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とある星物語 Returns   作者: さゆのすけ
12/35

第十一歯 アカデミー女優賞ノミネート

「お会いできて、本当にうれしいわ!

実は私、皆さんのファンだったんです!」

手を口にあてて喜ぶ蛍を見て、姫魅と慰鶴は思わず顔を見合わせた。

二人が驚いたのも無理はない。蛍の声色はワントーン高くなり、目はキラキラ輝いている。

まるでどこかの”お嬢さん”のようで、さきほどまで隣にいたあのじゃじゃ馬とは思えない。

なんという変わり身の速さだ。

ごくりと息をのんだ姫魅の横で、癒鶴はすっとぼけた声で

「え、蛍、この町に来たの初めてじゃ…」と言いかけた。

が、蛍からすっと向けられた氷のような一瞥で、口が動かなくなった。

(姫魅、これは魔法…?)(それは違うよ、癒鶴。)と、暗黙の会話。

「楊さんって、噂よりますますお若くて綺麗ですね!こんな大人の女性、あこがれちゃうなぁ」

恥じらいながら楊を見上げる態度はいじらしい。

「あらあん…それは、ありがと。嬉しいじゃない、こんなかわいい子に。」

ねえ、イチ♡と、楊はイチの胸に手をあてもたれかかった。

「イチさんも、助けてくださってありがとうございます。すごくカッコよかったぁ…

私、すごく怖かったんだもの。助けてもらって、キュンとしちゃった」

「え?あ、いやぁ…」

イチは照れを隠すように、目を泳がせる。

「んん、それで♡」

楊の足元に白い蛇が、スルスルと近寄り蛍の足首に体を這わせた。

ひんやりとした感触、蛍の体が一瞬こわばる。

「蛍ちゃんは…姫魅くんの、新しいガールフレンドかしら?」

にっこりとほほ笑む楊の声に、姫魅は「えぇ!?」とすっとんきょうな声をあげて、イチはたまらず吹き出した。

「楊さん、この根暗がそんな…ブフッ」

「ちょ、違うよ楊さ…」

「そうなんです!」

「えぇ!!?蛍!?」

蛍は即座に姫魅の腕をとると、体を寄せて耳元で囁いた。

「私…姫魅さんのことが好きなの」

「…!!!」

「あらぁ♡」

「ブハッ…!」

楊は唇に細い人さし指を当ててニヤリとほほ笑んだ。

硬直した姫魅を見て、イチは腹を抱えて笑っている。

「そうだったのか、蛍!」と、癒鶴は目を丸くしてうなずきながら

「応援するよ!」と大きくガッツポーズをしてみせた。

「でもね…」

蛍は急に瞳をうるませ、悲しそうにつぶやいた。

「姫魅さん、女の子のこと興味がないみたいなんです。

だから私、少しでも姫魅さんに近づきたくて、魔法を使えるようになりたいの!」

蛍はばっと姫魅から離れて楊にかけより、すがるように見上げた。

「お願い楊さん、私に魔法を教えてください!

男の人を落とすテクニックも、楊さんから学びたいんです!

楊さん以上に、美しく魔法を使える女性は、他にいないもの」

「んまぁ…♡♡」

楊は艶の良い髪をかきあげて、

「どうするぅ?イチ…」と振り返った。

イチはコホン、と咳をして、表情を無理やり真面目にしてみせると

「まぁ、校長マターでしょうね。」と答えた。

「いずれにしても今日のことは、監督不行き届きということでネルにも知らせないといけないし。

姫魅にようやくできたお友達…ブハッ…とあれば、お嬢さんのお望みの平和学校入学のことも考え…ククク」

「じいちゃん!じいちゃんならきっと許してくれるよ!

わぁ、うれしいな。実は俺も来年から通うことになっていたんだ」

癒鶴は、蛍と姫魅の腕を肩を抱き寄せると、心から嬉しそうな声をあげた。

「よろしくな!なんだか不思議だ、こうなることが、運命だったみたいだ!」

「うん、嬉しいわ!私頑張る」

「…(白目)」

きゃっきゃとはしゃぐ子供たちを見ながら

「そうね。これも運命…ね。」と

楊の真っ赤な紅をぬった唇からは、儚い吐息が漏れた。

多分、楊さんはちゃんと分かってる。

それでいて、乗せられたようにみせている。

それが大人の女だ。

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