくで私にキスをしてきた。


 「っつ! やめて! 今は兄妹でしょう!」


 私は暴れたが、男と女の力の差は歴然だった。


 そして、私の抵抗はむなしく終わった。


 闇夜よりも黒い髪を湿らせ、海のような青い瞳に熱を持ち彼は私を何度も何度も抱いた。


 「ごめん。兄妹には思えない。ずっと、ずっと好きだったんだ。どうすればお前は俺のものになる?」


 誰にも渡したくないんだ。



 歪んだ彼の愛は私を縛り続け、結局私はよく分からないまま、また彼に振り回された。



 そして事情を知り怒り狂った両親が私達を離そうとして、引っ張られた先の道路で車にひかれ三度目の若くしての人生を終えた。




 そして今、四度目の人生が始まっていた。


 だけど、今度は彼の顔を見た瞬間に私の今までの人生の記憶がぼやけだしてきてはっきり思い出せなくなってきてしまっていた。


 ただ、私は何度か転生を繰り返し、その都度彼に出会っていた事しか今は思い出せない。


 「……姫? どうしました? どこかお具合で悪いのですか」


 心配そうに彼は海のような青い瞳を私に向けた。


 「え? ううん。なんでもないです。すみません、私少しぼーっとしてしまって。わたし、何度も何度も生まれ変わる度に、あなたにお会いしていたような気がします」


 ただ、もうどんな風に出会っていたかは思い出せない。


 しかし、そう言えば彼は青い瞳を揺らしクスクスと笑う。

 「そうですか。じゃあ僕らはずっと一緒に居る運命なのかもしれませんね」

 そういってそっとエスコートするように彼は私に向かって柔らかな笑みと、手を差し伸べる。


 「そう……ですかね」


 なんとなく認めたくないような気がして、思わず言葉を濁してしまった。


 彼は国で一番の魔導士であり、私の婚約者。

 私はこの国の姫。


 「そうですよ。僕らはどんな形であれ、傍にいる運命なんです。ただ……」

 いやいいです。


 彼はそう言うと私の手を取り一歩踏み出した。


 今日から彼の婚約者ではなく、妻となるべくために。


 そこに愛があるのかと問われると、若干首をひねりたくなってしまうのはもしかしたら前世と何か関係しているのかもしれない。 


 

 そんなことを考えていたら、ふいに頭を優しくなでられ、頭がかすかにフワフワしてしまう。

 もはや私に前世があったかどうかすら思い出せなくなってきた。

 マリッジブルーで何か悪夢でも見ていたのかも知れない。


 「せっかく何度もやり直して貴方の全てを手に入れられるんだ。過去の記憶は邪魔ですよね」

 彼が私に対して小さくつぶやき、いびつに口角を歪ませた事に私は気付かなかった。



 ただ、もはや何も思い出せない私は白く純白なドレスに身を包み、祝福の鐘の音が響く教会の道を彼と歩んでいた。 

単独で書いたけどこちらに移植してみました。

メリバです。

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