§ラック①
(彼と結婚したくない)
「叔父様、私じつは王子様と結婚するのが夢だったの」
「王子か……」
それなら仕方ないね、と言ってプリパルド家との話はうやむやになった。
「はあ……」
物語なら貧しい平民が実は王子様でした。
なんて夢のような展開になるのに、どうしたら私はラックのそばにいられるのかしら。
「浮かない顔をしてどうなさいましたお嬢さん」
白塗りの顔をした不思議な人が声をかけてきた。
「貴方はだれ?」
屋敷には警備がいるはずなのにラックが入れたりするし杜撰だわ。
「私は道化師、エラーでございます」
「あ、だから入れたの?」
彼は微笑むけどなんだか怖い。でも雰囲気はどこかで会った気がする。
「道化師さん、私の悩みをきいてくれる?」
「貴女様の憂鬱を晴らし、喜びをあたえることを約束いたしましょう」
ラックは平民で物語のように実は王子様という可能性が低いと話す。
「そうですね、物語なら釣り合う身分となりハッピーエンドです」
「でもそう簡単にはいかなくて……」
「貴女にはまだ選択肢があります」
「他の選択肢?」
リルドかルビアンの妻になる以外で私の道はあるの?
「屋敷を出て平民になる……という選択です。貴族としてこのままどちらかと結婚するのがお嫌なら考えてみてください」
根から貴族生まれの私が市街で暮らせるかしら。
「それとも、私と屋敷を逃げますか?」
「貴方は私をどこへ連れていくの?」
彼は平民だろうしどちらにしろ生活は苦しそうだわ。
「この手を取ってくだされば、貴女の望む世界へ」
◆道化師と逃げようかしら?
〔逃げる〕
→〔逃げない〕