盗賊と立場①
「いいか、金になりそうなものは髪の毛から爪まで全て奪っていけ。」
「お頭、それだとこいつの身の安全は保証するって条件で要求してる身代金はどうするんです?」
「そんなもん、金だけ貰って返さねえに決まってんだろ。」
「さすがお頭!悪の中の悪ですね!」
目の前でそんな物騒な話と三文芝居のような高笑いが繰り広げられる中私は何故こうなったのかと天を仰いだ。
あれはマキナと別れてすぐの市場でのこと...
✱✱✱✱✱
「お嬢さん、赤毛で茶色い目のメイド服の女性は貴方のお連れですか?」
飲み物を調達した帰り道不意にそんな声をかけられた。
声をかけてきたのは爽やかな中年男性といったイメージのロマンスグレーが特徴の渋いおじ様だった。
(わあ...こうゆうのをイケオジって言うんだろうな...おじさんまでイケメンなんて流石乙女ゲーム...うちのお父さんなんてお腹は出てるし頭だって禿げかけてきてるのに...)
なんて呑気なことを考えていると再びその男性から「お嬢さん?」と声をかけられ我に返る。
先程男性が言っていた女性。
その特徴はそのままマキナのことだった。
私は「あ、は、はい!そうです。」と慌てて応えると
「マキナが何か?」
と付け加えた。
その言葉を聞くと男性は「実は先程その女性が倒れられてね。私の家で保護しているんだ。」と私の横に回り込むと「さあ」と言いながらエスコートでもするようにスルッと腰に手を伸ばし私の返答も聞かずに歩き出した。
「え、そうなんですか?それはご迷惑をお掛けしました。」
私はそれだけ言うと男性の腕から抜け出し、少しだけ離れた所を歩き出す。
男性はそれを確認すると「こちらです」とまた歩き始めた。
(現代人にエスコートなんて耐えられない!!!)
私は今にも湯気が立ち上りそうな頭を必死に降るのだった。