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ああよくあるやつね、と少女は思った

「ごっめーん間違えて殺しちゃった! 許して!」

「……はい?」


 目の前に突然現れた外国人女性(翼と輪っかつき)にそんなことを言われたら、誰でも同じような反応をするだろう。

 とある少女も例外ではなく、え頭のネジ飛んでんの? とでも言いたげな顔でその人物を眺めた。

 女子学生だ――制服を着ているのでそれがわかる。小柄だが、薄く化粧をした顔や短めのスカート丈からして高校生。染めたらしい茶髪はショートボブで内側に巻いている。


「……あのう、何ですか?」

「だから、まだ死ぬはずじゃなかった貴女を、私の手違いで殺しちゃいました。ごめんぴ」

「……」


 少女はゆっくりと辺りを見た。

 吹き飛んだ安全ガードと、色々なもので斑になった歩道と、妙な角度で人の山に突っ込んだ丸めで静かで暴走しがちな車と、そのそばでちょっと芸術的に――系統で言うとキュビスムみたいな感じで――折れ曲がって倒れている少女自身の体があった。鮮血で染め上げたゲルニカみたい。

 少女はその三十センチほど上に浮かんでいる形だ。


「いやー、死ぬのは運転手だけで、貴女は大怪我で済ませる予定だったんだけどね? ほらまだ若いし。でも調整ミスっちゃった」

 少女はゆっくりと顔を外国人女性の方に戻した。真顔だった。


「ふざけんな死ね」


 さもありなん。錯乱しないだけ偉いというか妙というか。

 外国人女性は気にした風もなくおほほと笑う。


「私イズ神。不死身。OK?」

「延々と岩でも持ち上げてればいいのに」

「あらやだシーシュポス」


 わからない人は検索してみよう。賽の河原とかそういうタイプの苦行である。

 自称神は少女の顔を首を傾げて覗き込んだ。


「私が神ってとこには突っ込んでくれないの?」

「……」


 うわあめんどくせえ、という顔を少女はした。神は笑って誤魔化した。


「お詫びに最近神界隈で流行ってる異世界転移をプレゼントするから」

「いやいらない……」

「貴女お名前は?」

「……汐原です」

「下の名前!」

「……翼といいます」

「翼ちゃんね!礼儀正しいし、このまま生きてたら人をばんばか救ってそうな感じだわあ」


 申告が正しければ殺したのはこいつである。

 神は両手を合わせてにぱぁと笑った。


「スキルとレベルのある剣と魔法の世界! ステータスも見れちゃう!もちろん授けるのはチートスキル!言語チートとアイテムボックスチートもつけとくし!」

「……だからあのそういうの別にいいんで……」

「私は神なので唯我独尊よ。やると言ったらやるの」


 とんだ迷惑である。しかもうっかり人を殺しちゃうような輩の言うことなど信用ならない。

 翼は一歩下がった。

 神はするっとホバー移動してその腕を掴んだ。


「背中のソレの意味とは」

「飾りよ!」

「……あはい」

「あなたには〈ディ〇ニープリンセス〉のスキルを授けるからね」

「何ですか?」


 不自然に途中聞き取りにくいが、そういうことじゃなく何だって?


「というわけでいってらっしゃい!」

「うぇっ」


 唐突に神が翼の腕を引っ張って振り回した。驚きに硬直したままハンマー投げのハンマーのごとく神の周りを旋回する哀れな少女。

 ハンマー投げという比喩は全く間違っていないので、つまるところ。


「ファイヤー!」

「……っ!!」


 やっぱりハンマー投げのハンマーのごとく、翼は遥か彼方に放り投げられてしまった。発射(ファイヤー)じゃねえ。


 悲鳴もあげずにすっ飛んでいった女子高生、汐原翼十七歳。

 彼女はジェットコースターでも無言でバーにしがみついているタイプである。


短いけれども、私はタイトル回収に時間のかかる小説は嫌いなのでこれでいいのだ。

誤字脱字報告お待ちしております。

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