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白銀のヴァールハイト  作者: A86
4章 棺の中の獣と華麗な少女
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第81話 部屋の捜査

 刀は……持った。俺達六人はチャペルに集まる。一年前、あの部屋にやって来てヴァイス・トイフェルと裏切り者のカルロスに出会った。ヴァイス・トイフェルは、今から行く部屋の上の方にうじゃうじゃといたらしい。防衛隊が全て駆除したらしいが、一応念のためにということもあり、俺達は武器を持っていくことになった。

 刀が少し軽い気がする。気のせいだと思うけど。


 空から白い亀裂が走り、地平線の彼方へと直撃したのが見える。

 雷が鳴った。ここは窓ももちろんついているからすぐ、雷の光が見える。外は、雨は降っていないが雷だけが鳴っている状態だった。

 謂れ因縁の書は今、俺の上着の右ポケットに入っている。と言うのも、この後スチュアート先生の所へと行ってまた鍵を試さなければならないので、持っているというところだ。


 俺の隣にはクレアがいる。彼女は……謂れ因縁の書の存在をまだ知らない。もしバレたら、一体どうなるのだろう……。想像すると、少し怖かった。


「それにしても遅いな、コンラッド」


「あっ、そうだ。コンラッドは遅れてやって来るって言ってたぞ」


「そうなのか、じゃあ部屋の方へと行こうか」


 アークの言葉に俺は頷いた。右手で謂れ因縁の書を奥に押しやる。

 

 暗い道を歩き続ける。コツコツと音が聞こえた。雷が鳴る音も響いていて、その何処とない不気味さに何故か安心感があった。


「懐かしいなー、この雰囲気」


 懐かしい?ミリーネがそう言っている。


「一年前程じゃないけれど、この先に待っている未知の世界!知らぬ場所!それでワクワクしてたんだー」


「要するに、ミリーネは一年前のあの時、とってもワクワクしていたということ?」


「そうそう、そうなんだよねー」


 ミリーネは相変わらず平常運転だった。皆、毎日少しずつ変わっていくと誰かが言っていたけど、そうじゃない。俺は、どうなんだろう?変わっているんだろうか?

 ……ドクン………

 心臓の鼓動が聞こえてくる。すると、アークがせきばらいをした。


「それじゃあ、部屋へと向かう前に何をすればいいか言うよ?」


 アークはそう言うと、リストを取り出した。ページをめくって項目を探す。


「あった、………。どうやら、部屋に置いてある物資や武器の調査らしい。傷んでたり、壊れてないかを確かめるためだって」


 あの部屋……物置みたいな扱いにされているのかよ。まぁ、いいけどな。それより、その物資や武器はどれくらいあるんだろう。その量によって、スチュアート先生の所へ行く時間が変わる。なるべく少なめだったらいいんだけど……。


 俺はチラッとクレアを見た。彼女の顔は沈んでいて、どこか元気がない。一体どうしたのだろうか?……話しかけてみるか………。


「クレア……?」


「えっ、あっ、何デューク?」


「いや……あの、元気がなさそうだったから」


「だ、大丈夫。ちょっと考え事してただけだから」


 考え事、か。何を思っていたんだろう。ふぅ。何故か知らないけれど、声をかけるのに戸惑ってしまった。クレアとは時折話しているだろ。どうして緊張をする必要があるんだ?……用事が全て終わったら、早く寝よう。


 そうこうしている内に、俺達は円形の部屋へとたどり着いた。物資や武器はまばらながらも置いてあった。


「案外少ないんだね」


「うん、それじゃあ始めようか。それぞれバラバラになって作業を開始すること。それじゃあ、一時解散!」


 俺は武器の一覧表をもらって武器が置いてあるところへと向かった。木箱の蓋を開けると、拳銃みたいなのがぎっしりと詰まっていた。見ただけで二百くらいはある。


「うわ、これ全部かよ……」


 俺はこれだけでやる気が失せた。でも、たとえそうだとしてもやらなければならない。俺は拳銃を一つ一つ取り出して、どこか壊れてないかを調べ始めた。


 この拳銃は銃口にワイヤーが仕掛けられている。引き金を引くとワイヤーが飛び出して、壁とかに突き刺されば、自然と引っ張られていく。そんな感じだ。一年前、カルロスも丁度使っていたな。特に名前がないから、俺は勝手に“ワイヤー銃”と呼んでいる。


 少しの間、俺はずっと拳銃の検査をしていた。すると、誰かが近づいてきた。もう終わったのか、早いな。俺はそう思い、振り向くとそこには……


「……クレア?」


 クレアが少しモジモジしながら立っている。なんで?


「もう、終わったのか?」


「うん。……手伝ってもいい?」


「あっ、えっと……いいよ」


 俺がそう言うとクレアは頷き、隣で作業を始めた。落ち着け……。相手はただの幼馴染だ。何を緊張する必要がある!とにかく落ち着け……。


「あー……その……えっとー……」


擬音語のような言葉を発している場合か。


「ねぇデューク」


「……はい」


 何故敬語なのだ、俺?


「本当はね、まだ、自分の作業が終わってないの……」


「えっ、それって一体どういう……」


 クレアは顔を上げて真っ直ぐに俺を見つめた。


「聞きたいことがあって来たの。い、今から変な質問するよ」


「お、おう……」


 クレアは深呼吸をして、空気を飲み込んだ。どうやら落ち着いたようだ。


「…………デュークはわたしのこと好――」















 突如、部屋が眩い光に包まれた。


 巨大な爆発音、天井が爆発した。落石を防ぐために俺達は急いで部屋の端に寄る。他の皆は!?無事なのだろうか?砂埃でよく分からない。


 シュー……シュー……

 そんな……あり得ない。何故ここに?部屋の中心に巨大なシルエットが見えた。雷が鳴り、そのシルエットが照らされる。それは……


「ヴァイス……トイフェル」


 ヴァイス・トイフェルは口を大きく開けると俺達に襲いかかってきた……。

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