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白銀のヴァールハイト  作者: A86
4章 棺の中の獣と華麗な少女
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第83話 連れ去られる

 白い霧が晴れ、最悪な状況を越えようとしていた時、やってきたのはさらなる最悪な状況だった。コンラッドは異形の生き物達の方にいる。それだけで衝撃的だった。それに、今のコンラッドが放った言葉……。俺の頭の中は疑問でいっぱいである。

 しかし、そうしている余裕はない。今、あいつらよりもヴァイス・トイフェルがいる。俺は怪物の攻撃を避けながらも、異形の生き物達に目をそらさなかった。

 やがて、異形の生き物……魔女と呼ばれたのが低い女性の声で言う。


「よくやった……コンラッドよ。あとはヴァイス・トイフェルが片付けるだろう……。………引き上げるぞ」


「「はっ」」


 狼獣人の男とコンラッドがそれぞれ応える。俺は奴らの方へと向かった。このままでは、リアムが……!

刀を相手に向ける。


「うおおおおおっ!!」


「行け」


 魔女の一言で狼獣人の男が俺の方に向かってくる。負けない、こんな所で!相手の武器は、刀。俺と同じだ。

 互いに刀がぶつかり合った。かなり……重い……。押し込まれてしまいそうだ。


「貴様らに一言言っておこう」


 狼獣人の男が言う。話すほどの余裕があるだなんて……。こっちは持ちこたえるだけでも精一杯なのにだ!

 やはりおかしい。刀が言うことを聞いてくれない感じだ。


「コンラッド・スラムは元から我々の仲間だ。それに、そのような弱腰が俺達に勝てるとは相当思えんがっな!」


「グハッ!」


 狼獣人の男は俺に回し蹴りをした。俺は吹っ飛ばされ、ワイヤー銃の上に落ちる。相手は刀をしまうと、元の場所へ戻っていった。


「駄目……リアム、戻ってきて!!」


 ミリーネが声を荒げる。だが、もう遅い。魔女とコンラッドと狼獣人の男はリアムわ連れ去っていく。彼らは突然、煙幕を使った。そして、何かが飛び去った後、煙が晴れた時にはすでに誰もいなくなっていた。


「リーアームー!!」


 彼女は叫ぶ。悲しみを込めて……。


 スル、スル、シュー……。


「!!!」


 そうだ!今はヴァイス・トイフェルに集中しなければ。先にこっちを片付けなければならない。幸いなことに俺達が相手をしているヴァイス・トイフェルはクレアがずっと戦ってくれていたようだ。

 俺は刀を構えて、一気に向かう。奴に大ダメージを与えれば倒すことができる。


 俺は奴の体を飛び越えあちこち動き回る。クレアの方を見た。彼女は何かを言っている。と次の瞬間、ヴァイス・トイフェルが俺に襲いかかってきた。俺は後ろにバック転をし四肢で着地する。俺はクレアの方に近づいた。


「一体なんだ?」


「いい考えがあるの。これを使えばいいんじゃないかな」


 そう言って、彼女は液体の入った試験官みたいなのを取り出す。


「これは?」


「爆弾だよ。まず最初に……キャッ!」


「うおっ!」


 危ない危ない。ヴァイス・トイフェルの頭がこちらに向かってきていた。俺達は横に避けて、攻撃をかわす。


「……まずね、このワイヤーのついた銃で全員、この部屋から出るの。それと同時に爆弾を怪物に投げて爆発させる訳だよ」


「……分かった。お前はその事を皆に伝えてくれ。俺は、こいつ足止めしておく」


「うん、分かった」


 そう言うと、クレアはワイヤー銃を4つ持って、向こうへ走り去っていった。その姿をヴァイス・トイフェルが追う。俺はすかさず、彼女を狙わないように、怪物の視線の目の前に立った。怪物は俺に焦点を当てる。どうやら、俺を狙うことに決めたようだ。


 怪物は頭を上げると歯をむき出し、今にも襲いかかろうとしていた。五分、いやそれ以上だ。それだけの間、俺がこいつを食い止めればいいんだ。後は、クレアが持ってた爆弾で処理できる。


 ヴァイス・トイフェルは頭をいきなり下げてきて、口をグワッと開けながら来た。俺は後ろに下がり、地面についたのを確認すると、一気に回り込んだ。そして、ヴァイス・トイフェルの首から浅いながらも切り裂いていった。


 ……変だ。感覚がおかしい。この刀を使っていた時にはない感触だ。まさか……この刀……!


「デューク!銃を持って部屋の中央に来て!」


 クレアの声が聞こえた。俺は言われた通りにワイヤー銃を持って、部屋の中央へと走る。ヴァイス・トイフェルが俺の後ろを追ってきた。なるほど、ヴァイス・トイフェルも集めるという事か。

 俺が中央に来た時、すでに他の皆は集まっていた。ただ一人、ミリーネは生気が抜けたような顔をしていた。


「皆集まった?それじゃあ行くよ、3、2、1、GO!」


 天井近くの壁にワイヤーが突き刺さった。そして、そのまま引っ張られていった。ヴァイス・トイフェルは獲物を逃さんとでも言うように頭を上げ、口を大きく開いて来た。俺は重心力を使って左にずれて、かわす。見事振り切った。


 俺の視界に飛び込んできたのは、時限爆弾が部屋の中央に落ちていく所だった。見たところ、残り僅か5秒。

その間に俺達はもう少して部屋の外へと出られそうになっていた。あと、2秒、1秒……。


ドッカーン!!


……ついに、爆発した。

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