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とある星物語 Returns   作者: さゆのすけ
3/35

第二歯 モヤシ、日記をつける

《僕のいる街は不思議な温度で成り立っている。

機関車のスチーム、ぶつかる金属が散らす火花、冷え切ったレンガで出来た建物…


大抵が曇り空で、3日に1度は雨が降る。

「真っ青な晴れた空」なんて、一年に数回あるかないかだ。

あったとしても、僕は大抵の昼間部屋に籠っているから、お目にかかった記憶がほとんどない。


世界には”科学”とやらが発達して、人が作った光が朝も夜も街を照らし

軽い金属(見たことが無いので想像でしかないが)で出来た乗り物にのって

人々が地上も空も凄い速さで、移動している街もあるらしい。


と思えば、未だに井戸から水をくみ上げて、その日食べる穀物を作って

時間にしばられることなく、一日お天道様の元で鼻歌を歌っている家族もいるという。

ここから遠く離れた、砂漠の地帯に多いらしい。


僕の世界は、そのどちらとも違っている。

”科学”とやらに頼りもしなければ、農作業に明け暮れるほど、原始的でもない。

城壁のような防波堤に囲まれ、海の上でひっそりと隠れるように存在している

僕の街にしかないもの、それは、―「魔法」だ。


君は、「魔法」の存在を信じるだろうか。


僕はこの街からほとんど出たことがないし、ここもあまり人の出入りが無い場所だから、「魔法」が使えない人に会ったことが、あまりない。

だから、どうしたら君に分かってもらえるか、上手く説明できるか分からないのだけど…


そこに確かにあるものを、目に見えないモノから目に見えるモノにする力。

それを「魔法」と僕は呼ぶことにしている。


頭に「?」が浮かんでいるね。

例えばだけど、今、君の目の前によく熟れた桃があるとする。

君はそれ見て、愛しいあの子の、赤く染まった柔らかい頬を思い出す。

そして、今すぐあの子に会いたくなる。出来たら花屋によって、ブーケを一つ注文して。


そこには君の”想い”がある。目に見えないけれど、”あの子のもとに飛んでいきたい”―

それと、君の中にある”力”がカチリと合わさったときに

君の身体は宙に浮くんだ。

正確には、君の身体を運ぶ乗り物(古典的だけど、箒とかね)が宙に浮かぶんだけれど。


もちろん、想えばなんだって叶うわけじゃないよ。

君が持つ”力”の大きさや、それをはめる鍵穴は無数にあって、

どの穴に、どの鍵を、どれくらい深くまで差し込めば魔法が発動するのか…その調整は凄く難しいんだ。


うーん、それでもやっぱりわからないって?

ごめんね、僕はこれを、習って覚えたものではないものだから…

殆どの魔法使いは、座学で理論を習って、練習を重ねて、そして実践の場に出てから、一人前の魔法使いとして称号をもらえるんだ。

生憎僕は、うまれた時から「魔法使い」だった。

僕の先生は、そんな僕を危険だといって常に監視するほど、特異なケースではあるらしい。


え?今日、僕が空き瓶を飛ばしたのも、その「魔法」なのかって?


…そう。

あの時は、僕の「あの子を守りたい」っていう気持ちが先走って

気が付いたら、大事なお店の商品を飛ばしてしまっていたんだ。

その後、親方にこってり怒られて参ったよ。


珍しく満月の光に照らされた夜に、出会った不思議な、女の子。

汚い茶色のフードから、見え隠れする、水色の髪。

その後の行動には、かなりの衝撃を覚えたけど、まだもしこの町にいるのなら―》


そこまで文字を書いたところで、姫魅は日記を閉じた。

もしこの町にいるのなら…?



「姫魅、飯だぞー」


台所から、ネルが叫ぶ。いつもの声に、ちょっとほっとする。


姫魅はのろのろと立ち上がると、指先まで伸びきった裾を口元に当てて大きな欠伸をして

「今行きます」

とネルに聞こえないだろう返事をして、部屋を出ることにした。


【さのすけ→ゆのすけ】

姫魅、実は日記をつけているという新事実がここにて発覚。笑

多分、口数が少なく自分を表現しない姫魅に、ネルがすすめたのでしょう。

女の子に語り掛けるみたいな文章が、姫魅らしいということで…(日記じゃねぇというつっこみはおいておいて)


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