盗賊と立場③
「ご存知ないようなので私からお教えさせていただきます。ユーフォビア家の特徴としてその血を引くものは皆同じく印象的な蒼色に黄金を散りばめた宝石のような瞳をしているのですよ。」
その言葉に私はハッとする。
“宝石のような瞳”
それはセイリオスの王子の設定上でもあった、主人公とその家族のみが持つ独特な瞳のことを指していた。
この国で一つしかない公爵家。
そんな家の娘が護衛も付けず街に来ているだなんて、格好の的だったのだろう。
(考えが浅はかだった、乙女ゲームの世界だからって油断した。ああ、ログアウト方法さえ分かればリセットしてやり直すのに·····!)
私が頭を抱えているとコロコロ変わる百面相が楽しかったのか男たちが笑い出す。
「それにそんな高そうな服や首飾りをしてるんだ。髪や手を見ただけでも金持ちの家の子です、攫ってくださいって言ってるようなもんだ!」
以下にもな賊の下っ端が野次を飛ばす。
その言葉に私は自分の姿を見つめ直すも、周りの男達はボロボロの服にお世辞にも綺麗とは言い難い姿をしていたが、私はよく手入れされた髪に瞳と同じ色調の紺地に金の刺繍が入った膝丈ワンピース。それに合わせるように同じデザインのハットを被っていた。
この時代は貧富の差が激しかったのだろう。
現代日本で育った私にはその違いを感じるどころか考えることにすら至らなかった。
(こんなの、ゲームでは出てなかったのに·····)
私が思考を巡らせる間にも男達はジリジリとその距離を詰めてくる。
それから逃れるように1歩、また1歩と後ずさるも後方から突然衝撃を受け、私は意識を手放すのだった。