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白銀のヴァールハイト  作者: A86
1章 別れ
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第8話 夢

 見えない暗闇、息ができないほどまでの苦しみがこみ上げてくる。そんな世界に俺は漂っていた。自分がふわふわとした……なんて言ったらいいんだろう?そうだ、紙のようになった気分だ。

 ここは天国だろうか、地獄だろうか?どちらかと言えば地獄に近い気がする。ある意味仕方ないのかもしれない。親友を救うことが出来なかったんだから。――今も脳裏に焼きついている。リックの最期の姿を。何であの時、リックの提案をすぐに承知しなかったんだろう。たとえ抵抗はあったとしても、すぐ近くに危険が迫っていたというのに……。もしかしたら、リックは生き延びれたかもしれないのに……。俺の、バカ。

クレアと、どう向き合えばいいんだろう?すまないとか言って謝ろうか。いや、それだけで許されるはずがない。……彼女の心境を考えれば。

 そういえば、あの狼獣人の男は一体なんだったんだろう。俺の幻覚とは考えづらいほどはっきり見たんだから間違いない。そもそも何故あの場所に……?

 あぁ、眠くなってきた。いっそのこともう眠りたい気分だった。もう、自分は死んでいるかもしれないから。


 …………………………んっ?死んだはずなのに息をしている?


 すると突然、周りが真っ白になった。あまりに突然すぎて目がくらむ。よく見ると、また、霧だった。

この霧は寒くない。これは、夢に出てくる霧だな、そう確信した。

 やがて再びゆっくりと歩き始めた。この夢は今日も見た夢だ。毎度毎度同じで飽きてくる。

 普通ならば、濃い霧の中を十数歩歩き続ける。そして、金属がぶつかりあう音がしてくる。だけど、そこで誰かに引き止められて夢から覚めるのだ。

 カチャ…カチッ…

――聞こえてきた。そろそろここで引き止めにくるだろう。

 ところが、誰も引き止めにこなかった。それどころか、声も聞こえずどんどん金属音が近づいてくる。


(えっ、いつもと違う。どうして?)


 霧がどんどんと晴れはじめた。金属音の正体がようやく分かった。

 俺が見ている光景は少し説明しづらいものだった。簡単に言えば、二人の女性がお互いに剣をたたかっているのだ。一人は黒髪の女性でピンク色の眼を持ち、白い服を着て二振りの剣を持っている。もう一方は俺とあまり変わらないくらいの少女の姿で、白い髪に青い眼を持ち、黒い服を着て長い剣を一本持っている。

 二人の表情はどちらも険しかった。見た目は対照だし、二人とも相手を倒すことしか考えてない様子だった。

 しばらく見ていると、白髪の少女が押しはじめた。黒髪の女性は必死で押し返そうとする。


「……っ、あなた達の目的は一体何?」


「さあ、何かしらね」


 黒髪の女性の問いに白髪の少女が答える。その顔には笑いを浮かべていた。

 それでも双方とも押して押されての繰り返しを行い続けた。しかし、黒髪の女性の方が限界がき始めたのか、どんどんと押されていった。俺はさっきまで歩けたのに今は動けない状態だった。


「とどめよ」


「うっ……」


 白髪の少女一振りで二振りの剣が弾き飛ばされてしまった。距離を見て、届きそうにない。助けに行きたかった。でも……


「あわれなものねマリア、私に倒されるなんて」


 マリアと呼ばれた女性は少しの間、白髪の少女を見るとこう言った。


「まだ……負けたわけじゃないわ」


「そうね、でもあなたはここで死ぬのよ」


 白髪の少女は剣をマリアに一気に走りだし、そして……心臓を深々と……と思ったらなんとマリアは少女の剣を真正面から受け止めていたのだ。


「何!?」


 少女も驚いている様子だった。マリアの手から血が滴り落ちている。彼女は顔を少し歪めながらも、剣を真っ二つに折った途端、少女の肩を思いっきりつかんだ。その口にはいつの間にか爆弾をくわえていた。


「なっ、やめろ、放せ!」


 少女はもがくが、びくともしなかった。マリアの顔をよく見ると……涙を浮かべていた。

 再び、視界がぼやけはじめた。待ってくれ、まだ……。抵抗しようも無駄だった。みるみるうちに真っ白に染まっていく。そして――


ドオオオォォォォォン――


……大きな爆発音が聞こえた。そして俺は、目を覚ました。

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