1 宇宙の中心にて
初投稿です!書きためていないのでのんびり更新となりますがよろしくお願いします!
そこは宇宙の中心のような場所だった。
黒い、何もかもを包み込むような、そんな空間。
そこの一角に、光の玉のようなものが浮かんでいる。
玉の中には、ひとつのベッド。漆黒の、一種の芸術品のようなベッドだ。
そのベッドに眠っているのはひとりの少女だった。
目を閉じて、すう、すうと小さな寝息をたてている。
黒いベッドとは打って変わって真っ白な髪の毛は、柔らかなビロードのようだった。
長い、白い髪が、服の代わりに彼女の体を覆っているのがわかるだろう。
そんな彼女の横には、ひとりの少年がいた。
きっちりと着込んだ燕尾服。
浅黒い肌は少女の白さを際立たせるようだった。
長い前髪の隙間から覗くのは、真っ赤な瞳。
どろりと煮え立つような、赤いルビーのような瞳だ。
少年は持っていた本から、目を上げる。
「……きちんと、お眠りになっているようですね。盲目白痴の魔王様」
少しからかうような口調でそういった後、彼は、つん、と少女の頬をつついた。
まるで人形のような顔をしているが、その頬は柔らかい。
彼女は、何をしても起きない。
宇宙のような空間には、どこか低い不気味なフルートの音色が響いている。
少年はその音色に目を細めると、ゆっくりとまた本に目を落とす。
ここは宇宙の中心、時空を超越した場所。
ここは怪物的なまでの混沌の中心だ。
眠る少女の名前は「アザトース」。
そして、そのそばで何かを読み聞かせているのは――ただの、人間だ。
人間だった、男だった。