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ポーラのGB試験

 新しい同居人のポーラが増えても、アタシは相変わらず自宅でのんびりと過ごしていた。彼女は見た目通りの五歳児らしくやたらとベタベタと甘えてくる。

 とくに最近は女の武器である泣き落としを使ってくるので、押し切られて一緒にお風呂に入ったり、枕持参でのベッドへの侵入を許す危機的状況になっている。

 それでも体の洗いっこや抱き枕扱いは許してないのでまだ大丈夫だ。そうなる前に、ポーラが次の引越し先を見つけてくれることに期待したい。


 それから一ヶ月がて過ぎて六月に入った。本日の仕事を終えて帰宅したあと、晩御飯も食べ終わったので良い具合にお腹が膨れ、アタシは大きく息を吐いて居間の畳の上でゴロンと横になる。

 顔を横に向けて、隣に実体化済みのエルザにお礼を言う。


「今日も一日ありがとう。エルザ」

「どう致しましてですわ。もっと頼りにしても構いませんのよ」

「そうさせてもらうよ。アタシ一人だと、何にも出来ないからね」


 守護霊の憑依は強力だが、本体のアタシは無力な一般人だ。もしエルザが力を貸してくれなければ、除霊が出来ないどころか足手まといだ。

 本当に彼女が居てくれて助かっている。


「沙紀、テレビゲームやりたい」

「好きに遊んでていいよ」

「一人で遊んでもつまらない。沙紀もやろう」

「んー…いいよ。やろっか」


 たまには後ろから見ているのもいいかなと思ったが、ポーラが一緒に遊びたいらしく、無言で1Pコントローラーを渡される。

 アタシが寝転がっていた姿勢から身を起こすと、寝間着の銀髪の魔女が嬉しそうな顔で、箱に詰められたゲームソフトを物色していた。


 やがて遊びたい物が決まったのか一本のソフトを取り出して、ゲーム機に接続する。すぐに企業のロゴが出てきたので、アタシはボタンを押して次に進める。


 ワクワクしながら待っていたポーラだったが、ふと何かを思い出したのか、慌てて居間から飛び出して自分の部屋に駆け込み、すぐに分厚い封筒を持って走って帰ってきた。


「沙紀、…これ」

「このお金、…何?」


 ポーラが差し出した封筒の中身を確認すると、一万円札がたくさん入っていた。すぐに数えられる枚数ではなかったので、息を切らして持ってきた少女に直接尋ねる。


「うん、十年分の家賃」

「おおう…それはまあ、何というか」


 見た目は小さな女の子なのでアタシはポーラには何も要求しなかった。ただ、毎日の家事は手伝ってもらっていたが、彼女の役割はそれだけだ。あとは次の引越し先が見つかるまで、森久保家で自由に暮らしてもらう。

 ちなみにアタシはポーラの保護者として監視する責任があるが、彼女は良い子なので、今の所トラブルは起きていない。


「このお金はどうやって手に入れたの?」

「…それは」


 気まずそうに口をつぐむポーラを見て、アタシはわざとおどけた態度を取って、質問した理由を話す。

 小さな子供をやたらと怖がらせて、関係が拗れては面倒なのだ。


「別に怒ってるわけじゃないよ。でもまあ、アタシは一応保護者だからね。

 ポーラが危険なことをしてないか、知っておく必要があるんだよ」


 もし問題行動が発覚した場合はGBに報告しなければいけないが、アタシはポーラがそんなことしていないと信じているので、出来れば正直に話して欲しい。

 しばらく悩んでいたが、やがて諦めたような表情で魔女っ子は小さく声を漏らす。


「GBの依頼を私一人で達成して、報酬を受け取った」

「そっか。それで、アタシたちの名前は?」

「出してない。沙紀に迷惑はかけられない」


 GB公式サイトに出ている依頼は、免許を持っていない霊能力者が仕事を受ける場合もある。

 正規の手順を踏んでないため成功報酬は低いが、それでも一般職よりも高額には違いない。


「正直に話してくれてありがとう。ポーラ。

 それじゃまず一つ目。このお金は受け取れないよ」

「どっ…どうして?」

「依頼主がポーラの達成報告を不正に書き換えて。

 払った報酬を取り上げるかも知れないからね」


 足場が弱いとあれこれ文句をつけられる。特にポーラは見た目は五歳児だ。依頼主も駄目元で頼んだら意外と上手くいった。そう思っていても不思議ではない。

 あとになって小さな女の子に大金を支払ったのは惜しいと感じて、さらに値切るか取り返そうと動く可能性もある。

 アタシが知った以上はすんなり返すつもりは毛頭ないが、万が一に備えて使わずにしまっておいたほうがいい。


「それで二つ目だけど、ポーラもGB免許証を取ってもらうよ」

「どうして?」


 アタシはできるだけわかりやすく足りない頭で考え、一つずつ噛み砕いて言葉にしていく。


「ええと、ポーラがこれから人間の世界で生きるなら、資格を持ってたほうが便利だからね。

 あとはアタシが保護者になってるから今なら身元の確認も出来て、魔女でもGB試験を受けられる。…と思うよ」


 現住所は森久保家で保護者がアタシなので社会的な信用度は低いが、それでも試験を受けることは出来る。

 そしてポーラは悪い魔女ではないので、今後も人間の世界で生きるつもりならGB免許証を持っているに越したことはない。


「それにポーラがGB免許証を取れば、森久保除霊事務所の四人目の仲間になるし…」

「やる! ワタシ、GB試験を受ける!」

「おっ…おう、何だか知らないけど、やる気になってくれて嬉しいよ。

 えっと…次の試験日は」

「それなら明日ですね」


 いつの間にお風呂からあがり、水気を帯びて艶っぽく光る黒髪をタオルで拭いている真理子が、居間に向かって歩きながらGB試験の日を答えてくれた。

 白い羽織もの一枚ではとても隠しきれずに、豊満な谷間とお尻が思いっきり強調されて目の毒だ。


 だがアタシもTシャツと短めのスパッツ一枚で家の中を移動するため、その件に関しては自重するようにとは言えない。

 グラビアアイドル顔負けの色っぽい姿を人の目に触れさせないために、森久保家は男子禁制の女子の園にするしかないか…と、アタシは心の中で大きく溜息を吐くのだった。




 GB試験の日、アタシは名目上は保護者件監視役なので、ポーラの付き添いとして同行する。守護霊のエルザも同じで、いつも通りアタシに宿った状態だ。

 真理子も来たがっていたが当日に指名依頼が入り、特急料金が上乗せされるので断るのは勿体ないと判断して、結局受けることにした。

 報酬は森久保除霊事務所の運営資金に一部を入れる以外は、残り全てを達成した人が受け取る。


 と言っても、アタシは基本的に低コストな人間なので、市場に還元して日本経済を回す気は起きず、そこまで仕事に熱心でもない。今でさえ運営資金はダダ余りで、無駄に貯蓄ばかり増えていく有様だ。


 それはともかくポーラの試験の日なので一緒に手を繋いで列に並び、ようやく窓口まで到着したので、彼女の代筆で書類を記入している。

 と言うのもポーラは魔法の天才だが、今までまともな教育を受けたことがなく、基本的に放浪生活だ。

 この国に来たのは最近で、ようやく日本語がわかるようになったところだ。読めない文字もまだまだ多い。


「ポーラ=クルーガー…っと、年齢は?」

「五十歳」

「了解、五十歳ね。あとポーラ、家に帰ったらアタシが勉強教えるから」


 見た目は五歳児なのに、これで五十歳とは恐れ入った。肉体年齢も精神年齢も魔女の家系はゆっくり育つので、ポーラが子供っぽい言動が目立つそもそのせいだろう。

 しかしまあ、このままだと自立は難しそうなので、この子には中卒のアタシが勉強を教えるしかないか…と、何となく気持ちが重くなる。


「沙紀が手取り足取り?」

「まあ、そうなるね」

「頑張る!」

「何だか知らないけど、やる気になってくれて嬉しいよ…っと、必要書類の記入はこれで終わりかな」


 元々エルザも真理子も、ポーラを引き取るのは反対していた。それに自分が保護者になった以上は、自立するまでは面倒を見ないといけない。

 このままでは新しい引越し先を見つけても、すぐにアタシが呼び出されるかポーラが泣きついてくるかの、ろくでもない二択しか見えない。

 問題を起こさないためにも必要最低限の教育は行うべきだろう。




 窓口のお姉さんに必要書類を提出して問題なしと言われたので、ポーラの控え目な胸に番号の書かれたバッジをつけてあげて、一次試験会場に向かってゆっくりと歩いて行く。

 途中で隣の魔女っ子がまた手を繋ぎたそうにニギニギしていたので、少し考えてギュッと握ってあげる。


「ほら、GB試験会場は広いし迷子になったら困るからね」

「うん!」


 周りからは微笑ましい親子を見守るような視線が送られ、携帯やスマートフォンのカメラでパシャパシャと撮影する音が聞こえる。

 まさか中学を卒業してすぐに娘を持つとは思わなかった。しかもそれが超絶可愛い女の子なので、何とも容姿の格差社会を見せつけられる。


 今の撮影会も殆どがウキウキ気分のポーラに集中している。地味顔メガネ女子のアタシと撮って欲しいとは欠片も思ってないので別にいいが。

 それでもやっぱり世の理不尽を感じてしまうのが、悲しいモブの性だ。




 一次試験会場の前の長椅子に腰かけて順番を待っている間、ひっきりなしにポーラが話しかけてくるので退屈はしなかった。

 だがそれだけでは済まずに、いつの間にか周りに人が集まり、皆が話に入って来ようとする。


「へえー、ポーラちゃんは元々そっちの国の出身なんだ!」

「五十歳児。つまり合法か…イケるな!」

「ポーラちゃん、喉乾いてない? お姉さんがジュース買ってきてあげる!」


 インドア派のアタシにこの猛攻は辛い。気を許した人には話しやすい、そして赤の他人でも一対一ならまだ何とかなる。

 だが至近距離で大勢に囲まれた状態でさらに相手が大人では、緊張せずに話すのはアタシには無理だ。

 相槌しか打てないものの皆のお目当てはポーラなので、それでもいいかと前向きに考える。


 この際なのでポーラが人間たちと打ち解けられるよう、少しずつ彼女から距離を離して逃げようとする。

 だがこちらの行動はお見通しのようで、ギリギリのところで素早く手を握られ、アタシの顔を真正面から見上げて強引に引き戻される。


「…沙紀もそう思う?」

「ああうん、よくわからないけど、…多分」

「ん…それじゃ、ワタシたちは少し席を外す」


 全く聞いていなかったが取りあえず同意したアタシは、ポーラに手を引かれて席を立つ。そのまま脇目も振らずで無言で歩き出したが、有無を言わせない雰囲気だったので他の人は追っては来なかった。

 やがて彼女は一目散に女子トイレに駆け込み、洋式トイレの個室に自分だけでなく、アタシまで連れ込んだ。


「大勢を相手をするのは面倒。一次試験に呼ばれるまで、ここで時間を潰す」

「それはいい案だね。少し狭いけど」


 呼び出す番号はトイレまで聞こえるので、そのときに個室から出て駆けつければ十分間に合う。

 そしてポーラも大人に囲まれて、面倒に感じていたことを知る。


「沙紀、そこに座って」


 洋式トイレの蓋を閉じてその上を指差したことで、何となくだがこれからすることを理解する。一次試験までまだ時間があるので仕方ないかと割り切り、ポーラの言われた通りに腰かける。

 そして予想通り自分の膝の上に、小さな魔女っ子がチョコンと座る。


「えへへ、ワタシの一番好きな場所」

「そっかー。でもまあ、一次試験が始まるまでだよ」


 言葉少ないポーラから、珍しく笑い声が漏れる。そこまで喜んでくれるなら、膝上を提供した価値はあった。


「喋り声が漏れたら変に思われるかも知れないから、静かにね」

「ん…わかった。沙紀、コンビニで買った漫画」

「ああ、アレね。ちょっと待ってて」


 途中のコンビニで購入した週刊少年漫画を鞄から取り出してポーラに渡すと、彼女は夢中になって読み始める。アニメやゲームと並んで漫画も日本の文字の勉強になるので、不慣れな彼女にはいいかも知れない。

 ただしアタシの趣味の影響をもろに受けているので、少女漫画よりも少年漫画のほうに興味津々なのが困りものだが。


「沙紀、この文字は?」

「ええと、…これはね」


 小さな魔女と一緒に少年漫画読みながら、時々難しい日本語を説明してポーラの知識を深めていく。

 あまりにも長い個室の使用を心配になったのか、外から声がかかることがあったが、それでも一次試験が開始するまでは大人に囲まれることもなく、有意義な時間を過ごすことが出来た。




 なお、一次試験が始まる前の呼び出しで部屋の扉の前に行ったものの、そこでポーラが今度はアタシから離れたくないと泣き出した。

 慌てた試験官や他の大人たちがなだめすかすが効果がなく、あろうことか魔女っ子は、アタシがギュッと抱き締めてくれたら一次試験を頑張ると言い放った。


 日に日に悪知恵を付けてくるポーラに、恐ろしい子! …と心の中で感じながら、ここで断れば周囲の視線が一層厳しいものになるので、仕方なくしゃがみ込んでギュッとしてあげる。GB免許を取らせるだけで、アタシは羞恥心で死ぬかと思った。


 だがそのおかげか、ポーラは元気ハツラツで一次試験に向い、見事合格を掴み取ってきた。試験官の覚えもよくて今試験で一番の成績だと褒められ、おまけに飴玉までもらったとアタシに全て献上してきた。

 どうやらポーラはお菓子では釣られないようだ。


 何はともあれ一次試験合格おめでとう…と、三角帽子の上から軽く撫でると、魔女っ子は心底嬉しそうに口元を緩めて、アタシに満面の笑みを向けるのだった。




 一次試験を通過したポーラは次は二次試験に挑むことになる。アタシは当然ながら会場では観客席からの見学になる。

 魔女っ子が客席に顔を向けてアタシ見つけたのでブンブンと手を振るので、微笑みながら軽く手を振り返した。


 人間ではない魔女がGB試験を受けるのが珍しいのか、自分以外の見学者が大勢客席に座っている。

 そしてアタシは不正による一発合格だったが、本来の二次試験は全部で三回戦行い、全試合を勝ち抜けばGB免許証が発行される。

 一試合が犬、ニ試合が猿、三試合がキジらしく、自分の隣に腰かけて観戦している真理子が詳しく教えてくれた。


 家のポーラは果たしてどのように戦うのか。思えばアタシは彼女がコテンパンにやられた事後の場面と、青白い無数の手を出す攻撃しか知らない。

 それが自分が知る魔女っ子で、あとは森久保家でアタシのあとをトコトコ付いて来て隙あらばハグを狙う、甘えっ子のポーラだけだ。


「あれって家の竹箒だよね」

(…ですわね)

「そう言えばポーラにはお古をあげて、最近竹箒を新品に買い替えましたね」


 ポーラは竹箒だけでなく自転車のサドルも欲しがった。何に使うのか聞いても秘密だと教えてくれなかった。それでも悪いことには使わないだろうと考え、近所の粗大ゴミからサドルを回収して彼女に与えた。


 二次試験の試合場で白線の内側に入っているポーラは、竹箒の中ほどにサドルを取りつけているので、使用目的は自ずと推測できる。

 道具は各自一つだけ持ち込んでも良いルールので、アタシは魔女らしい道具だなと思った。




 やがて枠線の内側に投げ込まれた一枚の紙が、ポーラの背丈ほどもある黒い犬に姿を変えて、試験官が試合開始に合図を送る。

 当然のように式神が飛びかかってくるが、それよりも一瞬前に攻撃対象は竹箒のサドルにまたがり、遙か上空へと回避しており、余裕の表情で黒犬を見下ろしている。


「ほへー…空を飛べるって凄いね」

(沙紀もやろうと思えば出来ますわよ)

「えっ? 本当に? アタシも飛べるの?」

(普段の私も飛んでいますし、コツさえ掴めば大丈夫ですわよ。

 まあ、それでも並の守護霊には不可能な芸当ですが)


 思えばエルザは幽霊の中でも極めて優秀だった。普段は実体化して二本の足で歩き、人間のように振る舞えるほどだ。

 そう考えればアタシを飛ばすことも出来そうだが、あまりに高いと足が竦みそうで、失敗したら地面に真っ逆さまだ。

 やっぱり今まで通りでいいや…と、怖気づいてしまう。


(取りあえず最初は1メートルからじっくり慣らしていけば、そこまで怖くありませんわよ)

「だよね。うん、練習しておこうか」

(ええ、一日数分程度の練習でも、すぐにものにして見せますわよ)


 なお、この言葉には嘘偽りはなく、エルザは一週間もかからずに高速での空中戦が可能なレベルまで、自らの飛行技術を高めてしまったのだった。


 そんなことを考えている間にポーラは呪文の詠唱に入り、竹箒の真下に赤色の魔法陣が出現する。

 それを中心にして小さな火球が生み出されたが、時間と共に段々と大きさを増していき、やがては大火球となって周囲を明るく照らす。


「これで、…終わり」


 小さな魔女の呟きは、皆が彼女の一挙手一投足に集中し、いつの間にかしんと静まり返った二次試験会場中にとても良く響いた。

 終わりの言葉が聞こえた瞬間、まるで太陽のような眩しい輝きを放つ大火球が燃え尽きた線香花火と同じように、地上に向かって真っ直ぐに落下していく。


(沙紀、体を借りますわよ!)

「あっ、うん! えっと、真理子も!」

「はい、押し留めます!」


 エルザと同じで、アタシと真理子も一目でこれは不味いと察した。そして今日の二次試験には、自分たち以外にも多くの霊能力者が集まっていたことが幸いした。


 各々が試合場を覆う結界に霊力を流し込んで大幅に補強することで、地上に落ちた大火球の炎は外に漏れることはなく、式神の黒犬は塵も残さずに燃え尽きた。

 あとには竹箒のサドルにまたがりながら得意気な顔でアタシに視線を送り、全身から褒めてオーラを発しているポーラだけが残る。


(これはあとでお説教だけど。ポーラも一試合で合格かな)

「戦闘能力は十分ですが、問題は霊力の加減ですわね」

「ニ試合、三試合もこれと同じことをされては、堪りませんからね」


 GBは命の危険がある職業で優秀な人材は喉から手が出るほどに欲しい。そしてポーラの性格は決して悪ではなく、外付け制御装置のアタシが付いていれば善になる。

 だが精神も肉体もまだ未熟で子供らしく、加減がわからない。しかしそれはまだまだ伸びしろがあるということで、将来はGBを支える大黒柱になるかも知れない。


(保護者件監視役のアタシの寿命が、ストレスでマッハなんだけど)

「まあ、ポーラは試験官や他の同業者にも人気ですし」

(はぁ…新しいお友達の存在に期待するよ)


 しかしトイレの個室に籠もっていたとき、ポーラはアタシ以外の人の好感度はあまり高いようには見えなかった。

 別に嫌われているわけではないが、魔女っ子は母親のように甘えられるアタシと、同居人のエルザと真理子以外は例外なく無関心なのだ。


 まずは他人に関心を持たせることから始めなければいけない。道のりは長く険しく、それに日本社会で生きられるように勉強も教えないと。

 GB免許証を手に入れてポーラは生きやすくなったが、アタシの負担は減っていない。


 しかし流石にこれ以上、面倒事は増えないだろう。竹箒のサドルに跨ってアタシに笑顔で大きく手を振るポーラに気がつく。

 エルザと交代して小さく手を振り返すが、内心では早くも諦めムードになるのだった。

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