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とある星物語 Returns   作者: さゆのすけ
18/35

第十七歯 さっさと帰りたい

「私の輝かしい魔法学生デビューが、補習から始まるなんて…」


魔法学校の校庭にそびえる入れ歯像の下、蛍が頭を抱えていると、向こうから太陽のように眩しい金髪が、きらきらの笑顔で向かってくる。


「ほったるー♪おっはよう!」

「朝から補習だっていうのに、あんたは元気ね。おはよう、慰鶴…と姫魅?」


慰鶴の右腕にキーホルダーのようにぶらさがっているのは、月のように真っ白な顔をした姫魅だ。


「姫魅、どうしたの?ふらふらじゃない」

「アルバイトで配達している牛乳がいつもより多くて…急いで終わらせて来たんだけど、途中で立ち眩みがして…貧血かも」

「たまたま、通りかかったから抱えてきた。姫魅、大丈夫か?」


ふらふらと立ちあがる姫魅に、慰鶴が手を添える。


「ありがとう。もう大丈夫だよ」

「なあ?ヒンケツってなんだ?品のあるおしりか?」

「い、慰鶴ってば!」

「品性を疑うわ。貧血なら、慰鶴には無縁の言葉かもしれないわね」

「俺のおしり、そんなに品がないのか?!」


慰鶴が血相を変えて、尻に手を当てる。

蛍が呆れていると、どこからか飛んできた布が、陽の光で色を変えながらひらひらと落ちてきた。


「おはよう、ネル」と姫魅が顔をあげると、布の影からカーネルが現れた。


「おはよう、蛍、姫魅、いづ…慰鶴?どうした、痛いのか?」

「ネルさん!俺のおしり、品がないの!?」

「いや。尻の品格は、俺にはわからないが…」


カーネルが戸惑っていると、ダンッ!と地響きがして、空から大きな猪が降ってきた。

猪の背から、チャコとイルカが飛び降りる。

「ありがとうございます」とイルカに撫でられて、猪はハートを逆さまにしたような鼻先を照れくさそうに鳴らした。


「おめえら、どうした?」


睨みをきかせる(本人にその気はない)チャコに、蛍が恐る恐る口を開く。


「姫魅が貧血で…それはもう大丈夫なんですけど。慰鶴が貧血の意味を勘違いして…」

「え?ええ?」


困惑する慰鶴に、「先が思いやられる」とカーネルがため息を吐いた。


ふいに馬の嘶きがして、漆黒の馬に跨がったナギが駆けつけた。


「申し訳ございません。遅くなりました」

「おめえが遅れるなんて、珍しいな」

「確かに、チャコ隊長の遅刻率13%に比べれば、珍しいかもしれません」

「んなっ?!」


赤面するチャコを他所に、ナギが淡々と話を進める。


「揃いましたので、始めてもよろしいでしょうか」


ナギのひと声に、空気がぴんっと張り詰める。


「もののけ 蛍」

「はい!」

「碧詩 姫魅」

「は、はい」

「慰鶴」

「はいはーい」

「あなた達3名には、今から補習を受けて頂きます。もののけ蛍に関しては、審査員4人のうち3人の合格がなければ、ジョニー魔法学校への入学はありません。入学試験だと思って、取り組んでください」

「はい!」

「審査員はカーネル・サンダース、入鹿、チャコ、ナギの計4名で…」

「まあまあ、ナギさん」


ガチガチに緊張する蛍を見兼ねて、イルカが説明を代わる。


「課題ですが…蛍さんには、パートナーとなる九十九を探して頂きます。慰鶴くんと姫魅くんは、彼女のサポートが課題です」


イルカの言葉に、ふたりがきょとんとする。


「あの、ツクモ…ってなんですか?!」

「俺、ツクモ見えないんですけど」


イルカが「はい」とにっこり微笑むと、不思議とふたりまで和やかな気持ちになる。


「って、違うでしょ?!」


居心地のよい沈黙を、蛍のハリセンが打ち破る。


「想像すらできない、情報皆無の存在を探すんですか?!補習は3日間しかないんですよ?!」

「俺、見えない生き物を探すんですか?」

「え?ツクモって生き物なの?」

「生き物というか…愛というか…うーん、ラヴ?」

「大丈夫ですよ。姫魅くんがいますから」

「僕?!」

「ええ。姫魅くんはツクモをご存知ですし、すでにお持ちでしょう?」

「ええっと…はい」


姫魅の指がそっと唇をなぞると、白いカラスが舞い降りた。


「魔法?!」と目を丸くする蛍に、「え?どうしたの?」と慰鶴が戸惑う。

姫魅はどう説明したものかと、口をもごもごさせている。


「あはは、おまえ達なら大丈夫だよ。期間は3日間。蛍のツクモがみつかれば、ふたりは入学許可。姫魅は魔法使用許可を与える」

「ネル、そんなこと言ったって…」

「姫魅、ツクモを探すことがどういうことか、わかるだろう?おまえがふたりを導いてやれ」

「もののけ蛍がツクモを連れ、ジョニー魔法学校に戻ってきた時点で、補習は終了となりますので」

「検討を祈ります」

「んだば、また」


派手に登場した4人は、蛍、姫魅、慰鶴を残して、呆気なく姿を消した。

さっさと帰りたい。

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