第80話 鍵と恋(ミリーネ→クレア視点)
コメントが遅れてすみません。こっからまた、出来る限り毎日更新を頑張っていこうと思います。しばらく空いたせいで文章が拙くなってる気がする……。
「それで、用ってなんなのリアム?」
あたしは、講堂でリアムと一緒にいた。人はまばらだし、距離があるから誰もあたし達の声を聞くことはない。それより、向こうから誘ってくれるなんて珍しいなー。
「どうしても……お前に頼みたい事があるんだ」
おっ、おっ、おっ。あたしに頼みたいことってなーんだ。長い付き合いをしてきたおかげでようやく頼りにされてきたか。
リアムはポケットに手を突っ込むと黒い鍵を取り出した。
「この鍵を……持っててもらいたい……」
………鍵かぁ。期待してたのとは違うけどまぁいいかな。
「分かったよ、リアム。ちゃんと持ってる!」
「…………頼んだぞ」
あたしは、その鍵をしまった。その時、一人の男子生徒があたし達の方に近づいてきた。
「ここにいたのか。レポートは終わったのか?」
「……あぁ……もちろん」
リアムと話している相手、一体誰だろう?
「どちら様?」
「……ヴィルギル・カイザー、俺のルームメイトだ」
あー、ルームメイトの人か。どうりで気さくに話しかけてくると思ったよ。
「よろしくな、えっと……」
「ミリーネ・アスタフェイです!よろしくね、ヴィルギルー」
「というかお前、女友達いたのかよ!羨ましい……」
ヴィルギルがあり得ないという顔でリアムに言った。失敬な!こう見えてあたし達は十年以上も一緒にいるんだから。
「まぁ……俺の親友といえば親友だけど……」
「なんだよそれ…………ミリーネ、その傷……」
ヴィルギルがあたしの左肩を指した。傷……?
「!!!」
「あ……ああ……!」
「ち、違うのリアム!これはーー」
あたしが言おうとした時にはすでに遅かった。リアムは数歩後ろに下がると、講堂を飛び出して行ってしまった。
肩の傷がズキンと傷んだ気がする。痛い。
「何か、まずい事言ったか?」
「………ううん、大丈夫だよ……」
講堂には他の人の話し声で埋め尽くされている。あたし達はその中でしばらくの間、沈黙を守り続けた。
沈黙を破ったのはヴィルギルだった。
「俺、あいつを追いかける。お前は?」
「……あたしは寮に戻るよ。最後の課題の準備をしないといけないから」
「そうか、じゃあな」
ヴィルギルは講堂を出て行った。あたしは、その場にしばらくの間、留まった。
……リアムに見せちゃったな、傷……。
◇◇◇
わたしは、いつも寮に帰っている道を通っていた。風が吹いてとても寒い。……シャーランの言葉、
――煮え切らないだったら、最初からそんな恋やめればいい。
確かにその通りだ。これはわたしの甘え、恋に気付いているのに、前に進まない。いや、前に進むことができない。……わたしにはリックがいたから。今でも、彼のことを想っているから。
分かってる。未練がましいのは分かってる。でも、怖い部分がある。このまま、デュークと一緒にいていいのか。リックにそんなことしていいのか。分からない。
――歌声がまた、聞こえた。悲しい、歌声。悲しくて、悲しくて、悲しくて……何かに押し潰されそうな感じだ。
思い返せば、デュークは一言もわたしの事を好きだとは言っていない。気づいていない。言うべきかな?わたしの事、どう思ってるって。そんなことしていいのかな?ううん、これはわたしの問題だ。この問題を片付けることなら言ってもいいと思う。自分の気持ちに決着をつけるんだ。
わたしは前に進み出して、寮に戻った。
でも、わたしの事を好きだっていたら、どうすればいいの?




